【 ブレードランナー・撮影秘話集 】

(注)制作の裏話なので、当然ながら完全ネタバレになります!

コレクターズボックスは激シブ。DVDにプリントされているのは、デッカード、レイチェル、ロイ、プリス、ゾーラの5人!


※07年12月に発売された公開25周年DVDボックスには、なんと約8時間20分にも及ぶ、膨大な特典映像がついていた!このレポでは、僕が思わずメモッた撮影エピソードをまとめました!

(1)未公開シーンや関係者インタビューで明かされた衝撃の設定&セリフ

・なんとタイレルもレプリカントだった!(ネクサス6型の別種)タイレル本人はとっくに死んでいて、記憶だけが彼のレプリに移植されていた。初期シナリオではロイ(ルドガー)がタイレルの頭を押した時、頭からネジや回路が飛び出して真実を知ることに。上の階にエレベーターであがると本物のタイレルの石棺があり、対面シーンの絵コンテをシド・ミードが描いている。帰りのエレベーターでロイが恍惚の表情を浮かべているのは“神”を殺したことの反動。※エレベーターであがるシーンは実際に撮影されている。
・デッカードとレイチェルは寿命のないネクサス7型(?)に該当!ラストでデッカードはレイチェルを保護して逃亡するが、その車の中でレイチェルがこんなセリフを言う(未公開シーン)。「あなただってレプリ。私たちは“対”で作られたと思う」。確かに、劇中ではタイレルが「創造主=神」という存在だった。タイレルは神の使命としてアダムとイブのように、男女のレプリを作ったのかも知れない。ちなみにタイレルはロイを息子扱いしていたが、そのロイは死ぬ時に手のひらに釘を突き刺していた。あれは磔で死ぬキリストの象徴であり、文字通りタイレルとは“父と子”。
・ロイ、プリス、リオン、ゾーラの他に、もう一体レプリカントが登場する予定だった。名前はメアリー。彼女は心が繊細すぎて人間のように壊れてしまう(精神崩壊)する設定だった。ロボットの心が傷つき壊れる、このシーンがあればさらに作品が多層化していたハズ。脚本家組合のストと重なり、執筆されなかった。
・冒頭の尋問でリオンに殺されたと思ってた同僚警官ホールデンは、実は生きていた!生命維持装置の中で『宝島』を読んでいるホールデンを、デッカードは2度もお見舞いに行き、撮影もされている。2人の会話はレプリの情報交換で、色々と話し込んでいる。
・ロイの最期は全く違うセリフのバージョンも撮影されていた--「再生、セックス、愛、単純な出来事、どれも満足できない。どこへ行っても寂しい。間違いだらけだ」。※映像あり!
・ロイが鳩を持ってジャンプするのはルドガーのアイデア。「ルドガーに“私は平和の象徴と一緒
に飛びたい”
と言われ、時間もないし許可した」(リドリー)。
・まだCG技術がない時代の映画であり、建物は基本的に模型の実写。スピナーが旋回しながら警察本部に着陸するシーンは、その美しさから人気のあるシーンだが、実はあの警察本部は『未知との遭遇』のマザーシップを裏返したもの。メイキングには巨大なタイレル社が発火(事故)して全焼する決定的場面も(汗)。
・レイチェルやプリス役のオーディション映像が残っていた!ショーン・ヤング以外のレイチェルを見られる。また、ショーン・ヤングがセリフを間違えて笑って誤魔化すNGシーンがあり、劇中では見せない笑顔に思わずなごんだ。
・試写用には今回初公開されたロイ死亡後のデッカードのナレーションが入ってる--「俺は死に様を見守った。死はゆっくりと訪れ、彼は最後まで闘い抜いた。涙を見せず、投げ出すこともなく、死の瞬間まで自分の人生を愛していた」。

 

(2)小ネタの解説※常識レベルのものも含めて

・冒頭で新聞を読むデッカードの背後にあるネオンの漢字は「源」。“我々はどこから来てどこへ行くのか”と語っている。
・映画の当初のタイトルは『デンジャラス・デイズ』。
・精油所が環境破壊を引き起こしている。いつも酸性雨が降りまくり。
・「2つで充分ですよ」の食べ物は黒いエビ(僕には魚に見えるけど…)。
・ガフが最初に折り紙で作ったのはチキン(臆病者)。仕事を断ろうとしたデッカードへのあてつけ。
・ゾーラの射殺シーンのBGMは心臓の音が停止していく音。
・ゾーラが殺されたのを見たリオンは口だけが動いているが、あれは「ヒー・マスト・ダイ(奴をブッ殺す)」と繰り返している。
・リオンがデッカードを殴りながら「思うようにならんのは辛いぞ」と言うが、実はその前に「子供も作れず」というセリフがあった。
・タイレル「なぜ来た?」ロイ「長生きしたいんだ、父よ」。このロイのセリフは本来“ファーザー”ではなく“畜生(ファッカー)”だった。
・写真を拡大して調べるのはハリソンのアイデア。ハリソン「刑事なのに捜査シーンが脚本になかったので私から監督へ提案した」。
・“ファイナル・カット”では、ラストで飛び立つ鳩の背景が大きく変化。
・デッカード役はダスティン・ホフマンに決まる寸前だった。監督自身もホフマンと会っており、絵コンテのデッカードはホフマンそっくりに描かれている。
・デッカードはレイチェルの人生を粉々に打ち砕いた事に気づき「飲むか?」としか言えなかった。
・デザイナーのシド・ミードは元々車のデザインだけの為に雇われた。ところが車の背景に描いた街があまりに素晴らしかったので、セットでそれらが採用された。
・クライマックスでデッカードはビルから落下する直前に、よく見るとロイに「ペッ!」と唾を吐きつけている。ロイが手を差し出したのは、命の大切さを想っただけでなく、死ぬ前にハングリー精神を見せたデッカードに感心したのだろう。
・完全版ラストの飛行シーンは、ワーナーの経営陣が無理やりハッピーエンドにする為に、監督の意向を無視して勝手に付け足したシーン。しかもその映像はキューブリックの『シャイニング』冒頭の空撮シーンのあまりというから酷い。

  “ファイナル・カット”劇場前にて(予告編)

(3)ファン感無量の撮影シーン&裏話

この映画は「観てないか、熱狂的なファンかどちらかしかいない」と言われる。観客は見たこともない映像にただ圧倒され、物語の壮大さに見終わって声もでない。その裏には撮影スタッフの大変な労力があった。リドリー・スコット監督は完全主義者であり、たった1ショットの撮影に8時間も費やすことも。最終日は28時間にわたって撮影された。
ブレードランナーはCG映像(デジタル処理)の技術がない時代であり、模型を使った最後のアナログSF映画とされる。最も費用がかかるのが特殊撮影だが、リドリーは特撮場面を30回も撮り直したので、当然ながら予算オーバーしてしまった。3ヶ月間にわたって夜間に撮影され、徹底的に雨を降らし、役者は連日ズブ濡れに。
ある映画関係者が「ブレードランナーのような作品は二度と作られない」と言っていたが、メイキングを見るとそれはけっして大袈裟ではないと思う。その世界観の独創性、哲学的な脚本、役者の名演、カメラマンの高度な撮影技術、荘厳な音楽など、すべてが奇跡的に融合しており、現場では雨中のオールナイト撮影で肉体がボロボロになる中で、作り手の精神だけが研ぎ澄まされていったようだ。
 
「美術は見事だったし、創造された世界はとても精密で興味深い。この作品は夜の野外で撮る必要があった。毎晩仕事をするのはキツかったよ。一晩中、雨の中でだ。楽な撮影ではなかった」(ハリソン)
「映画の仕事は厳しい。決して泣き言ではなく本気で思ったよ。人生が駄目になるほど疲れたってね。だが、辛い撮影だったが本当に特別な体験だった」(ルドガー)
「サメに追われるように死にものぐるいで撮影した。4月から6月までの日の出時間も覚えたよ」(リドリー)
 
・ある美術スタッフが撮影に初参加した時に言われた言葉が「ようこそ地獄へ」。理由は監督に美術の知識がある為に、その場のひらめきでどんどんデザインが変更されるから。リドリー「私は決してセットや舞台に妥協しない。セットは景観だ。私の作品の全てだ。景観と舞台はキャラクターだ。時に俳優達を憤らせ、常に批評家達のこき下ろしに遭う。だがそこが腕の見せ所だ。私は世界や宇宙を自由に形にできるんだ」。
・実際に使用されているビル(ブラッドベリー・ビル)をロケ地にしたので、撮影できるのは午後6時から翌朝6時までと決まっていた。老朽化したビルに見せる為に、毎日わざわざ汚してから撮影を開始し、5時頃から1時間かけてキレイに掃除をして6時に退出する日々が続いた。(話を聞くだけで疲れるね)
・美術担当者「費用が心配で監督と話し合った。物事が大ごとになりキリがなかった。デッカードのアパートは5万ドル(約600万円)の予算だったのに17万5千ドル(約2100万円)になった。私だったらアパート1つに17万5千もかけない。そんな必要はない。でもリドリーと話し合うと……必要になった」「監督は警察署セットのマグカップ1個、ペン1本選ぶのに、100個のマグカップと100本のペンを買わせてから選んだ」。※こういう話を聞かされると、DVDの価格は“高いけど安い”って思う。購入することで恩返しできるなら、ってね。
・ロイの絶命シーン。撮影が終わった瞬間、ずっと息を止めていたルドガーが「プハーッ」って深呼吸するシーンが映ってる!これは涙モノ。自分が撮影現場にいるようだ。
・資金提供者はセットの建築現場に来て顔から血の気が引いたという。“何もかもを”作っていたからだ。美術担当者「“イスなんて作らずに買えばいいだろう”と言われた。だが店では買えないんだ。全てが美術館級の出来栄えだった」。
・“ファイナル・カット”では追加撮影が必要な場面をハリソンの息子(そっくり!)が演じている。息子といっても40歳。当時の父と同じ歳の代役というのも何かの縁だろう。
・当初、映画用に作る予定だった未来の車は54台。その後予算の関係で台数は削られたが、それでも27台を制作した。大道具(車両班)の50人が、1日18時間&休日なしで5ヶ月半働いて作り上げた。 
・美術スタッフのクルー達が“完成した”と思ってるセットにリドリーがきて、「よし、この調子で作ろう」といわれ茫然としたという。あり得ない完成度が求められた。
・撮影監督のジョーダン・クローネンウェスは名カメラマンであり、彼が光と闇の映像を作った。彼はパーキンソン病でその後3本を撮って他界するが、リドリーは病気のハンディを分かったうえで彼に撮影を依頼した。
・プリスがセバスチャンと出会うシーン。逃げようとして車にぶつかったプリスは窓を割っているが、あれは本当に割れていて彼女はグッサリと腕をやってしまった。そのため器械体操のシーンでひっくり返り、ルドガーが笑っているNGも残ってる。
・監督は巨大なスピーカーをセットの屋上に置き、撮影時は臨場感を出す為にヴァンゲリスの曲(サントラ)を大音量で流した。
・初公開時はヒットしなかった。批評家にも観客にも叩かれた。当時の人々は、ハリソンが出るSFということで、スターウォーズやレイダースのような痛快なヒーローものを期待していたんだ。しかも同時期にファミリー向けの『E.T.』が公開され、『ブレードランナー』は“陰鬱な作品”とレッテルを貼られてしまう。
・「ルドガーと共演した場面はこれまでの作品の中でも完成度が高く満足してる」(ハリソン)
・『ショーシャンクの空に』を撮ったフランク・ダラボン監督が大絶賛!「ロイが最後を迎えた時、作品のテーマを感じて感動してしまった。自分が死ぬ間際に命の尊さを知ったロイがデッカードの命を救った。手の中で生命を感じたくて自分の手で鳩を握りしめている。そしてクライマックスを迎え台詞が流れる…“あらゆる記憶は消えていく、雨の中の涙のように”」(動画・1分11秒)。※「涙のように…雨のように…」より“雨の中の涙のように”の方が正確。

エネルギーが切れて停止したロイ。微動もしない、完全なる停止(聞こえるのは降り注ぐ雨の音だけ)。生命のないロボットなのに、命の灯が消えたように僕は感じた。雨に打たれて静かにたたずむ姿は哀しみに満ち、また神々しいほど美しかった。
この映画の制作に携わったすべての人間に心から御礼を。素晴らしい映像体験を、生命賛歌を、本当に、本当に、ありがとう!


★おまけ〜デッカードがレプリカントと分かるシーン(DVD以外のインタビュー含む)

・最も有名なのはファイナル・カット&最終版の“ユニコーンの夢”。ドアの前のユニコーンの折り紙は、ガフがデッカードに移植された夢の内容を知っているということ。
・レプリカントの目は角度によってオレンジに光るが、デッカードがアパートで「他の誰かが追うだろう」とレイチェルに言う場面で、デッカードの目もオレンジ色に光る。これはリドリーが“確信犯でやった”と語っている。
・デッカードはレプリだから指2本を折られてもビルの端にしがみついていられたし、どんなに殴られても死ななかった。
・レプリカントは記憶を欲しがり写真を大切にするが、デッカード自身の部屋も写真でいっぱい。しかも古い写真ばかりで、最近のものが1枚もない!
・初期の脚本では、ロイを倒したデッカードに、ガフが次のセリフを言う「人間の仕事を成し遂げましたね!しかし、あなたは自分のことを人間だと信じていますか?この辺りじゃ誰が誰やら判りませんから」。
・ロイがデッカードの名前を聞く前から知っていたのは、2人が兄弟レプリだったという初期設定の名残。撮影用脚本には、デッカードのこんなナレーションがある「その夜、屋上で俺は知った。 2人は兄弟だったのだ、ロイ・バティーと俺は!」。
・本当のブレードランナーはガフ。戦闘用を含む4体のレプリカントを狩る危険な任務に、警察が人間を差し向けるとは思えない。デッカードがレプリを廃棄すると同時に、タイミングよくガフが現れるのは、ガフが自分の道具としてデッカードを使っているということ。

※MTV風のブレードランナー(2分30秒)

1万セット限定版には名車スピナーとユニコーン(笑)がオマケで
付いている!スピナーの扉はちゃんと上にスライドするゾ!


 


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