★若者の悩みQ&A特集


服飾評論家のピーコさんは1945年生まれ(60代)。癌で片目を失ったり、同性愛者として差別を受けたり、人生の様々な壁に直面しつつも、今日まで波乱の日々を生き抜いてこられた。そんな彼女(?)が朝日の朝刊の『ティーンズメール』というコーナーで、月に一度若者たちの悩みに答えている。
このアドバイスが実にストレートで核心を突いたものばかり!相手を突き放すような手厳しい回答は、このての人生相談でよく見られる、美辞麗句でコーティングされたその場しのぎの当たり障りない回答ではなく、単刀直入な分、とても誠実な姿勢が感じられる!自分はこれまで気に入った回を切り取ってきたんですが、このような素晴らしい文章は多くの人に読まれるべきだと思い、
今回ここに7種類の特選Q&Aを集めました。ピーコさん、マジでカッコ良い!

※長いものは、こちらで一部要約しています。

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Q.「勉強中に悪魔のささやきが」 《15歳・中学生》 02’10.24付

私は受験生です。夏休みもケジメをつけるために、塾の合宿に行きました。親にたくさんのお金を払わせてしまってるのに、なかなか頭が良くなるということがないのです。
勉強しようと部屋に行き、やり始めてちょっとしかたってないのに集中力が続かず、好きな漫画を読んだり、好きな歌を聴いたり、歌ったりしてしまいます。自分の心の中では、「やめなさい。もう何度も読んだじゃない!」とか「聴いたじゃない!」と思っているのに、どこかで悪魔が囁くのです。「あとちょっとならいいよっ」とか…。
このままでは、志望校に受からなくなりそうで、恐ろしいです。不安と絶望感で落ち着かない毎日が続いています。わかっているのに、やめられないのです。


A.「甘えず自分の夢を目指して」

甘えているのね。悪魔なんてささやかないのよ。自分が甘えているだけなのよ。受験なんてしないで、どこかに住み込みで、手に職をつけた方がいいんじゃないかしら。高校に行くのだってお金がかかるんだから。それに今の時代、高校を卒業しても短大や大学を卒業しても、就職先がないのよ。勉強が嫌いなら、今のうちからやりたいことの基礎をつけて、洋菓子のパティシエとか、腕のいいコックとか、漫画家とか、歌手とか、夢をふくらませて好きなものを目指した方がいいわ。
でも、あなたには、自分がなりたいと思っているものなんて何もないんでしょう。15,16歳のこの時期をボーッと過ごすと、後でとても悔やむことになるから、自分が何をしたいのか、この1カ月ぐらいでよく考えて決めなさい。そして学歴がないとなれないものだったら、「集中力が欠ける」とか言ってないで、とにかく勉強しなさい。勉強が嫌いなら、自分の好きなものを若いうちから見つけて、磨くことよ。
「好きこそものの上手なれ」というでしょ。才能がある人だって、天から貰ったものを磨かないと玉にはならないんだから、今からやらないと、いつまでたってもだらしのない、普通の女のまんまよ。10年先の25歳のとき、みんなから「すてきね」と言われたいのなら、ボーッと過ごしてちゃだめよ。

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Q.「体育の時間、無理してる私」 《17歳・高校生》 02’9.19付

私の学校の体育のセンセーは、おとなしい子をすごく非難するんだ。クラスに何人かいるじゃん。運動がどうしても苦手ってコや、みんなでワイワイやるのが苦手なコ。そーゆうのって、生まれつきとか性格とかその人その人の個性なのにね。勉強は努力するだけのびる。体育では個人競技以外、努力してもどうにもならないのにね。私なんて「暗い」って毎回のように言われる。理由は体育の時、顔がブスっとしてるから。私ってまぶしいトキ目細めるクセがあるんだ。言っても全然取り合ってくれないケドね。
球技とか結構得意なのに、付いた点数はクラスの下から2番目だった。結局体育の点ってのは、ゴキゲンとりで決まるんだ。でも本当は楽しむためにある授業なんじゃないの?最近、体育の時間、無理してる自分がいます。

A.「嫌なこと、良い方に転化を」

今の子って、人に好かれないのに努力しないのよね。嫌いな人に良く思われようとするのはすごい難しいことだけど、マジメにやっていれば、落第点なんてつかないの。クラスで下から二番目だっていいじゃない。ちゃんと授業に出ていれば。「無理してる自分」っていうけれど、そんなにみんなが楽しく生活をしているわけじゃなくて、人間みんなどこかで無理するのよ。我慢するのよ。それを学校で学ばなくて、どこで学ぶの。体育で良かったわよ。私なんて幾何が苦手で、数学は2だったのね。それでも卒業は出来るのよ。
本当に悔しかったら、一生懸命やったらいいのよ。きびきび動いたり、ボールを率先して片づけたり、そういう細かいことに目がいってれば、先生ってそんなに怒るもんじゃないのよ。デレデレ整列してたら怒ると思うけれど。同じ1時間過ごすのに、イヤだなと思ってずるずる動くのと、きびきび動くのとでは、自分のとらえ方も変わるし、先生の見方も変わってくるのよ。
我慢して、嫌なことをどうやって良い方向に転化できるか考えて。目を細めたら口は笑うようにするとかね。私なんてどんな嫌な先生でもニコッと笑ってたわよ。先生のご機嫌取りじゃないの。そうやって、何かをしのいでいく訓練なのよ
生きていくって嫌なことの方が多いんだから、まだ体育でよかったわよ。

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Q.「本当の恋が出来ない」 《16歳・高校生》 02’4.18付

3年前、友達につられて当時気になっていた人に告白しました。結果はOK。付き合うようになりました。ところが私は、その人と全く話せなくなりました。それは私がまだコドモで、色々と恥ずかしくなったからでした。
その時気付いたことは「本当に好きではなかった」ということ。悩み抜いた結果、私は「もう付き合えない」という手紙を出しました。それ以来、私は罪悪感で本当の恋ができなくなった気がします。「この人いいな」と思っても、心のどこかで「付き合えたとしても、私がしたようなことを逆にされるんじゃないか」「あんなひどいことしといて、私は恋愛なんかしちゃいけないんじゃないか」とひっかかっています。どうすればいいのでしょうか。

A.「本読んでイメージつくって」

人を好きになると、私たちの頃は、まず「若きウェルテルの悩み」(ゲーテ)とか本を読んでね。恋に恋してから片思いをして、告白できなくて、そういうことを繰り返して初めて、好きになった人に「つきあって下さい」って言うの。その手順をあなたは踏んでいないんですよ。告白した後、男と女の違いにびっくりしちゃったんだと思うの。
相手の子が体を求めることもあって、ついていけなくなっちゃったのかもしれない。でも、あんまり恐れないことね。好きな人がいると、触りたくなったりするのは、当たり前のことなのね。相手も自分のことを好きで、心も体もまとめてあなたのことを好きになってくれると、それは怖いことじゃないのよ。きっとあなたのことを好いてくれる男の人は出てくるから、焦らないで、一から恋のことをやり直してみて、いくつになっても恋はできるんだから。16歳なんて、まだ鼻ッタレよ。人を好きになるのがどういうことか、本を読んでイメージを作って。人を好きになればなるほど、心が痛くなること、涙が出ることを知って。
アンドレ・ジイドとか武者小路実篤とか、文豪が書いた本には、愛のこと、セックスのこと、友情のこと、お金のこと、自分と同じように悩んでいる人が出てきて、かみ締めて読むと、悩みが消えるのよね。そこから始めてみたらどうかしら。

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Q.「アルバイトが続かない」 《19歳・大学生》 03’5.1付

高1からバイトを始めて、今で10店目です。どうやっても1年続いたことがありません。ちょっと注意されると緊張して何をすればいいのか分からず、私には合わないのだと思い辞めてしまいます。友達に続けるコツを聞いても、人間関係や慣れだと言われます。
この前とうとう、店から辞めさせられました。同じようなことが二度あり、一気にやる気をなくしました。生きるって何?お金なんて何であるの?と家族に相談しましたが、甘えるなと言われました。バイトは楽しく、ボランティアのように気楽にやりたい。働くとはどんなことなのでしょうか。どうやってバイトをやっていけばいいのでしょうか。

A.「働く根本の意味を考えて」

何だかんだ言ってるけど飽きっぽいんじゃないの?仕事は、学校で先生に「これやりなさい」って言われてやるのとは違うの。言われたことだけやってても、自分を通そうとしても、仕事になりません。楽しむとか気楽になんて大間違い。お金を稼ぐことがどのくらい大変かということが、まだわかっていないようですね。友人には人間関係や慣れだって言われたって言うけれど、人間関係は自分からアプローチしないとできないの。慣れっていうのは仕事を覚えてからのことで、覚えようとしたのかしら?初めから気楽にやりたいとか、やる気がないのをバイトの上司が見たから辞めさせられたと思いませんか。
誰かの背中を押してあげるのは、その人に見込みがあるからよ。背中を押して欲しいのなら、もっと自分から行動を起こす癖をつけなければだめね。

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Q.「居場所がない」 《18歳・高校生》 02’12.19付

人間はなぜ生きているのでしょうか。平日は朝早く起きて、急いで学校へ行き、部活をしながら忙しい、まるで機械のように日々を送る。面倒くさそうにしてたら「社会に出たら、しなきゃいけないことはたくさんある。学校や会社が楽しいからと言って行く人は、あまりいない」と父に言われました。
小中学生の頃は学校が楽しかったけれど、高校生になったら毎日が義務的になった。夢に近づこうと学校を辞め、違う道に進む人もいる中で、自分のやりたいこともなかなか見いだせなかった。気分的な問題もあり、遅刻や欠席の回数も減らず、心の中で葛藤しながら学校に通った時もあった。妙な脱落感があって途方にくれて、居場所がないというか…。
だから…新年こそは、パワーを全開にして明るく前向きに取り組みたい。

A.「同じ年の人の考え 想像して」

生きるということは、自分から何かに飛び込まなければわからないのよね。居場所なんて自分で作るんですよ。後ろ向きな考えで生きていたら、大人になって困るのは自分だと思うのよね。イヤな思いをしながら学校に通ったという葛藤をね、どうして前向きな方向に変えられないんだろう。自分のことだけしか考えていなくて、周りを見ていないのよ。これは親も悪いのだと思うけど。あなたより幸せでない人なんて、イラクにだってアフガニスタンにだって、世の中にいっぱいいてね。同じ18歳で、こんなに恵まれている人って他にいないと思うんですよ。
これまでのような成長がどこの国でも望めなくて、これからどう生きていくかという時代に、自分のことしか考えられない怖さってあると思うの。世の中を見る為に、もっと新聞を読みなさいよ。
自分が何に取り組みたいと思っているか、具体性が何もないのよね。「パワーを全開にする」というけれど、あなたと同い年の人がどんなに色んなことを考えているか、想像する力が身に着くような訓練をするところから始めてみたら。
もう高校卒業の時期、生きる目的のアウトラインぐらいはつけなきゃならないのに、こんなこと言っていられるなんて、幸せね。

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Q.「相手との“差”を感じる」 《18歳・浪人生》 03’6.12付

私は彼氏との間に上下関係を感じてしまいます。同い年だし、彼が上に立った行動をすることもないのですが。私と彼は同じ高校の出身で、彼は現役で大学に合格し、色々なことを知っていて、歌がとても上手です。クラスの人にも好かれていました。
一方私は浪人生で、すぐに落ち込みやすく、あまり人に好かれる性格じゃないようです。彼は自立していて、尊敬もしています。でも彼をすごい人だと思えば思うほど、自分を惨めに感じてしまう。彼との間に埋められない「差」を感じて、自分を「下」だと思ってしまう。真剣に結婚を考えるくらいなのに、どうしても彼と同じラインに立てる気がしないんです。

A.「好きになった方が弱い」

あなたの悩みは「上下関係」ではないって気がするわね。恋愛っていうのは、好きになっちゃったほうが弱いのよ。あなたは、きっと彼のことがすごく好きなのね。でも、彼はあなたが思うほどには、あなたが好きじゃないのかもしれない。
彼が振り向いてくれないのは、自分が浪人生で性格も好かれなくてといって納得させてるけど、あなたの方が好きになる度数がずっと多いんですよ。早くそれに気づいた方がいい。するとね、彼をもっと冷静に見られるんじゃない。
大学に入ったから自立しているわけではないし、自分を惨めに思うことなどひとつもないわけよ。人間同士の間で埋められないものはないし、彼と同じラインに立つことなんかないじゃん。同じラインに立ったら、面白くもないし、同じラインに立てば相手が好きになってくれるかというと、そうじゃないのよ。
ここから抜け出すには、彼にはなくて自分が持っているもの、彼と違うところを数え上げるのね。例えば、彼は料理はできないし、お掃除が下手だしおまけにマザコンとかね。
本当に相手が好きだったら、相手に惨めさなんか感じさせないわよ。だから早くきりをつけて勉強に専念する方がいいかもね。1、2回失恋を経験した方がいいと思うよ。すると恋愛についての強弱関係ってものが自分で測れるようになるから。

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※以下の文は、同じ『ティーンズメール』の中から、ピーコさんではなくミュージシャンのTETSUYAさんの回答です。これがまた素晴らしい!!

Q.「人が怖い、死へ逃げたい」 《18歳・高校生》 03’5.15付

私は今、生きているのがつらい。そして多分これからもずっとそうだと思う。なぜなら人が怖いから。
最近クラスの男子から集団でにらまれたり、こちらに聞こえるように悪口を言われたりする。なぜだか全くわからなくて、他人の会話がすごく気になる。そして自分がどう思われているのかも気になる。誰かの悪口が聞こえると、それが自分のことかどうかに関係なく背筋が凍るような気がする。だんだんと友達ですら信用できなくなってきた。
生きていくことに疲れて、死ぬことに逃げてしまいそうな自分を変えたい。

A.「“自分の扉”開くチャンス」

死ぬことはないよ。逃げなさい。戦うこともないよ。逃げなさい。アルマジロみたいに徹底的に逃げなさい。みっともなく転がって、みんなに悪口言われて、後ろ指さされて、笑われて、それでも転がり続けて逃げなさい。どこまでって?もちろん扉があるところです。君が自分で作った扉。
その扉の向こうはとりあえず一人なので、世界は自由な発想の下にあります。たとえば、もう2,3年友だちなんかいらんわ、アタシ寂しん坊でええわい、と決意してのぞむギター大特訓。文庫本500冊読破。イタリア語習得。小説書きまくって文学賞狙い。油絵爆発でアート・フェスに参加。とまあ、思い付くままいい加減な事を書いておりますが、これらの共通項は「内側から深まることが要求されるため、集団の作業ではなく、個人の孤独な修練が必要になる」ということです。とてもじゃありませんが、いつも友だちとツルんでいるような人たちにできる行為ではありません。どちらかと言えば、死んじゃった方がましかなと思った人でなければ、歩いていけない道程でしょう。つまり、死んじゃいたいなあと思った時は、ある意味で人生に数度しかやってこないチャンスなのです。
さあ、画用紙に扉の絵を描いてみましょう。その向こうに何を見る?

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【広い海へ出てみよう】〜東京海洋大客員助教授・さかなクン
 
 中1のとき、吹奏楽部で一緒だった友人に、だれも口をきかなくなったときがありました。いばっていた先輩が3年になったとたん、無視されたこともありました。突然のことで、わけはわかりませんでした。
 でも、さかなの世界と似ていました。たとえばメジナは海の中で仲良く群れて泳いでいます。せまい水槽に一緒に入れたら、1匹を仲間はずれにして攻撃し始めたのです。けがしてかわいそうで、そのさかなを別の水槽に入れました。すると残ったメジナは別の1匹をいじめ始めました。助け出しても、また次のいじめられっ子が出てきます。いじめっ子を水槽から出しても新たないじめっ子があらわれます。
 広い海の中ならこんなことはないのに、小さな世界に閉じこめると、なぜかいじめが始まるのです。同じ場所にすみ、同じエサを食べる、同じ種類同士です。
 中学時代のいじめも、小さな部活動でおきました。ぼくは、いじめる子たちに「なんで?」ときけませんでした。でも仲間はずれにされた子と、よくさかなつりに行きました。学校から離れて、海岸で一緒に糸をたれているだけで、その子はほっとした表情になっていました。話をきいてあげたり、励ましたりできなかったけれど、だれかが隣にいるだけで安心できたのかもしれません。
 ぼくは変わりものですが、大自然のなか、さかなに夢中になっていたらいやなことも忘れます。大切な友だちができる時期、小さなカゴの中でだれかをいじめたり、悩んでいたりしても楽しい思い出は残りません。外には楽しいことがたくさんあるのにもったいないですよ。広い空の下、広い海へ出てみましょう。
(朝日新聞2006年12月2日掲載)

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以上です。これらは子どもに向けた回答集ですが、大人にとっても「生きる力」に結びつく手がかりがたくさん含まれていると思います。人間には「言葉」があって本当に良かったですね! (#^.^#)


【 オマケ〜座右の銘・5選 】 byカジポン

『私達はいくらでも強くなれるんだ。失敗とか失望とかいった試練に会う度にね。それが力の源泉になる』(映画「ホテル・ニューハンプシャー」から)

『99回倒されても、100回目に立ち上がればよい』(ゴッホ)

『自由が欲しい時は他人に頼んじゃいけないんだよ、君が自由だと思えばもう君は自由なんだ』(リチャード・バック)作家

『生まれて来るのが2度目なら、もう少し上手い生き方も出来たけれど、初めて生まれて来たんだから、そりゃまごつきますよ。向こうでぶつかり、こっちでぶつかり、こぶ作ったり、傷作ったりしてね』(中川一政)画家

『何もかもが失われた時にも未来だけはまだ残っている』(ロバート・H・ゴダード)ロケット技術者




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