【2003年シネマ・レポート】

毎年秋に発表しているシネマ・レポート。劇場、ビデオを問わず、僕が一年間に
鑑賞した新旧の映画を10点満点で紹介します。68本分を公開年別高順位
ものから書いていきますので、レンタルの参考にど〜ぞ!


★2003年度公開

●『少女の髪どめ』(10)
あまりに甘々なタイトルに“ひく”人もいるだろう。だが、原題は「雨」と渋い!
(「雨」ではヒットしないので、いかにもな邦題が付いてしまった)。物語は「粗野
だが純朴な青年が少女に恋をする」…基本的にはたったそれだけだ!劇的な告白
シーンもない。しかし、映画はこの青年が他人を想うことを通して、人間的に大きく
成長する姿を見事に描き切っていた!青年は、映画の前半と終盤で同じ役者とは思え
ぬほど表情に深みが出ている!映画の奇跡を目の当たりにした感じ。青年は自己犠牲
を“犠牲”とは認識しておらず、僕は愛の何たるかを見せつけられたッ!こんな純粋
な恋愛映画を観ると、他の駆け引き中心のラブ・ストーリーが見れなくなる。中盤から
青年の瞳を見てるだけでウルウルきてしまい、最後はあまりに泣きすぎて頭痛がした。
帰りの電車の中でハラハラと“思い出し涙”が年甲斐もなく流れ、他の乗客に悟られぬ
よう拭うのが大変だった…!
※「映画」の素晴らしい点は、異国の人々の生活を垣間見ることができるところ。
この作品の舞台はイランの建設現場で、アフガン難民の労働者も多く働いている。
そうした場所で人々と膝を交えるなんて、まず体験できないこと。彼らの会話を通し
て、異国の価値観や文化に触れるのは非常にエキサイティングな体験だ!

●『シティ・オブ・ゴッド』(10)
ブラジルのスラムを舞台にした実話ギャング・ムービー。ひたすら暴力、ひたすら
ドラッグ。警察の腐敗ぶりも含めて社会の暗部をさらけ出した作品だが、単に
スラムの絶望を描写したのではなく、劇中にはウィットに富んだユーモラスな会話が
テンポ良く入っており、観客は額から血の気が失せたまま爆笑しているという、通常
あり得ない反応をしていた。あらゆるアクション映画がお子様映画に見えるほど
ブッ飛んだ映画だった!

●『フリーダ』(10)
満点映画!主演女優サルマ・ハエックは圧巻の演技でフリーダ本人にしか見えな
かった。フリーダは18才の時にバス事故で全身を20ヶ所以上も骨折、鉄棒が
腰を貫通する悲劇にあう。命は取り留めたものの47才で亡くなるまで32回も手術
を繰り返し、肉体の苦痛は続いた。恋愛でも地獄を味わうが、その苦しみの中でも運
命に毅然と立ち向かい、彼女はカンバスに自分の内面を刻み続ける。映画はその激動
の人生を見事に描き切っていた!音楽も全曲ハズレなし。エドワード・ノートン、
アントニオ・バンデラス、ジェフリー・ラッシュという豪華な脇役陣にもびっくり。

●『リロ&スティッチ』(8)
最高!ストーリーもいいけど、キャラの動きにすごく生命力がある!極悪モンスター
と少女の友情を描いており、劇場は涙、また涙。隣席にいた学生(?)は嗚咽してい
た。両者が出会う場面から、すでに僕もウルウルきてた。全然悲しい場面じゃない
ところで泣けてくるのは名作の証拠!

●『ロード・オブ・ザ・リングU』(8)
ド迫力のオープニングの戦いでイッキに引き込まれたが、その後やや中だるみが
続き、ぶっちゃけ“この第2部は第3部を盛り上げる為の息抜きか?”と心配した
が、それは杞憂だった。後半の巨大クライマックスは、これまでに観たどの映画
よりもスケールが大きかった!もう圧倒されて言葉も出ない。人間がここまで
すごい映像を作れるのかと仰天の連続ッ!考えてみれば途中の中だるみだって、
クライマックスにリアリティを持たせるために、物語世界へじっくりと観客を浸して
いく必要なプロセスだという気がする。「子供の頃に読んで心に残った物語は、
以前はなぜ胸に響くのか分からなかった。今なら分かる。彼らはどんなに壁に
ぶつかっても、決して引き返さなかったからなんだ!」このセリフに泣いた。
※全く違うジャンルの映画だけど『ガタカ』を思い出した。

●『トーク・トゥ・ハー』(8)
フリーライターの孤独な中年男マルコと看護士ベニグノの、男の友情の物語(宣伝で
は「女性の為のフェミニン映画」になってるけど全然違う)。一番心に残ったのは、
芸術に触れた時のマルコの涙の理由。「美しい芸術を見て涙が出るのは、そのとき
側に感動を分かち合う相手のいない虚しさからだ」と彼は言う。分かる。傑作に
触れてもそれについて語り合えないことほど辛いものはない!芸術に泣くのではな
く、それを分かち合えないことに泣く…この地獄をハッキリと言葉で出してくれた
初の映画だった。ベニグノが後半とった行動は認めるわけにはいかない。

●『レッド・ドラゴン』(8)
公開時の評価が高かったのでビデオ化を楽しみにしていたが、期待を裏切らない良い
出来だった!残酷な描写を売り物にせず、犯人と捜査官の心理的駆け引きで緊張感
を保つ質の高い脚本で、役者も名優が揃っていた。

●『マトリックス リローデッド』(7)
アクションはすごい!本当に素晴らしい!しかしストーリーは…チンタラと回り
くどい!パート1は次々と見せ場が出てきたが、今回は冒頭の度肝を抜くアク
ションシーンから次の見せ場まで50分近く退屈なドラマが続く。しかもその間、殆
ど話が展開してない!民衆が踊り狂うチャチなMTV映像がダラダラと流れ、冒頭の勢
いは完全失速、緊張感も消滅。その後も物語が進むにつれ、単純な内容を重々しく
語ってるだけじゃん!と怒りを感じ始める。頼むからもっと感情移入させてくれい!

●『CHICAGO』(7)
恐ろしく高い完成度で、どうでもいい物語を描ききっていた(オイオイ)。必見とは
言わないけど、渾身の力作であることは確か。一番気に入ったナンバーは「♪オイラ
の名前はミスター・セロファン。透明なセロファンで誰も存在に気づいてくれな
い」ってやつ。自虐的な歌詞が琴線に触れまくったァ!

●『ボーン・アイデンティティ』(7)
ド派手な特撮はないが、脚本でグイグイひっぱる良作だった。火薬を大量に
使うだけのカス映画が多い中、久しぶりにまともなサスペンスに出会えた。
マット・デイモンは優等生っぽくて苦手だったけど、この作品で高感度アップ。

●『ヤァヤァ・シスターズの聖なる秘密』(7)
大喧嘩をした母娘が和解に至るまでのドタバタを描く。あまり期待せず見始めたら、
テンポが抜群に良いし、セリフも小粋なものが多く一気に引き込まれた。それも
そのはず、調べてみたら監督は女性映画の最高傑作“テルマ&ルイーズ”の
脚本家だった!

●『マイノリティ・レポート』(7)
未来社会の映像がともかく圧巻!最初から最後まで、完全に作品の中でひとつの世界
を作っていた。後半は少しダレかけたが、それでもたたみかける様なストーリー展開
は、さすが御大スピルバーグ。1分1分の映像に莫大なお金が注ぎ込まれているのが
分かる、なんとも贅沢な2時間20分だった。

●『X-MEN2』(7)
前回よりも明らかに制作費がアップされており、バトルシーンもスケール倍増。冒頭
のマトリックスばりのホワイトハウスの戦いから一気に引き込まれた。戦いの規模は
大きくなったけど、シリーズ特有の暗さはそのままで、それが好印象。今やアカデ
ミー賞女優となったハル・ベリーが目を発光させて天候を操ってる姿がなんか嬉し
い。

●『8マイル』(6)
きらびやかなハリウッド映画ではあまり描かれる事のない“プア・ホワイト”(白人
貧困層)のリアルな生活描写に驚く。主役はエミネムだが、ただのアイドル映画とは
一線を画していた。言葉でビートを作るヒップホップは、語彙が豊富でないと作詞が
大変だと以前から思っていたけど、そうした曲造りのプロセスが劇中に出てきた
のは新鮮だった。「ダメ母」を演じたキム・ベイシンガーには、よくあんな惨めな役
を引き受けたものだと、彼女の役者魂に感服した。

●『インソムニア』(6)
善人役ばかりだったロビン・ウィリアムズが不気味な殺人犯になり、アル・パ
チーノが彼を追う刑事に。両者とも素晴らしい演技だった。舞台になったアラスカは
寒々とした曇天と濃霧のシーンが多く、夜の場面も白夜の為にボーッと明るいまま。
なんだか見てる内に自分の時間軸まで麻痺してしまった。

●『ターミネーター3』(6)
いまいち公開前の盛り上がりに欠けていたのであまり期待せずに観たら、これがけっ
こう面白かった!巨大クレーン車の暴走などアクション・シーンの迫力はさすが。ま
た冒頭のサングラスのギャグなど、全体にお笑いシーンも多く観てて全然退屈しな
かった。マトリックスの10倍はテンポが良い(最後の“審判の日”も映像が美しく
てウットリ。まるでガタカ!)。ただし!子供には薦めたくない。あまりにTX(敵
女性ターミネーター)の人間の殺し方が残酷すぎ。腹を突き抜けるパンチを大スク
リーンで見せる事に何の意味が?そういう悪趣味な場面がなければもっと良い作品に
なったのに、残念。とにかく次のパート4を楽しみにしてる(今回で伏線の仕込みは
バッチリ)

●『チャーリーズエンジェル フルスロットル』(6)
アクションもユーモアもたっぷりで良い感じ。“そんなのありか!?”という馬鹿馬
鹿しい展開も、有無を言わさず力技で押し通す潔さが良い。キャメロン・ディアスは
老けてしまった。

●『28日後・・・』(5)
本編終了後、画面に「もしこうだったら…」という文字が表れ、別バージョンのエン
ディングが4分間続いた。こんな試みは自分が知る限り初めて。その点は面白かっ
た。だがしかし!肝心の全体のストーリーはただの英国版バイオハザードだった
…ガクッ。しかも、人間ドラマとしても、アクションものとしても中途半端。ただ
し、バッハやフォーレのクラシックが流れる中、無人のロンドンや、全市が炎に
包まれてるマンチェスターの映像は鳥肌モノだった!

●『壬生義士伝』(5)邦画
中井貴一は名演を見せたが、映画全体の時間配分がおかしい。クライマックス以後が
ウダウダと長すぎ。中盤まですごく良かっただけに、ラスト20分の脇役の過剰な演
技&大袈裟な音楽の洪水が残念。“泣かせよう”というアザとい演出の嵐は拷問に近
く、“1分でも早く終わってくれ”と天に祈った。

●『呪怨』(4)邦画
カリスマ監督サム・ライミが“人生最大の恐怖を味わった”と絶賛しているので見
た。所々ドキッとしたけど、黒髪&白衣装&這いながら迫ってくるのはリングと同じ
で興醒め。っていうか、『シックス・センス』を見て以来、もうホラー映画が怖くな
くなった…。幽霊と会った時はビビるのではなく、何を伝えようとしているのかちゃ
んと耳を傾けようぜ!

●『007 ダイ・アナザー・デイ』(4)
米英VS北朝鮮というオイオイ設定。なぜか北朝鮮の飛行機の中に日本の
侍の鎧(よろい)がある。衛星ビームなど迫力あったが、劇場を出て3歩
歩くと「あれ?今、何の映画観たんだっけ?」。ボンドの下半身が狂ったように
暴走していた印象しかない。

●『座頭市』(4)邦画
殺陣は迫力あるし、笑いどころも多く、海外で高い評価を受けたのも納得。それだけ
に後半ややダレたのが残念。ソナチネ以降の北野映画は、クライマックス後がいつも
余計。サービスのつもりだろうけど、完全に間延びしちゃってる…。とはいえ、観に
行って損したとは思わない。他の監督には真似の出来ないパワーがあった!(※ここ
からネタバレ)北野映画を愛すればこそ怒りをブチまけたい。中途半端なエンターテ
イメントは消化不良のもと!なぜ姉弟に敵討ちさせない!?何の為の伏線なのか!怒
!浅野忠信との死闘の後、岸辺一徳がいつの間にか死んでるのも肩透かし。走り回る
足軽小僧も、後半にオイシイ見せ場があるのかと思いきや、最後までただの道化。ラ
ストのタップダンスもなぜスローモーションを混ぜるのか理解不能(タップは勢いが
勝負!)。一番問題なのは悪党のボスを失明させて「殺しはしねえ!一生メクラでい
な」と捨て台詞を吐いた事。座頭市がメクラを“刑罰”として表現してどーすんだ!
(せっかく「メクラの方が人の気持ちが良く分かる」という台詞があったのに、ボス
へ吐いた時のニュアンスは単純にザマアミロというものだった)。

●『バトルロワイヤル2』(2)邦画
この支離滅裂&矛盾だらけの脚本にGOサインを出した制作サイドの勇気は、ある意味
感嘆に値する。前作のバトルロワイヤルは生命の尊厳を考えさせる重いテーマがあっ
たが、続編はただの戦争映画。主人公たちは人を殺すことで苦しんだり葛藤したりし
ない。作品に1mmの深みもなく、超脱力。ただし、米国を名指しで堂々と批判して
のけたのはアッパレ。そこまで明言するかと正直驚いた。それゆえワーストではな
く2点を入れた。


★2002年度公開

●『ボーリング・フォー・コロンバイン』(9)
銃によって殺害された年間被害者数--日本39名、英68名、カナダ165名、仏
255名、独381名、米国11127名!ヨレヨレのジーンズとTシャツ、野球帽
といったイデタチで、兵器産業や銃擁護派の圧力団体“全米ライフル協会”
に立ち向かうマイケル・ムーア監督に、最大の賛辞を送りたい!!

●『アイ・アム・サム』(9)
知的ハンディを持つ父親が男手ひとつで女の子を育てる物語。安易な(あざとい)
お涙頂戴映画ではなく、作り手の誠実さが伝わる質の高い作品だった。とにかく
主役のショーン・ペンと子役の少女の演技が上手い!神がかってさえいた。BGM
はビートルズ・ナンバーのオンパレード。見始めてわずか5分で早くも首まで
濡れてしまっていた。現実は映画のように甘くないと思うけど、親子愛を偽善と
呼んで斜に構えたくない。う〜ん、これは子どもが欲しくなるなぁ(それも
女の子の!)。

●『マルホランド・ドライブ』(9)
えらく高得点だが、観終わった直後はここまで高い点数ではなかった。後半があまり
に難解で、正直チンプンカンプンだったから。「きっと監督自身も物語の収拾が
つかなくなって、中途半端に投げ出したのだろう」そんな風に考えていた。自分は
愚かだった!監督のインタビューや解読サイトを読んで、僕が作品の奥深さを
いかに理解していなかったかを悟った!“難解”どころか、これほど映画全体に
親切なヒント(小道具や意味深なセリフ)が散りばめられているミステリーはない。
単に自分がそうしたヒントを全部見落としていただけだ!僕のアホ!そして、
なんと悲しいラブストーリーだったのか。物語の複雑かつ見事な構成、情感たっぷり
の美しい音楽、俳優たちの名演。さすがカリスマ&鬼才と呼ばれるだけある!

●『マジェスティック』(8)
ジム・キャリーが挑んだのは、第2次大戦後のハリウッドに吹き荒れた“赤狩り”
(思想狩り)の被疑者という、実にシリアスな役柄。まさに一世一代の熱演だった。
「戦死者が命懸けで守ろうとしたアメリカは、こんなアメリカじゃない。言論の自由
を守らねば、彼ら(戦死者)は犬死にだ!」に胸が詰まった。

●『たそがれ清兵衛』(8)邦画
出世欲のない一人の侍の人生を、“幸不幸を決めるのは本人だ”という視点で描いて
いおり、胸に沁み入るセリフが多かった(前の座席の老夫婦はえらい泣いていた)。

●『戦場のピアニスト』(8)
ナチによる狂気のユダヤ人虐殺の嵐の中を、ボロボロになりながら生をつなぐピアニ
ストの物語。目を覆うドイツ軍の凶行がこれでもかと出てくるが、同時に命懸けで
主人公を助けてくれようとする人々も描かれている。主人公はいつ死んでもおかしく
ない状況に何度も直面するが、これらが全て実話というのが凄い。2時間半の間、満
員の客席からは咳のひとつも聞こえず、皆が固唾を呑んで画面を見つめていた。視界
の彼方まで続く廃墟のワルシャワ市街に絶句。

●『ハッシュ!』(8)邦画
映画ファンから絶賛されたのも納得。なんせセリフの“間”が絶妙。出てくる役者は
みんな演技が上手でグイグイ引き込まれる。中でも片岡礼子はスクリーンの中で
はなく、ホントすぐそこにいる感じがした。冒頭では別々の存在の若者3人が、
互いに支えあい、気づかいあいながら、不器用でも懸命に生き続ける姿は純粋に
胸を打つ。さりげない優しさに満ちた作品だった(スポイトには笑った!)。

●『チョコレート』(7)
ハル・ベリーがアカデミー主演女優賞をとった話題作。心に傷を追った2人の男女
が、共に生きる姿を静かに追った良作。人ってすごく落ち込んでても、チョコレート
・アイスクリームを食べると不思議に元気が湧いてくるよね(状況は何も変わってな
くても)。つくづく人間って面白いな〜って思う。

●『アザーズ』(7)
丁寧に作られた正統派ゴシック・ホラー。謎が解き明かされるクライマックスは
めちゃくちゃ緊張した。霧が怖くなってしまった。

●『K19』(7)
潜水艦映画にハズレなしの原則は、ここでも本当だった。原潜内の放射能もれ事故
は逃げ場がない分悲惨だ。実話というのに驚く。

●『ワンス・アンド・フォーエバー』(7)
描かれた時間はごく僅かとはいえ、ハリウッド映画で初めてベトナム側の兵士の
内面に触れたんじゃないだろうか。

●『バーバー』(7)
現実社会を別の世界(空間)から覗いているかのように、他人と距離を置いて
静かに生きる主人公に、逆に強い存在感を感じた!

●『チング』(7)
韓国で大ヒットした男の友情ドラマ。幼年時代から学生、大人になるまでを
追った、大河的な青春ドラマ。不器用すぎる男たちの生き様が炸裂。

●『エトワール』(7)
パリオペラ座バレエ団のドキュメンタリー。稽古の場面が見れるのは貴重だが、
肝心の舞台シーンが短い上、見せ方も中途半端でストレスが溜まった。

●『ES』(7)
実話というのがビビる。人間の精神のなんと壊れやすいことか。

●『ノー・マンズ・ランド』(7)
泥沼のボスニア紛争を描く。国連軍の兵士が言った“戦争に中立はない。殺戮が始
まったら傍観も加勢と同じだ”は重かった。

●『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』(6)
うーむ、愛の渇望からくる底なしの孤独感は十分過ぎるほど伝わってきたし、誠
実で優しく繊細な主人公は愛すべき存在なんだけど、あまりに恋愛至上主義過ぎる。
人生を「恋人がいない=不幸」と思い込み過ぎてはいないか?僕は独り者には独り
者の幸福があると思うが…。(スナフキンのようにね)

●『トリプルX』(6)
噂のド迫力スノーボード・アクションを見て、なるほどこれは話題になるだけあると
思った。しかし!最終兵器の字幕がずっと「アハブ」なのが気になった。あれはエ・
イ・ハ・ブ!白鯨のエイハブだ。翻訳者もビデオ会社の人間も、誰も白鯨を読んでな
いということか…。

●『ロード・トゥ・パーディション』(6)
前者はマフィアものだが、映像が美しく静けさの漂う雰囲気が良かった。ただし、
太り過ぎのトム・ハンクスはイエローカード。シリアスな場面なのにタップンタップ
ンの二重アゴが気になって、何度か吹き出しかけた(チョビ髭だし)。

●『息子の部屋』(6)
“人生や世間ともっと気楽にかかわれば良い”というセリフが心に残った。でも、
あとは平凡な話。

●『助太刀屋助六』(5)邦画
面白かったけど、“たそがれ清兵衛”ほどの深みはなかった。

●『ハリー・ポッターと秘密の部屋』(3)
周りの評判がズタボロだったので覚悟をして観た。エピソードの詰め込みすぎで窒息
寸前だった前作よりも、物語の進行にゆとりがあった分、まるで本を紐解くような心
地良さがあった…途中までは。しかし、中盤を過ぎても全く話が盛り上がらず、次第
に苦行状態に。面白くなくても1時間半なら「雰囲気を楽しんだ」と許せたのに、
2時間半もかけて退屈なクライマックス(あれをクライマックスと呼べるなら)を持
ってきたのは“時間泥棒”の罪だ!

●『リターナー』(2)
金城君のセリフ棒読みは覚悟していたが、鈴木杏の一本調子は耐え難かった。ってい
うか!人類滅亡のタイムリミットまで2日しかないと設定しておきながら、メシ喰っ
た後グースカ寝るわ、服屋でショッピングを楽しむわ、脚本が崩壊しまくってた。マ
トリックスやE.T.のパクリはオマージュということで許せても、学芸会のような演技
は辛かった。撃たれた腕がアクション・シーンが終わった時点で治っているのも仰
天。しかし!ラストの5分はなかなか良い。我慢して最後まで観てよかった。辻褄の
合わないシーンの連続を笑って楽しめる人にお勧め。

●『ギャング・オブ・ニューヨーク』(1)
2時間48分という大長編でありながら、人物描写が薄っぺらいのなんの。映
画の初めから終わりまで、延々と殺し合いが続く憎しみだけが前面に出たカス映画。
当初、敵ボスは悪党ながらも紳士的であったのに、途中から下劣なチンピラに成り下
がり、主人公ディカプリオも卑怯な復讐方法しか考え付かない正義のふりしたマヌ
ケ。どの登場人物も知性のカケラもなく、口より先に刃物を振り回すサル以下の鬼畜
ばかり。誰一人として感情移入できる人物はいない。3時間近くありながら、主人公
が人望を集める最も重要な過程が描かれてないし、メインキャラは行動が一貫せず性
格破綻しまくり。名作『タクシー・ドライバー』を世に出したスコセッシ監督が、同
じNYを舞台にしながら、どうしてこんなトホホ映画しか撮れないのかと、怒りを超え
て悲しくなった。こんな単純なストーリーなら、半分の1時間半もいらん。30分で
十分。いや、「まんが日本昔話」のスタッフなら15分で完結できるだろう。
※それでも0点じゃないのは、NYのセットが見事だったから。大道具さんに1点。

●『ヴィドック』(0点)
O点ッ!映像も音楽も凝っていたし、ドンデン返しも驚いた。しかし、ラストの
カットでワースト入り決定。(ここからネタバレ)続編を作る気なのか知らんが、
あれだけ生理的に受けつけん残虐な事件を起こした悪党が、まんまと生き残るな
んてどういう脚本だ。プンスカ。映画の中くらい正義を実現してくれ。後味最悪!


★2001年度公開

●『ベティ・サイズモア』(7)
心憎い良質の脚本と脇役陣の演技のうまさに、見終わって満足度高し。

●『ギター弾きの恋』(6)
ショーン・ペンとウディ・アレンという面白い組み合わせ。ジャズ・ギタリストのジャンゴ・
ラインハルトを神と崇めて生きる冴えないギタリストの人生を、ユーモアを交えて
描く。

●『スパイ・キッズ』(4)
第2弾が作られるほどヒットしたので観てみたが、観てる間はそれなりに楽しかった
けど、見終わって3分経つと何を観たのか忘れそうなスカスカの作品だった…。

●『ピストルオペラ』(3)邦画
映像美だけではつらい。若い頃なら物語にあまり意味がなくても空気や雰囲気を楽し
めたけど、三十路後半になって人生の残り時間が減っているのを日々実感してる
現在、意味のない映画に奪われる(費やす)時間は苦痛以外の何物でもない。
2時間を何かに費やしたら、確実に2時間分は成長していたい!
 
●『ワイルドスピード』(3)
迫力のカーレース。スピード感を出す為の構図やコマ割りに努力の跡が見られる。


★2000年度公開

●『トイストーリー2』(9)
大迫力のアクション・シーン、美麗な映像、ツボを押さえたギャグ、そして子どもの
成長と共に忘れ去られていくオモチャたちの悲哀。子育て中の親御さんは、ぜひ
この映画を子ども達に見せてあげて欲しい。モノを大切にする気持ちが、身体の
奥底からいっきに芽生えてくるハズだ!

●『僕たちのアナ・バナナ』(8)
エドワード・ノートンの失恋っぷりが、かつての自分のパターンと同じで、他人事と
して映画を見れなかった(汗)。男勝りで快活なアナ・バナナを演じたジェナ・エルフマン
はとっても魅力的で、それだけになぜ嫌味な役を演じていたベン・スティラーに惚れ
たのか理解不能。とにかく我が盟友ノートンにこの8点を捧げる。

●『オリーブの林をぬけて』(7)
こうした映画に出会うとつくづく思う。訪れたことのない国(本作の場合はイラン)
の人々を、いっきに身近に感じさせてしまう映画の力は、なんて素晴らしいの
かと。

●『ムッソリーニとお茶を』(7)
ファシストを相手に一歩も引かず、プライドを貫く英国のおばさんたち。とにかく
登場人物がパワフル。画面から元気をもらった。

●『サウスパーク 無修正映画版』(6)
幼児向けのアニメ番組に出てくるようなキャラたちが、米国とカナダの武力衝突に
巻き込まれていくブラック・ジョーク満載の毒舌アニメ。貧困問題や人種問題なども
とりあげ、笑いながらも現実社会がその通りであることに笑っていられなくなる、
インパクトの大きい作品。ただ、下品なお下劣ギャグも多いので点数は控え目に
した。
※「ボウリング・フォー・コロンバイン」でもこの映画が大きく紹介されている。

●『X-MEN』(6)
地味な物語だけれど、近年量産されている派手なだけで中身カラッポのスカスカ・
ムービーとは質感が全然違うので、かなり好印象。


★1999年以前の作品

●『黄金』(10)
金鉱を巡って錯綜する人間の欲望を描いた心理劇。ラストのセリフがめちゃくちゃ
良かった!55年前の古い作品だし、置いてないビデオ屋も多いので、ここにオチを
書かせてもらう。山賊の襲撃や仲間の裏切りを乗り越え、約1年がかりで掘り集めた
砂金が、いろんな偶然が幾つも重なって、ラストでぜ〜んぶ風に乗って飛び散って
しまう。全ての努力がパーになったんだ。普通ならここで主人公は嘆き悲しむのに、
この映画では仲間同士で顔を見合わせ、次のセリフと共になんと大爆笑するんだ!
「笑え!笑え!神様か自然が仕掛けたとてつもない冗談だ。ユーモアのセンスが
あるなぁ。金が自然に戻ったんだ!10ヶ月のタダ働きも惜しくはない!」。悲劇を
「一生笑える冗談になるぞ」と痛快に笑い飛ばす男たちに感動しまくり!努力が無駄
になった現実を爆笑で受け入れる器の広さ。これは生きていくうえですっごく大切な
コツだと思った!!(こんな作品に会えるから映画ファンをやめられないッ!)

●『心中天網島』(10)邦画
ス、ス、スゴかった。一組の男女が心中へ向かって転げ落ちていく様が、息つく間も
ないほど壮絶な緊張感の中で描かれていた。この作品は危険だ。激愛に溺れた
主役2人は、ワクワクしながら、いそいそと死のうとしている。彼らは、何より2人
一緒に死ねることが嬉しいのだ。観てるうちに、心中が羨ましくなってしまった…
ヤバイ。

●『こねこ』(7)
猫は自由気ままで演技指導が絶望的に難しいと言われているが、猫調教師の第
一人者アンドレイ・クズネツォフが準主役の俳優として出演しており、猫との縄跳び
やダンスを披露していた。氷点下のモスクワをさまようチグラーシャに胸がキュン。
こりゃ、ネコ好きにはたまらんわ。

●『パッチ・アダムス』(7)
“笑いこそが最高の薬”という信念を持った医者の話。確かに、よく笑う人は体内の
免疫効果も高いと聞く。良作だった。

●『赤ちゃん泥棒』(7)
もの凄く良いセリフがあった--「愛に満ちた美しい世界だから、早く生んでやらない
とかわいそう」。なんちゅう力強い言葉!この言葉を、こんな時代だからこそ、
意地でも支持したい!

●『紅夢』(7)
コン・リーの演技、凄すぎ。紅い提灯の残像がいつまでも瞼の裏に焼きつく。
女の戦い、恐るべし。

●『Fried dragonfish』(6)邦画
マーラーの曲を寝転がって聴いてるシーンは最高だった!

●『恋におぼれて』(6)
メグ・ライアンが自分を振った男に復讐する物語。ジャンルはラブ・コメなんだけ
ど、もうサイコ・ホラーの一歩手前。鬼神モードのメグが見たい人は是非。
 
●『秋菊の物語』(6)
ずっと楽しく観ていたのでブラックなラストにガックシ。余韻が温かいものだった
ら、この作品は万人に愛される作品になったハズ。チャン・イーモウのイジワル!

●『モ’ベターブルース』(6)
劇中に流れるタイトル曲「モ’ベターブルース」は素晴らしいバラード。あの曲を
聴く為に映画を観たようなもの。


以上!!


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