カジポン・タイムズNO.165 ★2002年シネマ閻魔帳 さあ、今年もまたシネマ閻魔帳の季節がやってまいりました!昨秋から今秋にかけて僕が観た映画に、“独断と偏見”で点数&コメントを付けます!(10点満点) 今回対象になったのは51作品で去年よりも23本近く少ない…それだけ今年は墓巡礼に明け暮れていたということか。 まだ観てない人の為に、推理映画の犯人やドンデン返しについては触れませんが、予告編やCMでガンガン使われたり、本筋に直接関係がなく触れても問題ないと判断したシーンにはコメントします。 7点以上は、オススメしたい作品。まずハズレはないです! 《本年公開の最新作》 ●スターウォーズEP2(8) ジェダイたちのライトセーバー出血大サービスと回転しまくるヨーダが観れたので、とりあえず満足。 ●少林サッカー(8) ドラマ部分は笑いのセンスが生理的に受け付けず1点。残りの7点は全て芸術的ともいえる試合シーンの素晴らしさに!クライマックスのキーパーとの対決は、劇場で呼吸困難になりそうなほど笑い転げた。 ●ピンポン(7) 原作は松本大洋の大傑作マンガ。映画は原作を知ってても、知らなくても、十分に楽しめる良質な作品になっていた。しか〜し!原作で僕が感動した数々の名セリフがカットされており、“何ともったいないことを!”と悶絶しまくった。それにしても、コーチ役の竹中直人は似た様なキャラばかりやりすぎ(嫌いな俳優ではないが)。あまりに原作とイメージが違うので、どうして彼が起用されたのか理解出来ない。 ●パニック・ルーム(6) ストーリーは拍子抜けするほど単純。映像は哲学的な雰囲気があるのに、物語の底が浅い。 ●チョムスキー9.11(9) これはロック・バンドU2のボノが「飽くなき反抗者」と絶賛し、マスコミから「命知らず」と呼ばれる反骨の知識人、チョムスキー教授の記録映画だ。彼は全米で「米国こそが世界最悪のテロ国家」「米国はアフガンに援助ではなく賠償すべき」と講演しており、冗談抜きでいつ暗殺されてもおかしくない人物。劇場には外国人の客も多く、“いかにブッシュが何も考えていないか”と吠えまくる教授の毒舌ぶりに、何度も爆笑が巻き起こっていた。 ●バイオハザード(8) ズバリ、ゾンビ映画。人の死を見世物にするホラー映画は大嫌いなので、公開前は全く見る気はなかった。しかし、周囲の評判がかなり良いので、気になって劇場に足を運んだ。…なるほど!ホラーといっても血はほとんど出ないし、残酷な映像を意図的に見せようとする演出もなく、アクション&サスペンスのカラーが強い。これならOKだ。映像はスタイリッシュだし、シナリオもラストシーンまで手抜きがない(コレ重要)。特に主役のミラは動きがシャープでカッコ良い!こりゃ、シュワちゃんやB・ウィリスより強いかも。 ●ザ・ロイヤル・テネンバウムズ(7) G・ハックマン、ベン・スティラー、グウィネス・パルトロウ他、個性派俳優を中心に豪華な顔ぶれが出演するので、あまりに期待が大き過ぎたのかも知れない。役者も作品の雰囲気も良いのに、人生の真理を突くような名セリフがひとつもない平凡な脚本で、肩透かしを食らった。 (とはいえ、ほとんど退屈しなかったので7点はある) ●アイス・エイジ(6) 動物たちが切ない心境の時に見せる瞳が良い。もらい泣きしそうになった。 ●コラテラル・ダメージ(5) 単純なアメリカ万歳映画でなかったのは評価できる。しかし、途中が良くても結末はいつもと同じ。 ●ターン∀ガンダム(8) 何度も戦争を繰り返してしまう人類が、兵器に結びつく発展しすぎた科学技術を全て封印し、生活レベルを中世まで戻している未来世界が舞台のシリアスアニメだ。とても良い作品なんだけど、ガンダム専門用語の嵐で、予備知識がなければ2割も会話を理解出来ないと思う。あまりの敷居の高さに世間受けが心配だが、そこに60歳になった監督の“媚びないぞ”というプライドを感じた(監督は会見で「ディズニーと宮崎だけがアニメじゃない」と吠えていた)。とにかく60歳で長編ロボットアニメを創っちゃう豊かな想像力に圧倒された! 《2001年》作品 ●ウォーターボーイズ(10) 満点!男子高校生がシンクロナイズドスイミングに挑戦するという設定が実に新鮮。物語の基本はスポ根コメディだが、ただのお笑い映画ではなく、クライマックスのシンクロ場面は目を見張るほど素晴らしかった!あれはもう芸術作品。オリンピックに正式に男子シンクロを加えて欲しいと思った! ●ハムナプトラ2(4) CG、CG、またCG。前作より太めになった主役カップルの体型も、パート3ではCG修正が入るかも。 ●GO(8) 重いテーマをスピーディーな場面展開とユーモア溢れるセリフの山で、いっきに最後まで見せてくれた。硬派なドキュメンタリーではなく、万人に受け入れられやすい青春映画の形で、差別や偏見に対する苦しみを知らしめたこの作品の功績は大きい。ただ、ラスト10分はイマイチ。 ●ロード・オブ・ザ・リング(8) 3部作なのでストーリーそのものは完結せず中途半端なんだけど、それがマイナス要因にならないほど映像美が素晴らしい!あれは絶対に大きなスクリーンで観るべき。よくぞ作ったり、と拍手を送りたい。炎の悪鬼バルログにはマジで縮み上がった。 ●ハリー・ポッターと賢者の石(6) 劇場は超満員で通路という通路に人、人、人!2時間半の立ち見はキツかった。魔法シーンはどれも映画を見てることを忘れるほどリアルだったが、特に大きなクライマックスもなく、満足感はイマイチ。 ●トレーニング・デイ(9) これまで善人役ばかり演じてきたデンゼル・ワシントンが、初めて悪役(悪徳警官)に扮し、アカデミー賞に輝いた作品。正直、“彼はこういう役がやりたかったのでは!?”と思うほどイキイキと悪事を働いていた。“役者がデンゼル”という予備知識なしで観たら、誰もあのブチキレ警官を演じているのが彼だと分からんのでは?とにかく強烈な負の存在感があった。ただ、おすすめ映画かと問われれば微妙だ。映画に「爽快感」を求める人は観ない方がいいだろう。深い疲労感が残る。(バスルームでの処刑シーンは、観ている自分が銃を突きつけられてる様な、映画を超えたリアルさがあった。寒気がした) ●ドリヴン(7) F1レースをノリの良い音楽と、気合の入ったカメラワークで魅せ、無いに等しいストーリーをなんとか観れるものに。脇役に徹したスタローンに好感。 ●猿の惑星(リメイク版)(3) オリジナル版の衝撃には遠く及ばない。とってつけたようなラストのドンデン返しにポカーン。 ●リリィ・シュシュのすべて(10) 「自分で遺作を選べるなら、これを遺作にしたい」監督の岩井俊二にこう言わしめた傑作青春映画。主人公はいじめを受けている少年。だが、この映画は“いじめ”そのものがテーマではない。あぶり出されたものは『閉塞感』だ。それも、側で死がポッカリと口を開いて待っている最悪の閉塞感だ。誰もが多かれ少なかれ14歳前後に体験してきたであろう、あの恐ろしい行き詰まりだ。学校や家の他にも違う世界があることを、大人になった今では知っているけど、あの時代はすぐ目の前の生活圏しか見えなくて本当に窒息寸前の毎日だった。逃げ場のない空間(と当事者が思ってる)でもがいていた日々は、成長と共にいつの間にか過去になったが、過去になる前に散ってしまう者もいる。“自分はたまたま生き延びたんだ”---映画を観終わって、最初にそう思った。 ●シュレック(7) 全編がCGで目をみはる映像の連続。様々な童話のキャラが総出演してて、とにかく楽しかった(白雪姫とシンデレラの喧嘩が最高!)。 ●JSA(9) 映画には社会的テーマを取り上げることで、問題の存在を人々に知らしめる力がある。正直言って、この映画を観た日本人の大半は、まさかここまで朝鮮半島分断の悲劇が深刻なものとは想像していなかったと思う。映画を観た後、あの1枚の写真が何度も思い出され胸が詰まった。 ●ソードフィッシュ(1) 極悪映画。なぜ米国がテロの標的として憎まれているのかを考えようとせず、アラブ人への敵意を露骨に煽っているようで不快感を感じた。それでも1点あるのは圧巻だった冒頭の特撮(爆発シーン)に。 ●ゴジラ・モスラ・キングギドラ 怪獣総攻撃(8) ゴジラ映画は宇宙怪獣が出てくるお子様路線と、反核を前面に出した第1作&公害問題を取上げたヘドラ戦のようなシリアス路線の作品に分かれる。今回は久々に後者の路線で、ゴジラの正体が太平洋戦争で犠牲になった人々(日本兵だけでなく、アメリカ兵、アジアの民衆を含む)の“怨念”という設定にブッ飛んだ。死の灰を浴びた第5福竜丸の母港・焼津港から上陸し、放射能熱線を吐くゴジラに戦慄! ●モンスターズ・インク(7) ギャグはどれも面白かったし、ジ〜ンとくる場面もあったが、途中の中だるみが気になった。もっとテンポよく出来たはず。あと30分短ければ傑作の仲間入り。 ●ムーラン・ルージュ(8) 映像は噂通り、凝りに凝っていた!まさに色の洪水。ズーム、ロングショット、特撮が多用され、冒頭から頭はクラクラ。音楽も非常に良く、設定が100年前のショー・ステージなのに、エルトン・ジョン、ニルヴァーナ、ポリス、マドンナを使っていて、実に斬新だった。肝心のストーリーは…最後の5分で盛り下がったのが残念。う〜ん、惜しい。ま、好みの問題か。 ●キャッツ&ドッグス(7) 犬猫がミッション・インポッシブルばりのハイテク・アクションを繰り広げるおバカ映画。こういうの大好き! ●ブリジット・ジョーンズの日記(5) ブリジットの本棚にあった『恋愛無意味論』『男抜きの人生』がどんな内容なのか気になった(笑)。やや点数が低いのは彼女が幸せを他人に依存し過ぎだから。 ●バニラ・スカイ(7) キャメロン・ディアスのブチ切れたストーカーぶりが超怖かった。台本を読んで、よくあの役を引き受けたと思う。その意味で高評価。 ●ドラえもん/がんばれ!ジャイアン!!(8) 映画版ドラえもんの中でもっとも映像が美しい秀作。ストーリーには関係ないので書いてしまうけど、エンディングでスタッフ・ロールが流れている時のバックは、 1.本編中に撮ったジャイアンの写真が古くなってる 2.カレンダーの日付が未来 3.ジャイ子の薬指に指輪が! となっていた!この展開には超感動した。ジャイ子が幸せになって本当に良かった!オロロ〜ン。※漫画家クリスチーネ剛田(ジャイ子)の作品“愛・フォルティシモ”を僕も読んでみたい! ●劇場版ヴァンパイア・ハンターD(8) マトリックスの監督ウォシャウスキー兄弟が絶賛したというだけはある。究極の映像美。 ●コレリ大尉のマンドリン(7) 独軍と協同してギリシャを占領していたある伊軍部隊が、伊本国の降伏後ギリシャの為に独軍と戦う(実話)。作品はラブ・ストーリーでもあり「君なしで生きていこうと努力した」というセリフは、短い愛の告白ながらも、切実な想いが伝わりグッときた。ただ、マンドリンの曲は“へっ!?”ていうほどスカ。モリコーネに頼んでいればこんなことにならなかったのに。 《2000年》作品 ●メメント(8) 物語が現在から過去へ遡っていく“巻き戻し”ムービー。最初に現在が描かれて回想シーンに繋がる映画は他にもあるが、5分おきにどんどん時間軸が逆行する演出は革命的で、目からウロコだった。ただ、欲を言えばオチがあともうひねり欲しい。途中ずっと“どうなるんだろう、どうなるんだろう”とドキドキしながら観てたので、あの程度のオチでは消化不良だ。とはいえ、明らかに従来の映画とは別格であり、映画史に残ると思う。 ●偶然の恋人(1) 飛行機事故というシリアスな話なのに、ベン・アフレックのアホ面が邪魔をして最後までリアリティがなかった。ヤツの口はどうしていつも半開きなのか?僕が共演のパルトロウなら、怒りでヤツの唇をつまんでひっ付けている! ●タイガーランド(6) 軍隊の中で非人間的な構造に抵抗する主人公の生きる姿勢を僕は120%全肯定!ただ、映画としては軍事教練所で終わらずベトナムの戦場まで描いて欲しかった。彼の“その後”こそが見たい。 ●チキンラン(2) “ウォレスとグルミット”シリーズのニック・パークが作ってるので観たんだけど、これはイマイチ。なんせ主要キャラのニワトリたちが全くかわいくない(っていうか、むしろ不気味)。やっぱキャラの造形に魅力がないと粘土アニメはダメ。 ●ザ・セル(5) なぜだろう。ずっと凝ったMTVの映像を見ているみたいだった。 ●あの頃ペニー・レインと(8) ’70年代ロック・ジャーナリストの物語。BGMにツェッペリンがかかりまくり、ロック・ファンには嬉しい一作。スランプで文章を書けなくなった主人公が受けるアドバイス「だが、偉大な芸術はここ(苦しみ)から生まれる」に、同じ“物書き”として励まされた。 ●タップ・ドッグス(3) 迫力あるタップダンスを観れると思ったのに、肝心のタップシーンが短すぎッ! ●鬼が来た!(10) 中国で作られた、日本兵捕虜と中国農民の交流ドラマ。従来の戦争告発映画と違って、所々、喜劇タッチで描かれていたのに驚いた。物語の後半は人間の狂気が炸裂、前代未聞のラスト・シーンから受けた衝撃は言語を絶していた! ●リーベンクイズ(9) 中国を侵略した皇軍兵士(日本兵)たちの、加害証言を集めた記録映画。「被害」の体験は話しやすいが「加害」の体験は話し難い。14人のおじいちゃんはよく勇気を出して語ってくれたと思う。映画の製作意図は、戦犯を糾弾するものでも、謝罪を要求するものでもなく、戦場に着くまでは家庭の父であり息子であった普通の人間が、軍隊の歯車に組み込まれる過程で、いかに人間的な良心を失っていくのか、そうした人間の『心の弱さと狂気』を描き出そうとしたものだった。 ●ミート・ザ・ペアレンツ(7) 主演は“メリーに首ったけ”のベン・スティラー。今回も大いに笑わせてくれた。デ・ニーロが恋人のガンコ親父を怪演しており、近年は出演作が多いわりに印象に残らない役ばかりのデ・ニーロとしては、嬉しかったんじゃないかな。 《1999年》 ●遠い空の向こうに(9) 周囲に馬鹿にされつつ小型ロケット造りに挑戦する高校生4人組の物語。何度も打ち上げを失敗しては、改良を重ねて完成に近づけていく姿に激感動。しかも実話!エンディングで実際の実験風景を8mmで撮ったものが映るけど、瞳がうるんで見えんかった。 ●太陽は、ぼくの瞳(7) イランは中近東なので岩と砂漠のイメージがあったけど、こんなに緑の多い自然豊かな土地もあるのだと知った。とにかく映像が美しい。で、ストーリーは…なんでここまで登場人物をドン底に落とすのかというほど辛い映画だった。 ●楽園を下さい(7) アメリカ南北戦争を個人の目から捉えた映画。戦争映画ではあるが、全体を静かで詩的な空気が包んでいる。原題は『Ride with the Devil』。邦題は最悪。 ●17歳のカルテ(8) 境界性人格障害(ボーダーライン・ディスオーダー)と診断され、病院に入れられる主人公。異常と正常の違いを何を基準に判断するのか、どこからが異常という境界なのか、そういったことを考えさせられた。「あたしのどこが好きなの?」「ただ好きなんだ」という会話に、いつも“自分はなぜ好きなのか”と考え過ぎる僕は、カコンと頭を叩かれた気がした。 ●ペイバック(8) 一匹狼がギャングの巨大組織と知恵を使って戦うって設定は、絶対に燃える! ●蝶の舌(7) 老教師と少年の心の交流を描いたもので、2人が森の小道を歩く場面は、まるで印象派の絵画のように美しい映像だった。自然界の秘密を語り合う場面も良い。それだけにスペインが内戦に入っていく後半の痛切さはハンパじゃない…。 ●山の郵便配達(9) 山間の寒村を3日間かけて郵便物を届ける2人の男と一匹の犬。各村々では素朴な心の交流が待っている。映画のテンポは歩調にあわせたゆっくりしたものだが、“歩き”でしか見えてこない世界が丁寧に描かれ、自分も彼らと道行を共にしている錯覚を味わった。酸素だらけの山の空気、ひんやりした川の水、むせ返る様な草の匂いが僕を包み込んだ。セリフの少ない地味な作品だが、登場人物の優しい瞳がいつまでも心に残る珠玉の1本だ。ハリウッド映画の爆音や銃声が最近キツくなってきてるので、こういう作品は本当にありがたい。 ●恋は嵐のように(1) ベン・アフレック…。 《1998年以前》 ●ドラえもん/のび太の雲の王国(7) F・不二雄氏晩年の作品だ。正直、ハードなシナリオに驚いた。雲の上に住む天上界の人々が大気汚染に苦しみ、地上の人類の世界を滅ぼそうというのだ(その名も“ノア計画”)。地上人代表のジャイアン、しずか、スネ夫の3人が、天上界の裁判で突きつけられる人類の罪状がリアル。「これ以上人類にオゾン層を破壊されては困る」「核戦争が起きれば天上界も吹っ飛ぶ」。人類の残虐性を主張する証言者として、象牙狩りにあった象、熱帯雨林を伐採され住みかを失った猿などが証言台に立った(酸性雨の問題まで指摘されていた)。巷の映画評には“説教臭い”という意見もあるが、僕はむしろ娯楽作品のドラえもんにさえ、こうしたメッセージを盛り込まずにはいられなかったF・不二雄氏の、現状への切実な怒りと焦りを感じた。ドラえもんが自分の出した兵器を悪用され、武器による抑止力の危険性を悟って愕然とするシーンも印象的だった。 ●アダムスファミリー(6) 墓場であんなに楽しく遊べるとは。歩く手首“ハンドくん”は、写真で見ると不気味だが、動いていると妙に愛嬌があるので不思議。 以上です!! |
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