炎のド名作邦画ベスト333

  201位〜333位  

1〜100位  101〜200位  ※邦画総合ランク

201.影武者('80)179分※クロサワ
武田信玄の影武者になった男の物語。仲代達矢は名優だけど、この粗野な影武者役だけは勝新でなければダメだった。仲代では気品がありすぎる。なんで黒澤監督と勝新は撮影初日に喧嘩しちゃうんだよ〜!
※カンヌ国際映画祭でパルム・ドールに輝いた。

 
202.エノケンのちゃっきり金太('37)124分
喜劇王エノケン(榎本健一)が大活躍!幕末の江戸。スリの金太はいつも岡っ引の倉吉にドタバタ追われている。さらに金太が盗んだ財布に薩摩藩の密書が入っていたから大変。金太は薩摩の刺客にも狙われてしまう。しかし楽天家の彼は持ち前の陽気さでどんなピンチも克服していく。戦前の日本映画を代表する娯楽作の一本。

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203.居酒屋兆治('83)125分
函館の小さな居酒屋「兆治」に集まる人々の人間模様を描く。みんな弱くても頑張って生きている。主題歌の“時代遅れの酒場”も非常に素晴らしい。

 
204.吾輩は猫である('75)116分
漱石の伝記映画。仲代達矢の漱石があんなにもハマリ役になるとは思わなかった。親友の美学者を演じた若き伊丹十三も、傲慢さと哀しみの両方を表現してグッド。

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205.誘拐報道('82)134分
誘拐犯役の萩原健一は、一世一代の大名演。逃避行が長引いて金が底をつき、脅迫電話をかける金さえ足りなくなる。しかも誘拐された子どもは風邪で高熱を出し危険な状態。追い詰められた犯人が電話ボックスから吠える「10円玉ッ!10円玉があらへんッ!」のシーンは壮絶!

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206.夢みるように眠りたい('86)86分

大正時代、日本初の女優主演作とうたわれながら、当局の圧力によってラスト・シーンの撮影が出来ず、映画史から消えてしまった作品があった--。舞台は昭和初期の東京。人探しの依頼を受けた私立探偵が、調査の過程で未完の映画の台本を自分が演じていることに気づく。探偵はやがて往年の大女優の悲しみと向き合う。
レトロな雰囲気を強調するために“白黒&無声映画”という手法をあえて選んだ意欲作。監督は林海象。

 
207.Shall we ダンス?('96)136分
周防正行監督作品。仕事に疲れた平凡なサラリーマンが、社交ダンスを通して新しい自分に生まれ変わっていくヒューマン・コメディ。主人公は当初こそダンス教室の美人先生に憧れて通っていたものの、やがて踊ることそのものの楽しさに開眼し、純粋にダンスにのめり込んでいく。駅のホームで電車待ちをしている時に足がステップの練習しているシーンが良い。ただ、同監督の『シコふんじゃった』に比べると、中盤以降が盛り下がった気が…。
※作品の完成後、周防監督と草刈民代が電撃結婚。ハリウッド版では役所浩司の役をリチャード・ギアが演じた。

 
208.嫌われ松子の一生('06)130分

『下妻物語』と『パコと魔法の絵本』が良かったので中島監督の『松子』を急遽鑑賞。グハ〜、きつい。ドン底の中でも他人に優しく接するマリア&観音さまのような松子には、感じ入るものがあったし、映画各賞を総なめにした中谷美紀の体当たりの演技は見事だった。刑務所内のミュージカルも目からウロコだったし、お父さんの日記や妹の思いはグッときた。だがしかし、女性が男からボコボコに殴られるシーンは、たとえ映画であっても映像として見たくない。トラウマになりそうな恋人の踏切のシーンもそう。そこってわざわざリアルに描く必要があるの?音だけでも殴るシーンは表現できるし、台詞だけで“そういうことが踏切であった”でいいじゃん…。この映画に出てくる男は最低の野郎ばかりで、マトモなのは床屋さんだけ。しかし僕はあえて叫びたい「世の大多数の男は床屋さん(優しい奴)なんだ」と!順位が低い?だって→【ネタバレ文字反転】松子は死に方が最悪!後味が悪すぎる。小学生?中学生?に背後からバットで撲殺なんてあまりに酷い。しかも子ども達は笑ってた。あれならアパートの階段から落ちて死んでた方がよっぽどマシ。松子の一生は、悲しいけど、どこか笑える物語でずっときてたのに、最後の最後で凍り付いてしまった。

 
209.わが町('56)98分
明治、大正、昭和にわたって、一人の男が不器用ながらも懸命に娘&孫娘を育て上げる一代記。親の心、子知らずを地で行く作品。監督は早世した名匠川島雄三。

 
210.わが青春に悔なし('46)110分※クロサワ
黒澤が終戦の翌年に製作した民主主義賛歌。主人公(原節子)の恋人は、戦時中に反戦運動をしていた。彼は国際スパイの汚名を着せられて逮捕され、無実の訴えも虚しく獄死する。死後に彼氏の実家を訪ねると「スパイの家」と村八分にされ、畑を村人に荒らされるなど酷い仕打ちを受けていた。彼女は彼の家族を支え、共に迫害に耐え抜き戦後を迎える。反戦運動は間違っていなかった。心の中で「わが青春に悔いなし」と叫ぶ。
映画全体から、自由にモノを発言できる時代になったという黒澤監督の歓喜が爆発していた。

 
211.真昼の暗黒('56)112分
裁判のシステムに切り込んだ映画。老夫婦が殺害される痛ましい事件が起き、犯人がすぐに逮捕される。警察は犯行の状況から複数犯と断定し、容疑者4名を逮捕していく。身に覚えのない罪状を否定する4名だが、昼夜を問わない執拗な尋問に判断力を失っていき、モウロウとした意識で各人が犯行を認めてしまう。そして裁判が始まる。
【ネタバレ文字反転】
裁判では犯人がでっちあげた陳述書や、証人のいい加減な証言で有罪が確定し、死刑や無期の判決が下ってしまう…。「お母さん、まだ最高裁があるんだ!」の叫びが切実だった。

 
212.刑務所の中('02)93分
獄中記を綴ったマンガの映画化。ミリタリーおたくの中年男が銃刀法違反で懲役3年の判決を受け、刑務所での生活が始まる。1日おきの入浴、作業場での労働、夕食後のテレビ、正月のおせち料理、菓子付き映画鑑賞会、囚人同士の他愛もない会話などが丁寧に描かれる。劇中のBGMは全部クラシックというのもあって獄中ライフが優雅に見える(汗)。小さな事件が起きて独房に移された主人公は、“他人とのわずらわしい付き合いもないし、せいせいする”とかえって喜ぶ始末。山崎努の演技がべらぼうに上手い。受刑者の最大の楽しみは食事であり、僕は見終わった後、無性にチョコレートやコッペパンが食べたくなった。

 
213.ドラえもん・のび太の恐竜('80)94分
記念すべき劇場用ドラえもん作品の第1作。26年後('06)にもリメイクされただけあって、数あるドラえもんの物語の中でも屈指の人気エピソードとなっている。ピー助との別れの場面が、全国の子どもの涙を絞り取った。

 
214.12人の優しい日本人('91)116分
三谷幸喜脚本の、もし日本に陪審員制度があったらという爆笑コメディ。選ばれた12名は被告が若くて美人だったことから好印象を受け、なんとなく“無罪じゃないか?”“無実だろ?”という空気で審議が始まる。しかし、有罪の可能性に誰かが気づき事態は急展開。今度はその可能性をまた誰かが覆すなど、ケンケンガクガクの議論が続く。

 
215.馬鹿が戦車でやって来る('64)93分
母と弟が障害を持っている元戦車兵のサブが主人公。彼らは“汚れの一家”と蔑まれ、村中からのけものにされていた。ズル賢い市会議員がサブたちの土地を法的に奪ったことから、怒りまくったサブは戦時中に隠していた戦車で村中を踏み潰す。山田洋次監督の異色作。

 
216.悪い奴ほどよく眠る('60)150分※クロサワ
公団と建設会社との不正事件をスリリングに暴いていく。真相を知る証人達が次々と何者かに消されていくのがやり切れない。っていうか、映画の中くらい巨悪をやっつけて欲しい!

 
217.遊びの時間は終わらない('91)111分
超マジメな警官(本木雅弘)が警察の予行演習で銀行強盗役を演じたことから、巧妙な作戦の為になかなか逮捕できず、しかもマスコミが見てるので予行演習を中止するわけにもいかず大騒動になる。最終的には狙撃班やヘリまで出動する事態に。テンポよく展開する痛快なコメディ。

 
218.転校生('82)112分
心と体が入替わってしまった男女中学生の青春コメディ。最初は喧嘩ばかりしていた2人が、相手の立場から物事を考えるようになり、感動のラストへ。「さよなら、俺」「さよなら、あたし!」は涙の名セリフとして映画史に刻まれた。大林監督が故郷の尾道を舞台に撮った最初の作品。

  小林聡美が若い!
219.ゴジラVSキングギドラ('91)102分
この映画の脚本はバブルが弾けた今となっては、すっかりブラックジョークとなってしまっている。ストーリーを簡単に書くとこうだ。(注。この脚本が書かれた頃、バブルで金の余った日本企業が世界中の土地を投機目的で買い漁っている事が問題化していた)

1992年のある日、23世紀から密命を帯びた国連職員がやって来る。未来社会では日本が世界の大半の土地を買い占めて超スーパー巨大国家になっているので、あまりに片寄りすぎたパワー・バランスを是正するのが目的だった。具体的には、キングギドラを誕生させて20世紀の日本を襲撃させ、日本が大国化する前にあらかじめ国力を半分に削いでおくという作戦だった。しかしタイミング悪くゴジラが復活し、キングギドラは目的を達する事もなく倒されてしまう。しかし、これで諦めないのが未来人。彼らは“メカ・キングギドラ"に改造すると、今度は自身がキングギドラを「操縦」して、ゴジラとのリベンジ戦に挑むのであった--。なんとも、目眩がするようなストーリーだ。

  東京都庁が巻き添えに
220.さびしんぼう('85)112分
大林監督の尾道三部作・完結編。主人公の男子高校生は、放課後に音楽室でショパンの“別れの曲”を弾く少女に恋をする。ある日、壊れた彼女の自転車を直してあげようと初めて言葉を交わす。夢にまで見た憧れのマドンナとの会話に、天に昇る思いの彼。そして後日、彼女から手紙が!そこに書かれていたのは--「この間は嬉しかった。でもこれきりにして下さい」。※私事だけど…僕は学生時代に、この手紙と一字一句が全く同じ文面の手紙を貰ったことがある。その意味で当映画はトラウマになってしまった(涙)。
※あの黒澤監督がこの映画の大ファンで、スタッフ達に鑑賞するよう薦めていた。

  ロングの富田靖子!
221.八甲田山('77)169分
1902年、日露戦争の開戦前夜。ロシアで戦う為に雪中行軍の訓練に挑んだ青森第五連隊210名の隊員は、冬の八甲田山に分け入った。速いペースで一気に踏破する予定だったが、部隊は低気圧に突入し、方位磁石が使用不能になってしまう。吹雪の中、次第に隊列は乱れ狂死する者も出てくる。体温を奪われ睡魔に襲われる隊員たち。「眠るんじゃあない!眠ったら最後だぞ!」と声を掛け合うが、次々と絶命。無事に下山できたのはたったの12名のみであった…。実話だけにもの凄い緊張感があった。
※本当に極寒の八甲田山で3年に及ぶ長期ロケを敢行したとのこと!

 
222.必殺!V 裏か表か('86)126分
人に代わって悪を成敗する仕事人たち。7本ある“必殺”シリーズの中の最高傑作。敵は江戸の強力な闇金集団。無敵に見えた仕事人チームが壊滅的なダメージを受け、徹底的に追い詰められる。クライマックスの大殺陣は、中村主水が約20人をぶった斬る壮絶なもの。監督は工藤栄一。

 
223.TOMORROW明日('88)105分
長崎に原爆が投下される前日から翌朝までの市民生活を描く。ある者は陣痛に耐え赤ん坊を産み、ある者は救えなった命を思って悔やみ、ある者はようやく結婚して第2の人生を歩み出そうとしていた。誰もが未来に向かって懸命に生きていた。そして9日の朝が始まる--。この映画には原爆投下後の悲惨な描写は出てこない。しかし、あんなに頑張って生きていた人々が突然この世から消されると考えただけで、原爆への怒りが胸に刻まれた。

 
224.忍ぶ川('72)120分
料亭“忍ぶ川"で出会った哲郎と志乃。志乃は子供の頃から大変な苦労をしてきた。2人が結婚した冬の夜のシーンが忘れられない。外は雪が積もって寒く、静かだ。しかしもう寂しくない。彼女はやっと幸せになれた。ただ、二人の恋の始まり方はほとんど描かれてなかった。相手のどこに惚れたのか説得力が欲しかったな…。

 
225.ドキュメント・太陽の牙ダグラム('83)80分
ガンダムの大ヒットを受けて、硬派なロボット・アニメが大量に作られたが、その中でも戦いの政治的プロセスを最も丹念に描いた作品がダグラムだった。独立戦争をめぐる本作は、TVシリーズにおいて主役メカのダグラムが登場しない回さえあった。

植民星デロイアに移住した人々は、地球へ食糧やエネルギーを大量に送っているのに、地球の人々から差別を受けていた。主人公のクリンは地球連邦評議会議長の息子でありながら、デロイアの民衆の低い境遇を見かねてデロイア革命軍に身を投じる。クリンが所属したゲリラ「太陽の牙」は軍刑務所から革命の精神的指導者サリマン博士を救出。これをもって本格的な独立戦争を開始する。
※ヒロインのデイジーは頬がこけ、やつれているリアルさが話題に。

  もっと世間に評価されるべき大河アニメだと思う
226.顔('00)123分
連ドラ『芋たこなんきん』などで高い演技力を見せる喜劇役者・藤山直美が映画初出演。家に引き篭もったまま中年になってしまった女性が、ある事件をきっかけに各地で逃亡生活を送ることになる。35年ぶりに家を出た彼女は、様々な人間と出会いながら生きる意味を見出してゆく。人生から転落していくのにそれに反比例して命が輝き出すという珍しい映画。

 
227.花とアリス('04)135分
傑作『リリイ・シュシュのすべて』に続く岩井俊二監督の作品。「リリイ」は少年達の崩壊する精神世界を描いた深刻な作品だったけど、それとはうって変わって、恋あり笑いあり涙ありの女子高生・友情物語。館内が何度もドッと爆笑に包まれた。物語はスローテンポで進むけど見せ場がいくつも用意されてるので、良い意味で「あれ?まだあるの?」の連続。主演の2人(蒼井優、鈴木杏)がセリフも含めて全部アドリブかと思うほど自然態なので、映画を見てるのを忘れてしまいそうになる。一番心に残ったのは普段着で踊るバレエのシーン。チュチュではなく普段着だからこそ、バレエの素晴らしさが良く分かった。ポーズを決める度に、日常が突然非日常の美しさに包まれ、バレエに全く関心がない男の人でも「バレエ、いいじゃん!」ってジーンとなると思う。映画のBGMでずっとピアノが流れてて、それが作品の雰囲気とピッタリで心地よかった。
(ややネタバレ。残念だったのは、文化祭シーンの鈴木杏の顔面アップが異常なほど何度も繰り返されキツかったのと、落語の尻場面がクドすぎたのと、広末涼子に不必要に見せ場を作ってやること。周りのスタッフが勇気を出して意見するべき)

  例の如く蒼井優が名演
228.綿の国星('84)92分
大島弓子の同名漫画のアニメ化。生後2ヵ月のチビ猫は、人間には二通りあると思っている。赤ちゃんが成長して大人になる場合と、猫がある時変身して人間になる場合だ。チビ猫はいつか人間に変身することを信じて疑わない。彼女の夢は飼い主の浪人生・時夫の恋人になることだったからだ。しかし、猫は人間になれないと気づいてショックを受けたチビ猫は家を出てゆく。時夫はチビ猫が消えてパニックに。
※恥ずかしながら、劇場の売店でチビ猫の下敷きを買いました。ネコ好きにはたまらんとです。いや、その、高校生だったし…。

 
229.ガメラ3 邪神<イリス>覚醒('99)103分
冒頭の原宿壊滅は男の僕でもビビッて悲鳴をあげた。あそこで終わっていたら高順位だったのに。だが、案の定ストーリーが進むにつれドンドン点数は下がっていった。怪獣映画はいつもツカミはOKなんだけど、後が続かない。うーむ。

 
230.MARCO 母をたずねて三千里('99)96分
イタリアからアルゼンチンに出稼ぎに出て消息が途絶えたおっかさんを探す為に、9才の少年がはるばる海を越えて南米の地をさまよい歩くというハードな物語。彼の旅は悪党に騙されたり、お金をすられたり、ようやく会えると思ったら既にそこにはいなかったりのトホホの連続。しかし、窮地に陥る度に人の優しさに助けられ、最後に彼は“僕の旅は素晴らしかった!”と叫ぶに至る。
※少年の名はマルコ・ロッシ。私事ながら、僕は旅先でアクシデントに遭遇する度に“これくらいどうした!マルコなんか9才なのに旅を諦めなかったんだぞ!”と自分自身に喝を入れてきたので、'96年に『墓をたずねて三千里』を発表する際に、敬意を込めてマルコの名をミドルネームに冠させてもらった。

 
231.ときめきに死す('84)105分
一人のテロリストが新興宗教の会長の暗殺に挑む過程を描く。沢田研二が俳優として凄みを見せた。
【ネタバレ文字反転】
暗殺に失敗して手錠をかけられた主人公は、パトカーの後部座席で自分の手首の血管を噛み切って自決した。手首から噴き上がる血煙は僕のトラウマに。今までに見た映像で最も凄絶な自決シーンだった…。

 
232.典子は、今('81)117分
実話の映画化。両腕が退化したサリドマイド児として生まれた主人公(辻典子)は、「泣いたってどうにもならない」と、両足を極限まで自由に使えるように努力する。そして、習字、ソロバンなど、色んな事をこなせるようになり、熊本市の市民局福祉課に26倍の難関を突破して就職を果たす。

 
233.undo('94)45分
47分の中編映画。視界に入るものを手当たり次第に縛ってしまう“脅迫性緊縛症”に陥った山口智子の鬼気迫る演技がすごい。意志の交流が出来ず、トヨエツのクシャクシャになった顔も胸に迫る。音楽が良いのでサントラを買ってしまった。

 
234.秒速5センチメートル('07)63分

桜の花びらが舞い落ちるスピードは秒速5cmという。なんて詩的なタイトルか。この映画は一人の男の青春を、13歳・栃木編、17歳・種子島編、社会人・東京編と3話構成で描いたアニメ。上映時間は1時間3分しかないけれど、主人公と一緒に年を重ねた気がして、もっと長く観ていた気がする。新海監督の映像美は有名で、今回も気温や湿度まで伝わってくる圧倒的な美麗映像に度肝を抜かれた。最近のアニメは綺麗な絵が多いけれど、その中でも間違いなくトップクラス。詩心もたっぷり。特に第1話の吹雪の鉄道の描写、第2話の南洋の島の夏の夕暮れは、臨場感がハンパじゃなかった。種子島の豊かな自然とゆっくり進む時間が心地良く、マジであの島に住みたいと思った。ロケットの打ち上げも見たい!冬の北関東(1話)とは別の国のようで日本は広いと実感。10代の恋愛話にげんなりという人もいるだろうけど、僕にはぬるいどころか第3話はほとんどホラーに近いものがあった(汗)。山崎まさよしの名曲でたたみ掛ける衝撃の第3話は以下にて。
【ネタバレ文字反転】→第3話はあまりに残酷。第1話で遠野とアカリはあんなに深く魂が結び付き、第2話でも他の女性に見向きもしなかったのだから、当然第3話で2人は結婚するものと思っていた。ところが、次第に文通の回数が減少し、ポストを眺めるだけに。結局アカリはとっとと他の男と結婚して幸せに暮らす。町ですれ違っても振り返らない(普通の映画ならあそこで振り向くのに!)。よく、男より女の方が現実的というけれど、遠距離恋愛の宿命を見せつけられた。っていうか、遠野のアホタレ!そんなにアカリのことが好きなら、なんで積極的に文通を続けなかったのか。東京で腐りきってるくらいなら、種子島に戻って澄田と幸せになれ!つか、絶対に澄田の方が良い!それから栃木編の外泊は映画的にNG。親が駅まで探しに来るに決まってるし、せっかく風景をリアルに描いているのに演出が非現実的で、「んなアホな」と一気に興醒めしてしまった。そもそも、僕が駅員なら大雪なのに待合室から追い出さない。キスもアウト。2人とも13歳なんて個人的に許せんッ(嫉妬全開)。このあたりがもっと奥手なら、異常なほど高得点になっていた。※澄田の飼い犬、犬小屋じゃなく金タライに入ってて可愛かったね。

 
235.マルサの女2('88)127分
伊丹十三監督が、宗教法人、ヤクザ(地上げ屋)、悪徳政治家の脱税問題という、超ヤバいネタに斬り込む。宗教法人はガッポリと金を儲けても税金を免除されるので、悪党たちは宗教法人を隠れミノに使っている。国税局査察部(マルサ)の主人公がこのカラクリを暴き、闇を白日の下に晒そうとするが…。※伊丹監督、ホント長生きして欲しかったです。

 
236.あずみ('03)142分
家康が豊臣方に放った刺客の物語。超ハードなストーリーと、随所で黒澤映画を思わせるリアルな殺陣に見入ってしまった。脇役に良い役者を揃えているし、各キャラに見せ場があったのがGOOD。敵も含めてすごいキャラ立ちぶりだった!(主演が上戸彩ということもあり、見るまでアイドル映画だと思ってた…めちゃ反省!)

 
237.ペンギンズ・メモリー/幸福物語('85)101分
サントリーのペンギンのマスコット・キャラクターで反戦帰還兵ものを創ったのには度肝を抜かれた。劇中に登場した詩「旅人は旅の終わりを求めてまた旅に出る」が良い。

  ビデオ絶版、未DVD化!
238.PICNIC('96)68分
心の病を抱えた人が暮らす施設へ入れられた3人の若者が探検へ出発する。探検といっても外の世界に出ることは規則で禁止されているので、施設の塀の上をひたすら歩いていくだけだ。この探検は悲劇的な結末を迎える。
※Charaと浅野忠信は本作の共演がきっかけで結婚した(別れちゃったけど…)。

 
239.ガメラ2 レギオン襲来('96)100分
ガメラは人類を守る為に宇宙生物レギオンと戦うわけではない。地球の守護神として戦っている。だから、人類だってガメラから地球を破壊する悪しき敵として認識されれば、いつ襲われるか分からない。人類への警句となるラストのセリフの為に、100分が費やされたといっても過言ではない。
地下鉄襲撃シーンのレギオン、マジ怖かった。

 
240.王将('48)94分
将棋の実力がありながらも貧しくて学校に行けなかった為に文字も書けず、世間の偏見と戦いながら頂点を目指した坂田三吉の物語。妻との電話のシーンに嗚咽。

 
241.茄子 アンダルシアの夏('03)47分
高坂希太郎(宮崎監督の右腕)が初監督。妙なタイトルなので劇場に観に行かなかったんだけど、レンタルしたらすごく良い映画だった。主人公は世界三大自転車レースの一つ「ヴェルタ・ア・エスパーニャ」で戦う選手。自転車ならではの風をきる爽快感が、画面からビシビシ伝わってきた!低い目線の構図など見せ方が工夫されてて、ホント、まるで自分が自転車に乗ってるみたいだった。選手の心理戦は手に汗握るし、ゴール直前のデッドヒートは観てて腰が浮いた。レース以外のドラマ部分も大人向けのテイストでグッド。47分の短編。

 
242.地獄門('53)89分
平安時代末期、平清盛に仕える恋に狂った武士の物語。着物が実に美しい!海外ウケを狙ったとしても作品が美しいことに変わりはない。役者が皆上手で、画面に見入ってしまった。愛を押し付けた結果、相手の女性は命を…。第7回カンヌ国際映画祭でグランプリに輝く(邦画初)。

 
243.打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?('93)45分
小学生の男の子と女の子の淡い恋と悲しい別れを描いたわずか45分の短編だが、一度見たら血肉と化し、生涯覚えているであろう作品だ。映画は必ずしも2時間にしなくとも、傑作を作ることが出来るのだという好例。子供たちの人物描写のみずみずしさに脱帽!監督は岩井俊二。

 
244.オネアミスの翼('87)119分
架空の国家オネアミスを舞台にした、人類初の有人宇宙ロケット打ち上げをめぐるドラマ。超リアルなロケット打ち上げシーンと、それに続く壮大な人類史走馬灯の映像は、“アニメでここまで出来る”というスタッフの熱い心意気(執念)を感じた。BGMを担当した坂本龍一の音楽も良い!GAINAXの第1回制作作品であり、企画に岡田斗司夫、作画監督に庵野秀明や貞本義行など、後に第一線で華々しく活躍するメンバーが揃っている。

 
245.座頭市('03)115分
殺陣は迫力あるし、笑いどころも多く、海外で高い評価を受けたのも納得。それだけに後半ややダレたのが残念。ソナチネ以降の北野映画は、クライマックス後がいつも余計。サービスのつもりだろうけど、完全に間延びしちゃってる…。とはいえ、観に行って損したとは思わない。他の監督には真似の出来ないパワーがあった!
【ネタバレ文字反転】
北野映画を愛すればこそ怒りをブチまけたい。中途半端なエンターテイメントは消化不良のもと!なぜ姉弟に敵討ちさせない!?何の為の伏線なのか!怒!浅野忠信との死闘の後、岸辺一徳がいつの間にか死んでるのも肩透かし。走り回る足軽小僧も、後半にオイシイ見せ場があるのかと思いきや、最後までただの道化。ラストのタップダンスもなぜスローモーションを混ぜるのか理解不能(タップは勢いが勝負!)。一番問題なのは悪党のボスを失明させて「殺しはしねえ!一生メクラでいな」と捨て台詞を吐いた事。座頭市がメクラを“刑罰”として表現してどーすんだ!(せっかく「メクラの方が人の気持ちが良く分かる」という台詞があったのに、ボスへ吐いた時のニュアンスは単純にザマアミロというものだった)。

 
246.忠臣蔵外伝・四谷怪談('94)106分
忠臣蔵と四谷怪談を合体させた映画(江戸時代に書かれた四谷怪談は元々忠臣蔵の外伝であり、歌舞伎では忠臣蔵の幕間に上演されていた)。赤穂浪士の討ち入りをお岩さんが手助けする。クライマックスに枯れたマーラーの曲を持ってくるセンスなど尋常ではない。熱賛。監督は深作欣二。

 
247.11人いる!('86)91分
原作は萩尾望都。宇宙最高峰の大学「コスモ・アカデミー」の最終試験は宇宙船での53日間の共同生活。試験はいつでも非常ボタンを押せば中止できるが、押せば全員が失格になる。試験が始まると、規定の受験生は10人なのになぜか11人いる。一体、誰が、何の為に紛れ込んでいるのか?やがて事故が発生し、宇宙船が軌道をズレたり伝染病が発生するなど、様々なトラブルが受験生を襲う。彼らはボタンを押さずに53日間を乗り切ることができるか!?(クライマックスからラストまでメチャいいです!)

 
248.ザブングル・グラフィティ('83)84分
明るいノリで西部劇タッチのロボット・アニメ。惑星ゾラは優れた科学力を持つ人類“イノセント”が、一般民衆の“シビリアン”を支配する星。ゾラにはどんな犯罪も3日で時効になる掟があったが、シビリアンの主人公ジロン・アモスはその掟を破って両親の仇・ティンプを追い続ける。ティンプがイノセントと繋がっていたことから、やがて階級間の全面戦争に発展していく。富野監督の貴重なコメディ作品。

 
249.少年時代('90)117分
終戦前年の富山を舞台に、疎開してきた主人公と地元の少年との友情を描く。子ども達の世界にも権力闘争があり、革命を起こすシーンは手に汗を握った。原作は藤子不二雄A。

 
250.いつかギラギラする日('92)108分
現金輸送車の襲撃に成功したものの、奪った金が予想の4分の1しかなく、血で血を洗う仲間割れが発生する。荻野目慶子のプッツンぶりは、映画と分かっていても観る者を緊張させた。

 
251.誰も知らない('04)141分
カンヌ映画祭主演男優賞に史上最年少の14歳で輝いた柳楽優弥君がどんな演技をしたのか、興味津々で観た。この子はスゴイ。感情を抑えた演技なのに、喜怒哀楽がビシビシ伝わってくる。ダテに賞は獲ってない。これからどんな役者になっていくのかとても楽しみだ。劇中の母親(YOU)の自分勝手さに呆れ果て、バラエティに出てる時の彼女まで一時は嫌いになった(汗)。

 
252.虎の尾を踏む男達('45)59分※クロサワ
源義経の奥州への逃避行を描いた歌舞伎「勧進帳」を映画化。頭を使って関所を突破しようとする弁慶と、それを阻止せんとする関守の知恵比べが展開される。敵味方を超えた友情が渋い。黒澤が戦時中に製作した作品(実際の公開は1952年)。

 
253.FRIED DRAGON FISH('96)50分
時価数千万円の熱帯魚、スーパーレッド・タイプのドラゴンフィッシュの盗難事件を追う探偵が、大量の熱帯魚を飼っている不思議な青年と出会う。監督は岩井俊二。
※水槽に囲まれた部屋で、探偵と青年がマーラーの曲を寝転がって聴いてるシーンは詩的で最高だった!

 
254.犬神家の一族('76)146分
犬神財閥の創始者が残した莫大な遺産をめぐり、怪奇な連続殺人事件が起きる。事件解決に挑む金田一耕肋の活躍を描く。ひょうひょうとして掴み所のない金田一を石坂浩ニが好演。監督は市川崑。

255.喜びも悲しみも幾歳月('57)160分
日本各地の灯台で海の安全を守ってきた灯台守の家族。彼らの戦前から戦後にかけての悲喜こもごものドラマを描く。“よーし、自分も頑張って生きよう”って思う、実に見応えのある2時間40分。監督は木下恵介。

256.お茶漬の味('52)115分
結婚から7年が経った夫婦。タイプの違う2人は互いの心の溝が年々深まっていくのを感じていた。“顔を見るのもウンザリ”、そう思った時に小さな事件が起きる--。離れてみて初めて分かる夫婦愛。2人ですするお茶漬の味。良い話デス。監督は小津安二郎。

 
257.じゃりん子チエ('81)110分
舞台は大阪通天閣が見える下町。バクチに明け暮れる父親に代って、家業のホルモン焼き屋をきりもりする小学生チエの物語(母は別居中)。チエの周囲には温かい人情の人がいっぱい。吉本の漫才師や落語家がオールスター状態で声優を担当し、大ヒットしてTVアニメにもなった。猫の小鉄の男っぷりも話題に。
※美形キャラばかりになった今のアニメ界を考えると、こんなゴツゴツのキャラで、セリフが大阪弁というアニメが、夜7時から放送されていたなんて信じられない。

 
258.ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破('09)90分
使徒に見られる美術の美しさは圧巻。作画はどこまでハイクオリティになるんだろう。昔流行ったフォークソングが、ロボットSFアニメにしっくりくることが分かったのも収穫(最初は違和感あったけどだんだん良くなってきた)。あと、もうHなシーンは不要。

 
259.男はつらいよ 紅の花('95)107分

シリーズ第48作(最終作)。マドンナは浅丘ルリ子。本作公開の10ヶ月後に渥美清はガンで他界。体調不良をおしての執念の演技。最後の作品のマドンナがリリーというのも何かの縁を感じた。予定では49作で満男が泉ちゃんと結婚し、50作で寅はリリーと結婚したんだろうなぁ。

 
260.逆噴射家族('84)106分
20年ローンで新居を建てて大満足の父。しかし白アリが発生したショックで精神のバランスを崩し、家族ケンカが絶えなくなる。そしてついに家族5人のバトルロワイヤルが勃発。あまりにシュールな内容が海外で高く評価された。

261.食卓のない家('85)145分
長男が過激派に走り、山荘籠城事件を起こしてしまった家族の、苦悩と悲しみを描く。長男の逮捕後、一家は地域の住民から白い目で見られ、投石の対象となった。母親は精神を病み、長女は婚約を解消されてしまう。そんな折、過激派によるハイジャックが発生し、長男を含めた仲間たちの釈放を要求する。動揺する家族--。

262.明治侠客伝・三代目襲名('65)90分
ヤクザを美化する映画は大嫌いだけど、冒頭の暗殺者のアップや、津川雅彦のキレた演技など、インパクトの強いシーンが多くベスト入り。内容は明治期の土建屋の縄張り抗争。この時代の侠客はカタギに迷惑をかけることを“恥”とする美学があり、市民に対して卑劣なユスリ・タカリをすることはなかったようだ。今と大違い。

263.メカゴジラの逆襲('75)83分
恐竜が実在する証拠を信じてもらえず、嘘つき呼ばわりされ世間を追われた科学者の復讐。人類を襲うメカゴジラはゴジラを上回るほどの攻撃力を持っていた。国際警察はメカゴジラの機能を停止させようとするが、起動スイッチは科学者の娘の頭に埋め込まれていた。メカゴジラを止めるには娘を殺すしかないという設定が子供心に衝撃だった。

  カッコよすぎるぜ!
264.続・三丁目の夕日('07)146分

冒頭でゴジラが東京の下町を襲撃するんだけど、その特撮がやっつけ仕事じゃなく、本物のゴジラ映画並のクオリティで思わず身を乗り出した。本編の方は、芥川賞をめぐる騒動が興味深かった。あの時代、文学というものがあんなに力があったんだなぁと。いや、何も今の小説がダメとかじゃなく、これほどまでに娯楽が多様化すると、まとまった時間のいる文学より、もっとインスタントに手に入り刺激の強いものに人が走ってしまうのは、残念だけど仕方ないかと。最近は芥川賞を獲ったからといって、ずっと食っていけるとは限らないもんなぁ。『三丁目の夕日』は第1作が“神作品”と呼ばれる出来映えで名エピソード満載だったのに対し、この第2作は3つほどしか大きな話がなく展開もゆっくりめ。だから勢いが落ちているように感じたけど、本作だけを見ていたら平均点以上の内容だし、普通に良い映画なんだと思う。1作目が1億点だと、続編はどう頑張っても見劣りしちゃうもの。今回グッときたセリフは、いつもより夕陽が綺麗に見えるというシーンの「僕、なんでか知ってるよ。それはね、3人で見てるからだよ」。これすごく良い。

 
265.ガメラ 大怪獣空中決戦('95)95分
ガメラ・シリーズ9作目であり14年ぶりの新作。従来はゴジラ以上に子ども向けの要素が強かったガメラ映画だが、本作では対象年齢を引き上げたシリアスな演出が話題に。遺伝子操作で誕生した怪鳥ギャオス(3匹)のエサは人類(捕食の様子が怖い〜)。ガメラはギャオスの敵だが、日本政府は共に怪獣という理由からガメラにもミサイル発射してしまう。金子修介監督の演出はファンから絶賛され、「平成ガメラはゴジラを超えた」と評価された。夕焼け雲の上を飛ぶシーンの美しさはヴィスコンティ映画かと思った。
※この6年後、金子監督はゴジラにも抜擢されることに。

  プラズマ火球を吐き出す

266.コクリコ坂から('11)91分
高校の文化部・部室館「カルチェラタン」の保存運動をめぐるドラマ。時代は学生運動たけなわの1963年5月。ぶっちゃけ、小さな子どもは置いてけぼりだ。なぜジブリや宮崎さんは数多くの題材から、約50年も前の高校生活・学園闘争を選んだのか。僕的には“今の学生は大人しいけど、昔はこんなに熱くエネルギッシュだった”“もっと元気出せ”というメッセージを受け取った。というか、あえてこの題材を選んだ理由が他に見当たらない。主人公の出生の秘密とか、チビッコには訳が分からないだろうし…。信号旗の意味や“メル”の由来など、色々放置してたなぁ。日々の朝食をはじめ食事シーンはさすがジブリ、どれも美味しそうだった。

267.時代屋の女房('83)97分
ボロい骨董屋“時代屋"の中年の店主と、店を取り巻く近所の人々、そして店にいついた不思議な女性をめぐる物語。様々な登場人物を見ているうちに、人生について考えさせられる映画。出演した夏目雅子は、公開の2年後に白血病で他界。まだ27歳の若さだった。本作での彼女はあまりに美しく、灰色の地味な服を着ていても画面の中から光り輝いていた。

  27歳で他界
268.クラッシャー・ジョウ('83)132分
西暦2160年。クラッシャーと呼ばれる惑星改造屋(なんでも屋)が巻き起こす、悪徳政治家や宇宙海賊たちとのバトルを描くスペースオペラ。痛快娯楽作。いまだにテーマ曲を聴いただけで興奮する。特にOPの音楽と映像の盛り上がりはヤバすぎる!

  アマゾンのレビューもアツイ
269.ゲド戦記('06)115分
「命」そのものを主題にした内容に好感を持った。“死”に怯えるアレンに対しゲドが言った『自分がいつか死ぬ事を知ってるという事は、我々が天から授かった素晴らしい贈り物なのだよ』という言葉は本当に素晴らしい。人間は他の動物と違って、やがて死ぬ事を“幸運にも”知っているからこそ、限られた時間をどう生きるか選択できるし、生命の尊さを理解している。死を恐れるあまりに生を実感できない者も、この言葉で無闇に死に怯えることはなくなり、前向きに生きる姿勢を保ち続けられる。
一方、この映画は問題も多い。スケール感がない、人物描写が浅い(ゲドの半生スルー)、ジブリ名物だった背景の描き込みがない、夏休み映画なのに笑いの要素が皆無で、暗く、血生臭い。竜は冒頭シーンの後は音沙汰無く、竜に対する感情移入がゼロのままクライマックスに現れ、面食らっているうちに映画は終わった。最終決戦では隣にいたチビッコが「クモ、目がない」と怯え、ずっと下を向いていた。にもかかわらず、僕はこの映画が好きだ。まさにその“地味さゆえに”好きだ。室内劇かと思うほどの登場人物の少なさ、舞台の狭さ、平面的で殺風景な背景、華のないキャラ。これらが昨今の情報過多アニメに食傷気味だった僕には心地良かった。アレンが父を刺したことの動機は説明不足だけれど、自分でも抑えられないほど凶暴になってしまう最近の少年を念頭に置き、作品を現代社会とリンクさせる為に挿入したのだろう。
【ネタバレ文字反転】
最後にテルーは「命は自分だけのものではない。生きて次の誰かに命を引き継ぐ。そうして命はずっと続いていくんだよ」と語る。クモや闇アレンが“自分の命だけを延ばす”ことにこだわっていたのに対して、テルーは“命は引き継がれるもの”と説く。これはゲドの言葉『いつか死ぬ事を知ってるのは素晴らしい贈り物』に対応している。自分の心臓はやがて止まるけれど、他者との係わり合いの中で、子どもを育てることでも、生き方を通してでも命は繋がっていく。永遠の命そのものだ。これは僕に深い感動を呼び起こした。
ただ、誉めた後で言うのもなんだけど、どうしてテルーは人間の姿をしていたのかは、最低限、語って欲しかった。それと、これはとても重要なんだけど、「命を大切にしない奴は嫌い」ってあんなに言ってたのに、敵とはいえクモを速攻で焼き殺すのは矛盾している。「悪党の命さえ大切」の方が、子どもにはテルーの意志が通じやすいと思うんだけどな…。ジブリのブランドで“不親切”な内容のまま公開すれば、猛烈に批判されるのは予測できたハズ。それでも非エンタメ路線を貫いた吾郎監督は、全く観客に媚びない点で凄いと思う(嫌味ではなく。吾郎氏が同じ1967年生まれというヒイキもあるけどネ)。
※原作者ル・グウィンは次の違和感を表明。「(原作に無い父殺しは)動機がなく、きまぐれ。人間の影の部分は魔法の剣で振り払えるようなものではない」「絵は美しいが、急ごしらえで、『となりのトトロ』のような繊細さや『千と千尋の神隠し』のような力強い豊かなディテールがない」「登場人物の行動が伴わないため、生と死、世界の均衡といった原作のメッセージが説教くさく感じる」「でも、ゲドの声と『テルーの唄』はとても良かった」。原作者にこう評価された事実は、吾郎氏もジブリも厳粛に受け止める必要がある。

 
270.昭和残侠伝・死んで貰います('70)92分
主演は高倉健。主人公はワケあって渡世人となるが、根は真面目な男。やがて老舗の料亭で板前として働き出す。そこに店を乗っ取ろうとする悪党が現れ、ずっと彼を信じてくれていた恩人を殺害する。彼の怒りは爆発し、ドス(短刀)片手に殴りこむ。
※タイトルは「死ね」ではなく「死んで貰います」という丁寧なところに主人公の人柄が出ている(爆)。

 
271.世界の中心で、愛をさけぶ('04)138分
あのストーリーが臭くならなかったのは、ひとえに長澤まさみの嫌味のない演技に尽きると思う。学年に一人いるかいないかのカリスマ的な生徒を、実に自然体で演じていた。体育館の回想シーンでアキが弾いていたアヴェ・マリアは、ほんと心に沁みた。プロのピアニストじゃなくても、めっさジーンときた…。そして最後。風に舞った後の「アキらしい」というセリフが、エンディング・ロール中に何度も思い出されてウルウル。

※ただし!サクが萩原朔太郎の詩に興味を持たないのは、朔太郎ファンとして激怒モノ。自分の名前の由来になった詩人なんだから、詩集を手にとってくれッ!映画の本編とは関係ないし、こだわる部分でないのも分かってるけど、あれじゃあ朔太郎って付けた親があまりに可哀想だ。高校時代に知らなかったのはまだいい。でもアキに質問されて答えられなかったのなら、その後に読んどけい!社会人となっても同じ会話をしているサクに猛省を求ム!

 
272.無能の人('91)107分
数々の商売に失敗してきた元漫画家が、石を売れば元手がかからないとひらめく。そして多摩川で拾った石を売るが一向に売れない。そんなスローライフを描く。

273.日本の夜と霧('60)107分
監督は大島渚。新安保闘争や全学連の学生運動を通して、ドロドロの内紛で傷つきあう若者たちを描く。映画の最後は政治演説で終わる。今はこんな映画、まず制作されない。

274.瀬戸内少年野球団('84)143分
終戦の翌月、淡路島に赴任した女性教師が、子ども達に野球を通して人生を教えようと奮闘。やがて少年野球団は進駐軍と試合をすることに。グレン・ミラー楽団の『イン・ザ・ムード』が映画を盛り上げる。子役がみんな芸達者で感心。本作品が夏目雅子の遺作となった。

275.僕らはみんな生きている('92)115分
軍事独裁国家へ商談の為に出張した4人の日本人商社マンが、突如勃発したクーデターに巻き込まれてしまうサバイバル・コメディ。市街戦の始まった首都を抜け空港を目指すが、1人がゲリラに捕らえられてしまう。見捨てれば3人はそのまま帰国できるが、命懸けの救出作戦に乗り出す--。
ラスト30分が盛り下がったのが悔やまれる。前半のクーデターのシーンは邦画離れしたリアルさがあった。

 
276.幻魔大戦('83)135分
宇宙を破壊しようとする“幻魔”による地球侵攻を阻止するべく、世界各地から結集した超能力者の死闘を描く。廃墟と化したニューヨークでの戦いは、かなりの迫力。サイボーグ戦士ベガのデザインがナイス。クライマックスの火竜の動きが芸術的。キース・エマーソンの音楽も良い。
※この映画の帰りに、さっそく本屋で“超能力入門”を買ったんだけど、1ケ月特訓して全く素質がないことが判明。

 
277.細雪('83)140分
谷崎潤一郎の長編小説を映画化。時代は1938年。京都の料亭の4姉妹の人生を、美しい四季の映像を織り交ぜながら描いていく。※'50年と'59年にも映画化された。

278.耳をすませば('95)111分
読書好きの中学生の少女・雫が図書館で手に取る本には、常に貸出カードに“天沢聖司”という男の名前が書かれていた。彼女は中学3年の夏休みについに彼と出会う。

男にとってはホラー映画。僕はがぜん失恋したクラスメート男子の味方デス!ひとつ言っておきたい。美形で誠実で優しくて知的で本の好みが一緒でヴァイオリン職人なんていう、あんなパーフェクトな男はまずいない!しかも中学生にしてプロポーズ。こ…こ…この野郎!!(笑)

 
279.魔女の宅急便('89)112分
魔女の少女キキの自立物語。都会で宅急便を始めたキキと友達になる、森の絵描きのお姉さん・ウルスラの生き方がカッコイイ。キキが傷ついたり落ち込むと魔法が使えなくなるという設定がリアルだった。見終わるとパンが食べたくなる作品(笑)。

 
280.忠臣蔵('59)※東映版 183分
片岡千恵蔵が大石内蔵助、中村錦之助が浅野内匠頭、進藤英太郎が吉良上野介という豪華な顔ぶれに、さらに市川右太衛門、里見浩太朗、北大路欣也、大河内傳次郎、美空ひばりまで加わった、東映オールスターによる夢のような忠臣蔵!江戸城で恥をかかされ自刃した主君(赤穂藩主)の為に、47人の浪士たちが復讐を敢行する物語。クライマックスは有名な吉良邸への討ち入り。

『忠臣蔵』には大映オールスター版('58)もある。そちらは長谷川一夫(大石内蔵助)、市川雷蔵(浅野内匠頭)、滝沢修(吉良上野介)の他、中村鴈治郎、鶴田浩二、勝新太郎、志村喬という目もくらむような主役級スターがズラリ。僕はまだ未見なので早く観なくちゃ!

 
281.カムイ外伝('09)120分
冒頭の殺伐とした忍者バトルにのっけから引き込まれた。松山ケンイチ扮するカムイの走る姿は絵になった。最後に大物の敵が残っているのは、いかにもパート2を作ります的なオチで消化不良。

  このジャケットはべらぼうにカッコイイ!
282.俺たちの交響楽('79)112分
町工場で働く若者たちがベートーベンの第九を歌う為に仲間を集め、友人の死や仲間の退団などを乗り越え、ついに本番の舞台を成功させるまでのヒューマン・ドラマ。武田鉄矢が好演。ラストの打ち上げシーンが良い。

283.太平洋の奇跡-フォックスと呼ばれた男('11)128分
激戦地サイパン島で45000人の米軍をたった47人の兵で翻弄した大場栄・陸軍大尉ら日本兵の戦いを描く(実話)。前半のバンザイ突撃の総攻撃シーンは圧巻。知略を尽くす大場大尉のことを米兵らは「フォックス」と呼んで畏怖した。“天皇陛下”という言葉が出た瞬間に、全兵士が姿勢を正すなど細かな演出に評価。ただし、日米の架け橋になろうとしていた通訳が日本兵に射殺されたシーンでの大尉の予測の甘さ、B29が本土爆撃に向かうのを見ているのに日本敗戦を信じようとしない態度に“あれれ?何か違う”と点数が下がった。

284.機動警察パトレイバー2('93)113分
近未来を舞台にした警視庁警備部特車二課の活躍を描く。ガラスに映る人間の表情まで描き込まれておりブッ飛んだ。ただしストーリーの評価は微妙。自衛隊のクーデターを演出した犯人が警句で言ってることなんて、普通に新聞読んでりゃ誰だって知ってること。日本の防衛システムの脆弱さを訴えるなら、そうならない為の外交の大切さも語らないと片手落ち。

285.イノセンス('04)99分
邦画で初めて米国ビルボードのトップに輝き、マトリックスの元ネタになった『攻殻機動隊』の続編。近未来のサイバー犯罪に挑む警官の活躍を描いている。冒頭から最後まで目眩のするような映像美で、絵的には日本アニメの頂点に位置する作品。あり得ないほどリアルに描き込まれた美しい映像に、作り手の気迫を感じた。…しかし!万人にお薦めできるかといえば、躊躇してしまう。前作を観ていないと主人公と恋人との関係が分からないし、専門用語が何の説明もなく次から次へと出てくる。物語自体もダーク。政治家や暴力団とパイプを持つ、性的愛玩ロボットを作っている企業が、少女ロボットにリアルな感情を持たせる為に、生身の少女たちを誘拐、その精神を移植していく(少女たちは廃人になる)、そんなドロドロの企業犯罪を暴くもの。まったくワクワクしないストーリーが辛い。

286.スウィングガールズ('04)105分
楽しい映画だった。それは間違いない。ただ、高校時代に吹奏楽部でユーフォニウムを吹いていた僕としては、全然練習してない長期離脱組が路上ライブでいきなり演奏し始める場面に唖然。「そんなに簡単に上達しねーよ!」って目が点になった。主演は上野樹里。雪の中をスッ転んだり他人の弁当を盗み食いしたり、ドラマ『のだめカンタービレ』の天然キャラとモロ被りで面白かった。

 
287.カムイの剣('85)132分
江戸時代を舞台に、アイヌ出身の忍者が伊賀者と協力して謎の旅僧・天海と戦う。途中、海賊キャプテン・キッドの財宝をめぐって渡米し、新聞記者のマーク・トウェインと会ったり、クライマックスの戊辰戦争では西郷隆盛と会ったり、とにかくスケールのデカい冒険活劇だった。カムイの必殺技“無拍子”や、刺客お雪の忍術など見せ場も多い。音楽は宇崎竜童。

 
288.壬生義士伝('02)137分
守銭奴と蔑まれていた新選組隊士の吉村貫一郎が見せる漢気に泣いた。佐藤浩市の「この男を斬ろうと思った」が怖い。

289.青春の蹉跌('74)85分
激しい上昇志向と野望を持つ青年の恋や焦燥感、そして孤独感を描く。殺人を犯してでも成功しようとするが、輝かしい未来が約束された時に、アメフトの試合で猛烈なタックルをあび…。あの骨折した瞬間の音が耳にこびりついてる。映画『太陽がいっぱい』とダブッた。

290.パコと魔法の絵本('08)105分

まったく新しい日本映画。毒気全開、奇天烈キャラがスクリーン狭しと駆け巡る、極彩色ミュージカル。蛍光色の洪水で目がおかしくなりかけるんだけど、あの常人離れした色彩センスは天才・中島哲也監督ならでは。舞台はとある病院。患者も医者も自分勝手でハッチャケた人間ばかり。その中に“頑固爺い”と呼ばれる院内の嫌われ者(役所広司)がいる。彼は他人を傷つけてばかりいる偏屈な男だが、ある少女と出会って心の中に変化が起きる。少女の名はパコ。記憶障害でたった1日しか記憶が保てず、それゆえに“頑固爺い”が幾ら意地悪をしても、翌日にはニコニコとなついてくるんだ。“頑固爺い”は自分の行動を恥じ、パコの誕生日に彼女の愛読書の絵本を舞台にして上演しようと奮闘するが、彼は過去の言動で嫌われており周囲の協力をなかなか得られず--。個性的な役者が揃った大人の為の寓話。「ゲロゲ〜ロ♪」と絵本を読むパコ役のアヤカ・ウィルソンは本当に可愛い。ただ、全体の演出としてちょっとCGキャラを使いすぎ。くどい。ポイントを絞ってCGを使った方が効果があると思うな。最後の急展開も余計。泣く用意をしてたのに疑問符が感情の流れを断ち切った感じ。う〜ん、もったいない。でも、良い話には違いない。

 
291.台風クラブ('85)96分
台風が接近するなか、校内に残った中学生たちが狂気に包まれていく。そこいらのホラー映画よりよっぽど怖い青春映画。監督は相米慎二。

292.ゴジラVSモスラ('92)107分
大ヒットを記録したシリーズ第19作。1万2千年前、環境破壊を起こた先住人類コスモスは、地球の生命体の象徴である怪獣バトラによって滅ぼされたという。現代、再び環境破壊が進んでおり、「このままではバトラが呼び起こされる」とコスモスの生き残りの双子の小美人が人類に警告。だが、時すでに遅くバトラは復活した。一方、コスモスたちの守護神モスラも呼応するように孵化し、ゴジラも目覚め、三つ巴(どもえ)の戦いが始まる。脚本に環境問題を絡めてくるなど、“ただの怪獣映画にしたくない”という製作スタッフたちの思い(反核映画の初代ゴジラへのリスペクト)が伝わって来た。

  ゴジラは脇役。正確には「モスラVSバトラ」
293.アップルシード('04)103分
米国で試写会をした時に「ハリウッドでは制作不能」と言わしめた驚異の映像。なんというか、行き着くとこまで行ったという感じ。あまりにも背景がリアルすぎて、最初はしばらくの間、人物が背景に馴染まず生理的に息苦しくなるほど。人物がのっぺりしてるのはアニメだから当然なのに、それに違和感を覚えるほど究極のリアル映像だった。作品の舞台は近未来の世界大戦後という設定。何度も戦争を繰り返してきた人類は、平和を愛するクローン人間(クローンはクローンを殺さない)を生み出し、彼らと共存することで理性を維持し、戦争を根絶しようと試みている。しかし、人間の中にはクローンを差別する者もいて、社会情勢が不安定になっていく…そんな物語だ。野郎どもは“多脚砲台”の映像美に泣けッ!

 

294.男はつらいよ 柴又慕情('72)109分

シリーズ第9作。マドンナは吉永小百合。失恋した時の寅の肩の落とし具合が、もう気の毒で気の毒で…。中盤のマドンナの昔の恋バナを聞いてるシーンの寅の脱力ぶりも神演技。

 
295.私は二歳('62)88分

幼児から見た大人世界という設定はユニークで新鮮。それ自体はグッド。一方、現代とは感覚が異なるとはいえ、幼児がいるのに煙草をスパスパ吸っているシーンが多く、点数が下がった。若い頃の船越英一郎って、甘いマスクで鼻も高く西洋系。ファンが多かったろうなぁ。キネマ旬報ベストテン日本映画1位。

296.GOEMON('09)128分
石川五右衛門、服部半蔵、霧隠才蔵、猿飛佐助、名前を見ただけでテンションのあがる忍者が登場し、本能寺の変から関ヶ原の戦いまでが描かれる。五右衛門役の江口洋介はハマリ役だった。『CASSHERN』肯定派の僕は、今回も紀里谷監督の映像センスに唸った。予算が無いなかCGを駆使してあのスケールの戦いを描ける才能は評価されるべき。ただし!歴史の改変では、やっていいことと悪いことがある。真田幸村に従っていた猿飛佐助が、よりによって宿敵の家康を守るってどういう了見っすか!それから秀吉のボディガード役をしていたチェ・ホンマン。秀吉は朝鮮を侵略してメチャクチャにした男なのに、韓国人のホンマンが秀吉の親衛隊って、ちゃんと脚本読んでその役を引き受けたのか?違和感アリアリで脱力した。他はそんなに悪くないし、大坂城の攻防戦や釜ゆでのドラマも良かった。

 
297.百万円と苦虫女('08)121分
蒼井優の映画を観ていていつも思うんだけど、演技があまりに自然体で、映画を観ていることを忘れてしまう。内面の変化がスッと伝わってくる。年の離れた弟からの手紙を読むシーンが良かった。

298.浮雲('55)124分
男女の業は果てしなく。ぶっちゃけ、周囲の人間を不幸にしまくる2人に感情移入は不可能。こんな煮え切らない男のどこがいいのかと思うけれど…好きになってしまったらどうしようもないのかなぁ。主演、森雅之&高峰秀子。監督は成瀬巳喜男。あの小津監督が「俺には作れない映画だ」と絶賛した。

 

299.日本の悲劇('53)116分
戦争未亡人として女手一つで2人の子を育て上げたにもかかわらず、成長した子どもは母の愛情を重荷に感じ反抗する。ラストは悲惨の極み。

300.月はどっちに出ている('93)95分
在日コリアンのタクシー・ドライバーが主人公。彼が出会ったフィリピーナや、タクシー会社の一癖も二癖もある同僚たちの人生模様を描く。今の日本が様々な国の人々で成り立ち、皆が懸命に生きているのが伝わって来る作品だ。従来の邦画にはなかった不思議なパワーがあった。

301.ゴジラFINAL WARS('04)
日本に生まれ、男である以上、50年続いたゴジラの完結編と言われれば劇場まで足を運ぶしかない。宣伝でも「50年の集大成」と煽っている。観るべきか観ないべきか、そういう選択肢は始めから存在していない。たとえ初期の反核・反戦メッセージが消え、ただの怪獣プロレスになっていても…。

302.ふたり('91)150分
赤川次郎原作。尾道に住む14歳の少女が、かつて事故で他界した姉の幽霊と“ふたり”で力を合わせ、人生のいろんな壁を乗り越えていく。エンディングに流れた大林監督自身の歌声は観客をどよめかせた。

303.カルメン故郷に帰る('51)86分
日本初のカラー映画はストリップ・ダンサーの里帰り物語。あの高峰秀子の逆噴射ぶりに目が点!えらいものを見たという感じ。

304.御法度('99)100分
大島渚&坂本龍一&ワダエミ。これでハズレるわけなし。全編を貫く美意識に酔い、新選組本陣に漂う妖気にむせ返りそうだった。役者も良い(たけしの土方はちょっと違うけど…)。順位が低いのは、池田屋事件など派手な戦いを期待していたから。大島流の死の美学で新選組玉砕というクライマックスを期待してたんだけど、よもや衆道がメインとは。うーむ。

305.キューティーハニー('04)93分
サトエリのプロモーションビデオとか世間では悪口も書かれていたけど、僕はハニーの嫌味のない底抜けの明るさが心地よかった。パンサークローの戦闘員が空の彼方に舞う冒頭の戦いで吹き出した(笑)。監督は庵野秀明。お馬鹿映画、大いに結構!

306.姿三四郎('43)97分※クロサワ
後に“世界のクロサワ”と呼ばれることになる黒澤監督が、戦時中に33歳で発表した記念すべきデビュー作。明治期の日本を舞台に、柔道を極めようと突き進む姿三四郎の生き様を描く。吹きすさぶ嵐の中でのライバルとの決闘が迫力。

307.COWBOY BEBOP 天国の扉('01)114分
宇宙を舞台に賞金稼ぎの活躍を描いた玄人好みのSFハードボイルド・アニメ。史上最高額の懸賞金を掛けられたテロリストを追う。映像のクオリティは最高峰。菅野よう子の音楽もGOOD。この手のシブい大人向けアニメは絶滅寸前だから大切にしたい。
※超燃えまくりのTVシリーズのオープニング曲が使われなかったことで、ファンのストレスは冒頭でMAXに。DVDには別バージョンのOP曲を入れて欲しい。

 
308.チョムスキー9.11('02)74分
ロック・バンドU2のボノが「飽くなき反抗者」と絶賛し、マスコミから「命知らず」と呼ばれる反骨の知識人、チョムスキー教授の記録映画だ。彼は全米で「米国こそが世界最悪のテロ国家」「米国はアフガンに援助ではなく賠償すべき」と講演しており、冗談抜きでいつ暗殺されてもおかしくない人物。劇場には外国人の客も多く、“いかにブッシュが何も考えていないか”と吠えまくる教授の毒舌ぶりに、何度も爆笑が巻き起こっていた。

 
309.スカイ・クロラ('08)121分
アニメ界の巨匠、押井守監督の最新作。舞台は完全な平和が実現した世界。人々はどこかで戦争が起きてないと、平和の有り難さが実感できないと思い、『戦争請負会社』が提供する“ショーとしての戦争”を安全な場所から見ている。見世物の戦争だから勝敗はつかず終わりはない。ただ、戦局は大きく動かなくても、小競り合いで戦死者は出る。この戦争で戦うのは“キルドレ”と呼ばれる10代後半で成長が止まった子供たち(クローン?)。病気もなく年もとらないキルドレたちは、永遠の命=退屈な日々に悶々としている。だから、戦死の可能性があっても出撃する。戦場の空こそが、生きている実感が湧く唯一の場所だからだ。そして子ども達は殺し合いを永遠に続けている。しかし主人公は地上の平凡な毎日にも意味を見出していこうとする--「いつも通る道でも違うところを踏んで歩くことが出来る。いつも通る道だからって景色は同じじゃない」。

押井監督いわく「僕はこの映画を通して、今を生きる若者たちに、声高に叫ぶ空虚な正義や、紋切り型の励ましではなく、静かだけれど確かな、真実の希望を伝えたいのです」。退屈に見える日常だって輝きに満ちていることや、自分の存在価値に気付いて欲しいという、押井監督の祈りが込められた力作。映像美は仰天するほど。登場人物が読む新聞は記事が実際に書かれており、コクピットの無数の計器類は全て飛行状態と符合する。緻密な音響も特筆に値する。服がこすれたり、床がきしんだり、日常の小さな生活音まで徹底再現されている。ただし、声優の菊地凛子は微妙。無機質な語りが映画に合ってるという意見もあるけど、それを考慮しても棒読みすぎる。海外の賞狙いで映画人に知名度のある彼女を抜擢したのかな。栗山千明やアンヌ隊員@ウルトラセブンは上手かった。(原作未読)

 
310.踊る大捜査線('98)119分
邦画界においてアニメ以外では近年まれにみるメガ・ヒットを記録。TVシリーズを観てない僕でもそれなりに楽しめた。キョンキョンのサイコっぷりは不気味だったし、織田裕二の“例のシーン”では不覚にも涙ぐんでしまった。ただ、犯人があまりにショボい。意外性も何もないし、映画なんだからもっと黒澤映画のように、犯人にも哲学的な深みを持たせて欲しかった。

311.まあだだよ('93)134分※クロサワ
黒澤監督の30本目の作品にして遺作。作家・内田百閧ニその門下生達の師弟愛を描く。※ちなみに内田百閧ヘ夏目漱石の門下生だった。
淀川長治先生のコメントにグッときたので紹介→「若い映画ファンの多くが、この師弟の物語を観て“時代おくれ”“照れくさい”“ついていけない”と言う。馬鹿かと思った。なぜ監督の、美を一途に追い求 める姿勢が分からないのか。日本中が今、この温かさを受けつけなくなった。怖いし、悲しい。干からびた地面からは、このような枯れ木の若者が伸びるのか。 この映画、乾いた土に水の湿りを与える」。

 
312.あの夏、いちばん静かな海('91)101分
聴覚障害者同士の青年と少女のひと夏の恋を描く。切なさ全開。監督は北野武。

313.GONIN('95)109分
バブル崩壊でリストラされたり世間の落伍者となった5人の男が、暴力団事務所に強盗に入り大金を強奪する。5人を演じるのは、佐藤浩市、本木雅弘、根津甚八、竹中直人、椎名桔平。敵の殺し屋は北野武。クセのある俳優が揃った豪華キャスティングのバイオレンス・アクション。ただ、クライマックスで5人のパワーが炸裂すると思ってたので、地味な展開に肩透かしをくらった。

  全員が雄叫びをあげているジャケット
314.死んでもいい('92)117分
不倫清算ドロドロ愛憎劇。血は流れなくともリアルすぎる殺しの場面に窒息しそうになった。ダンナが憐れ過ぎる…。大竹しのぶがあまりに危険。

315.十九歳の地図('79)109分
地方から上京し、新聞配達をしながら予備校に通っている青年が主人公。彼は配達先で気に入らないことがあれば“呪いの地図”に書き込む(犬が吠えるとか、集金で文句を言われたとか)。そしてこれらの家にイタズラ電話をかけることで復讐している。※もっと前向きに生きるべし。

316.機動警察パトレイバー('89)98分
近未来、作業用のレイバー(ロボット)や自衛隊のレイバーが次々と暴走する事件が発生。捜査を進めるうち、ある一定の条件になった時に東京を壊滅させるほどのコンピューター・ウイルスがバラ撒かれていることが判明する。監督は押井守。

 
317.マタンゴ('63)89分
海で遭難し、南の島に漂着した7人の男女。食糧が尽き、島には不気味なキノコしかない。だが、このキノコを食べれば醜い化け物“マタンゴ”になってしまうことが判明する。飢えて死ぬか、それともキノコを食べて化け物となって生きるか。彼らは究極の選択を迫られる--。
【ネタバレ文字反転】
みんなマタンゴになっていくのが子供心に怖すぎた。否、今も怖い。ラストも夢オチに見せかけて、ガチ(マジ)でマタンゴだったし…(>_<)
  怖いので画像を超縮小
318.機動戦士ZガンダムV-星の鼓動は愛('06)99分
ガンダム第1作の正統な続編(設定は7年後)。20年前にテレビでオンエアされた全50話を、監督曰く“新訳”し、新作部分を含めて3部作に再構成した作品の第3部。
権力は必ず腐敗する。ジオンとの戦いに勝利した地球連邦政府は宇宙移民者への弾圧を強め、軍内部には地球出身者だけで編成されたエリート部隊「ティターンズ」まで誕生した。特権を振りかざすティターンズに反感を抱く主人公は、反連邦組織エウーゴに入り、そこで名前を変えたシャアやかつてのホワイトベースの面々と出会っていく…。
それにしても、旧ガンダム3部作は全43話をまとめる為に上映時間が2時間以上あったのに、『Z』は50話もあるのになぜ90分しかないのか。それに『めぐりあい宇宙』ではTV版の映像を全て新たに描き起こしていたのに、『Z』は長い制作期間があったにもかかわらず、20年前のセル画を各所で使いまわしていた。制作費を浮かす為と思うけど、新作部分が美しいだけにアレは観てて辛かった。日本政府は富野監督に補助金を出し、こんなことが無いよう支えてあげて欲しい。

僕は“ガンダム原理主義者”(ファーストしか認めない派)ではなく“全ガンダム肯定派”なので、この劇場版完結編も前向きに受け止めたい。しかし、映画の余韻が全て消し飛ぶエンディングのラップ音楽は最悪。ファーストの三部作はエンディングが良かっただけに、富野御大の御心が分からなくなった。クライマックスのバビル2世や幻魔大戦のような超能力バトルも、当時ならともかく今観るとかなりハッチャケすぎな気が…(Zの機体って魂を集める特別なシステムがあるの?)。ヘンケン艦長の漢魂とバトルシーンの美麗新作カットを観られたからチケット代の元はとったと思うけど、“新訳”のフレコミの期待が大きかっただけに、ラストの数分以外は何も変わっていないことに「エッ!これだけ!?」と肩透かしを食らった感じ。

  パラス・アテネのガンプラ作りたい
319.八月の狂詩曲('91)98分※クロサワ
長崎で被爆した祖母と4人の孫たちのひと夏の出来事を綴る。激しい嵐の夜、雷の光に「ピカが来た!」と叫びだす祖母。孫たちは戦後半世紀が経っても深いトラウマが祖母に残っていたことを知る。豪雨の中を走り出す祖母を追いかける孫たちの姿に胸が熱くなった。

 
320.伽椰子のために('84)117分
伽椰子(かやこ)は敗戦の混乱期に、両親に棄てられた日本人の少女。彼女は朝鮮人に拾われて大切に育てられた。その彼女を在日2世の青年が惚れる。2人は愛し合うが周囲の大人たちによって引き裂かれてしまう…。監督は小栗康平。
※女優の南果歩(渡辺謙の奥さん)は伽椰子役でデビュー。僕は17歳のとき、この作品を観る為に、今は無き大阪の三越劇場に足を運んだ。その日は舞台挨拶があり、上映後に劇場出口で南さん(当時21歳)が観客を見送っていた。僕は勇気を出して握手してもらった。もう卒倒寸前。その日はお風呂に入る時に、マジで右手をビニール袋に入れて、水がかからないようにした。もう20年以上前の青春の思い出デス。

321.電車男('05)101分
主演の2人の演技が上手い。特に山田孝之のキョド目&早口がめっさリアルで、こっちまでハラハラ。彼が着てた百式Tシャツ(Zガンダム)や部屋にあったパーフェクト・ジオングなど、オタクの血潮を熱くさせる小ネタにニヤリ。ハーメス→エルメスは自分も勉強になりました(笑)。ロング髪、眼鏡、アキバ・ファッションの山田君が、ジャケットに着替えて髪を切った時に同じ役者に見えず、変われば変わるものだと感心。誠実さと優しさが相手に届けば、オタクや外見は関係ないってのは実際に耳にするし真実だと思う。※ネットカフェの3人組がいいね。

322.千年女優('01)87分
かつての大女優が悲しい恋の記憶をたどる。過去と未来が交錯する演出が凝っていて、脇役のカメラクルーの2人が良い味を出していた。クライマックスの記憶の洪水が圧巻。

 
323.PERFECT BLUE('98)81分
アニメで本格的なミステリーを堪能。犯人がおぞましいぜよ…。

 
324.リング('98)95分
あの“呪いのビデオ”の奇妙な映像は本気で怖かった。鏡が動いたり、布をかぶった女性が指を差していたり…。僕は事前に友人から被害者の顔を見てはならぬと警告を受けていたので、幸いなことに最後まで見ずに済んだが、もし見ていたら後に残って大変だったと思う。

325.スチームボーイ('04)126分
科学の発展と戦争を絡ませたのはいい。映像も日本アニメの過去最高水準だった。しかし、10分で終わる話をズルズルと2時間見せられたのは辛い。また、本職の声優ではなく俳優を使ったせいか、キャラにイマイチ血が通っておらず、最後まで感情移入できなかった。BGMのボリュームもでかすぎて途中から頭痛がした。もちろん、これらのマイナス面を差し引いても、そこらへんのアニメをはるかに上回るデキであることは間違いないけど…AKIRAが良かっただけに、期待が大きすぎたということか。

※最近の大作アニメはどれも絵がきれいなだけで、あまりに物語に魅力がない。最初はそれでも絵がきれいでアクション・シーンがド迫力であれば良いと思っていたけど、自分が年をとったのか、だんだんキツくなってきた。


326.パタリロ!スターダスト計画('83)48分
巨大なヒョウを降らせて世界を破壊しようという悪の組織と、マリネラ国王パタリロ&MI6少佐バンコランが対決。ラストに明かされる黒幕が衝撃的だった。(同性愛がノーマルなものとして描かれたのは、当時としては画期的。そして、ここまで明るく大っぴらなのは今でもない)

  もちろんクックロビン音頭も炸裂
327.バトルロワイヤル2('03)133分
この支離滅裂&矛盾だらけの脚本にGOサインを出した制作サイドの勇気は感嘆に値する。前作のバトルロワイヤルは生命の尊厳を考えさせる重いテーマがあったが、続編はただの戦争映画。主人公たちは人を殺すことで苦しんだり葛藤したりしない。作品に1mmの深みもなく、超脱力。ただし、米国を名指しで堂々と批判してのけた事はアッパレ。そこまで明言するかと正直驚いた。“勝ち組”“負け組”という言葉への反抗も共感を呼んだ。それゆえワーストではなくベストに入れた。

「日本、中国、北朝鮮、グァテマラ、インドネシア、キューバ、コンゴ、ペルー、ラオス、ベトナム、カンボジア、グレナダ、リビア、エルサルバドル、ニカラグア、パナマ、イラク、ソマリア、ボスニア、スーダン、ユーゴスラビア、アフガニスタン。これ全部一体どんな国だか分かりますか。これらは皆この60年間で、アメリカに爆撃を受けた国です。その数実に22カ国!死者およそ800万人ッ!世界は平等なんて嘘です。人の命は平等なんかじゃありません!」

「俺達は知っている。一握りの大人が、一握りの国が、世界中の平和や自由に勝手に決めていることを。だけど俺達が生きるこの世界は決して一つなんかじゃない。そこには当たり前に生きる63億の人間がいて、63億の暮らしがあり、63億の平和、63億の正義、63億の戦争と悪がある。誰も戦わずに勝ち得た平和なんかない。平和の裏にはたくさんの血と汗と涙が染み付いている」

(総理)「とうとうあの国を怒らしちまったんだよ。今大統領から電話があってね、12時間後に総攻撃だそうだ。この際、子ども5人や10人死んでも構わん。少々OK!ミサイルを使ってあの島ごとフッ飛ばしなさい!世界には勝ち組と負け組の2つしかない。君はどっちだ?正義と自由の為にあの国と一緒に戦うか、それとも…」
(生徒達の担任)「ガチャガチャうるせえんだ!この人殺し野郎?昔あんたらはあの国に12歳の少年にたとえられた。じゃあ今のあの国は一体何歳だ!え!?ムカツく国がありゃすぐ平気で空爆する!それが大人のやることかい!」
(総理)「君、今世界はあの国を中心に一つになっている」
(担任)「そんなの誰が決めた!」

 
328.男はつらいよ 知床慕情('87)107分
第38作。マドンナは竹下景子。“あの”三船敏郎が寅さんと共演し、コミカルなシーンもこなしてしまうことに感動。竹下さんがキレイ。

 
329.崖の上のポニョ('08)101分
宮崎監督いわく“神経症と不安の時代に立ち向かおうとした映画”。そして“魚のポニョがワガママを貫き通す物語”。宮崎監督は子ども達に向けて映画を作ったと公言しているので、これらの言葉を素直に受け取ると、「最近の子供は大人の顔色や周囲に気を遣いすぎて萎縮しているので、もっとワガママになっていいんだよ」ということ、そしてトコトン約束にこだわる少年・宗介の姿から「約束を守ることの大切さ」をシンプルに伝えようとしているのだろう。ポニョのデザインを初めて見た時、人面魚なのでちょっと微妙だったけど、実際に動いている姿を見るとメチャクイチャ可愛い!特にパンを出された時なんかのプイッと向こうを向く仕草は萌え死にそうだった(笑)。お母さんの「BAKABAKA」のやりとりも面白かったな。嵐のシーンはド迫力!海が生きてるように盛り上がり、動きが見ていて怖い。アニメーションという表現方法の本領発揮というところ。

【以下ネタバレあり】ストーリー的には、世界を滅ぼす巨大な敵にポニョと宗介が立ち向かう訳でもなく、劇的なドンデン返しも用意されておらず、映画的な興奮に欠けるので大人にはちょっと物足りないかも。第一、普通の映画であれば町を守る為に戦うキャラに感情移入&勝利してカタルシスを得るのに、本作では町を水没させる張本人=悪がポニョ自身なんだから、観客としても気持の持って行きようがない。でも、そこに不満を言っても仕方がない。この映画はそういうものを求める作品ではないのだから。トトロと同じで、何でもない普通のシーンに忘れていた子供の感覚を思い出したり、金魚ポニョ&妹たちの愛らしさに骨抜きになったり、そういう穏やかな心の動きを楽しめるところに魅力がある。ロケ地になった広島県福山市鞆の浦にも行ってみたいと思った。声優さんはみんな上手い。ジブリ作品は俳優を声優に起用するので最初は不安なんだけど、見始めると違和感なくキャラが生きているので感心してしまう。驚いたのはエンディング・クレジットで、キャラの声を誰が担当したのか出なかったこと。声優もアニメーターも広報も、映画に関わった人が肩書きなしでごちゃ混ぜに出てきてビックリ。僕はあんなエンドロールを初めて見た。

それにしても、可愛いキャラがスクリーンの中を走り回る明るい映画なのに、同時に死の気配が全体に漂っている不思議な作品だった。なんかこう、南の島で強い日差しが作る漆黒の影を覗いている感覚。ほのぼのした主題歌に象徴されるように、キュートなポニョと宗介の友愛をそのまま楽しむのは間違いじゃないし、深読みするのはナンセンスとも思う。しかし、ポニョが突然“嫌い”と言い出したトンネル、荷物を満載したまま運転手だけが消えた車、無数の船が集まっているのに物音がしない船の墓場、「こんな事なら早く死ねばよかった」と喜ぶお婆さん達、ボートの避難民とロウソク、遠くの山の中で消える明かりなど、不安感をかき立てる演出が所々にあった。何よりポニョの本名ブリュンヒルデは、北欧神話の女神であり、死者を神々の世界(ヴァルハラ)に連れて行く役割を持っている。僕はなぜ宮崎さんがこの映画に死をイメージさせるものを組み込んだのかは分からない。これについては、今後の監督インタビューや、ジブリ関係者の後日談を待ちたい。※トトロの歌が出てきたのがウケた!「私は〜元気〜♪」と聴こえた瞬間、手を叩きそうになった。セルフ・パロというか、全く別作品の歌をキャラが歌うってめっさ新鮮。こういう例ってあまりないよね?僕は初めて見た。

 
330.キッズ・リターン('96)108分
2人の男子高校生の友情、夢、挫折を描いた青春映画。1人はプロボクサーを目指し、1人はヤクザの世界に足を突っ込み、「互いに頂点を極めた時に再会しよう」と約束。しかし共に現実の壁に打ちのめされる。「俺たち、もう終わっちゃったのかな」「まだ始まっちゃいねえよ」。

331.タッチ('05)116分
公開時は長澤まさみの為のアイドル映画と思っていたけど、オンエアされた時に最初だけ見るつもりが、元のストーリーが良いしテンポよく作られているので最後まで観てしまった。クライマックスの「いいんだな和也…俺が南を甲子園に連れて行っても」は不覚にも落涙。

332.キサラギ('07)108分
若くして死んだ女性アイドルの熱烈なファン(5人)が集まり、死因を解明していく。無数に張り巡らされた伏線が、ラストに向けて一気に収束していく神脚本に鳥肌が立ち、本編を見ている時は「うおお、10年に1本の傑作だ!」と激興奮していた。ところが、スタッフロールが流れてから興醒めするシーンが挿入され、「今までの2時間は何だったんだ…」とガックシ。たった30秒ほどの余計なシーンで、日本映画史に残る世紀の名作がフツーの映画になってしまった。もしエンディングを変えた特別編が公開されたら1億点献上ッ!
【ネタバレ文字反転】→(1)アイドルの顔は最後までピンボケのままの方が良かった。本編で観客の想像力はフルに刺激されており、顔を写す必要なし。見せるなら最初から見せておくべき。(2)ライブを客席から撮っているハズなのに、エンディングの途中で彼女を背後から回り込んで撮るカットがある。現実に引き戻され、それまでの臨場感が台無し。(3)最大の戦犯は宍戸錠。いや彼は出演しただけなので罪はない。監督も“大人の事情”と話しており、映画会社の重役が無能なのか。スッキリと事件が解決し、「今日、この日に、誰一人が欠けても真実に辿り着けなかった」と感無量になってるのに、あの“針金”は空気読めなさすぎ。嗚呼、もったいない!

 
333.シベリア超特急('96)90分
監督・脚本・主演が水野晴郎のトンマなミステリー映画。チャチなアクション、チャチなセット、チャチな演出のすべてを堪能できる。だが、あまりにひどい故にこの映画はカルトムービーとして人気を誇り、なんと第7作まで製作されている。

 



★1位〜100位
★101位〜200位


★タイトル編

●映画監督の墓写真館
●映画俳優の墓写真館

●洋画ベスト1000
●この映画にもの申す
●シネマ・ロケ地写真集
●名画の条件&カス映画の条件&シネマ・ジャンキーの掟
●映画のひみつ〜なぜここまで映画を観るのか
●超監督ベスト
●超男優ベスト
●超女優ベスト
●超映画音楽作曲家ベスト


【最新ランク】 DVDトップ100 本のベストセラー100 音楽CDトップ100 玩具のトップ100/(GAME)


     














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