〜同時代を生きた者の記録〜
安倍元首相の国葬儀に際して
2022.9.26



明日9月27日は安倍晋三元首相の国葬儀です。安倍さんという個人の死去には、悲劇的な最期を含めて弔意を示したいですし、“静かに見送りたい”という方のお気持ちも理解できます。
一方で、既に7月12日に「増上寺」で葬儀は終わっており、世論調査でも国葬反対の声が6割に達している現在、税金を投入せず自民党葬で見送ってほしかったという意見もあります。
僕自身いくつか引っかかっているのですが、何より安倍さんは、自死に追い込まれた財務省職員・赤木俊夫さんのお墓参りを、遺族が求めているにもかかわらず、ただの一度もされなかった。安倍さんが公文書改ざん事件と無関係であったとしても、安倍さんが首相になっていなければ、赤木さんは現在も生きておられたのです。安倍さんの国会答弁から始まった公文書改ざんで、森友文書から昭恵夫人の名が消されたのです。せめて線香を1本でもあげる優しさを見せていただきたかった…。

アフガニスタンでテロリストの凶弾に倒れた中村哲医師についても同じです。アフガンの大統領が中村医師に最大限の感謝と敬意を示し、大統領自ら中村医師の「棺を担いで」帰国便に乗せたのに、安倍さんは成田空港で出迎えることもなく、同時刻にご自宅で過ごされていた。同じ日本人ではありませんか。また、南アで人種差別と戦ったノーベル平和賞受賞者ネルソン・マンデラ氏の葬儀でも、世界中のトップが参列するなか、安倍さんは日本で財界との食事を優先して出席しませんでした。そういう姿をずっと見てきました。
霊感商法などで人々を苦しめた統一教会に関係した政治家を、国が多額の公費で顕彰することに違和感を抱く人は少なくありません。安倍さんの国葬にG7(先進7カ国)の現役首脳が誰1人として参列しないことに、カルト宗教との癒着が少なからず影響しているのではないでしょうか。

岸田首相は国葬の理由として「憲政史上最長の在任期間」「経済や外交での功績」などをあげています。前者については、安倍さん自らが党則を変えて総裁任期の上限を2期6年から3期9年に延長したのですから、歴代首相と比較するのは違和感があります。また、“最長”といっても、それはどんな不祥事が起きてもけっして辞任しなかった結果です。僕は安倍政権下で起きた以下の諸問題が解決されたと思っておらず、同時代に生きた者として、後世に向けて自分の想いを10項目書き残します。

(1)公文書改ざん
(2)統一教会との癒着
(3)桜を見る会
(4)伊藤詩織さんのこと
(5)閣議決定だけで解釈改憲
(6)アベノミクス
(7)“外交の安倍”の違和感
(8)東京五輪汚職
(9)河井元法相夫妻・参院選買収事件
(10)「論破」を口にした唯一の首相

このコラムは安倍さんを全否定するものではないので、先に高く評価した政治判断を記しておきます。
中東エルサレムはユダヤ教・キリスト教・イスラム教の聖地ですが、イスラエルはこの土地を武力で手に入れ、1980年にエルサレムを首都と宣言しました。もともとはパレスチナ人の土地であるため、国際社会はこれを認めず、各国は大使館をエルサレムではなく、経済都市テルアビブに設置しました。
ところが、2017年12月、ユダヤ保守層の支持を得たいトランプ大統領(当時)は「イスラエルの米国大使館を首都エルサレムに移す!」と突然宣言、同盟国にも「米国に続いて大使館を移すことを望む」と強く迫り、いくつかの国は同調しました。
しかし翌年5月、安倍さんは自ら中東を訪問し、パレスチナ自治政府のアッバース議長と会談を行い、「日本はテルアビブの日本大使館をエルサレムへ移転させるつもりはない」と明言しました。エルサレムはイスラエルに土地を奪われたパレスチナ人が独立後に将来の首都と決めている場所です。
米国から大使館の移転を強く要求されていたのに、安倍さんがこれをはね付け、弱い立場であるパレスチナの味方をしたことに僕は強く感動しました。安倍さんの素晴らしい決断でした。
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(1)公文書改ざん
学校法人「森友学園」が新たに開校を計画した小学校の名誉校長には、当初“昭恵夫人”が就いていました。学校名は、「開成小学校」→「安倍晋三記念小学校」→「瑞穂の國記念小學院」と変遷。その建設用地として、2016年に財務省は保有する約9億5千万円の国有地を「約8億2千万円」も値引きし、1億3400万円で森友に売却しました。
国の土地は国民みんなのものなので、本来はなるべく高く売らなければいけません。それを異常な8億円ディスカウント。値引きの口実は「地中のごみ」撤去費ですが、そこまで大量のごみは見つかっていません。しかも、現地の残土処理を請け負い「(撤去費用を抑えるために)国に言われてゴミの埋め戻しをした」と語った田中造園土木の秋山肇社長が、この証言の翌日に市役所のトイレで謎の首吊り自殺を遂げています。

この土地をめぐる交渉中に使用された名前は「安倍晋三記念小学校」で、森友の籠池理事長は昭恵夫人と一緒に写った写真を財務省側に見せつけ、昭恵夫人の秘書のサポートを受けていたこともFAXで判明しています。あまりに不自然な値引きであり、国側の担当職員は責任回避のために、昭恵夫人や複数の政治家の名前とともに「特例的な内容」「本件の特殊性」などと、学園への特別扱いをうかがわせる記載を公文書に記していました。
2017年2月17日に安倍さんが国会で「私や妻が関係していたということになれば、首相も国会議員も辞める」と答弁したことで、その直後から、財務省はこれらの記載を公文書からことごとく削除し始めます。実に14の公文書、300箇所という膨大な改ざんでした。安倍さんの答弁の9日後(2月26日)、財務省職員の赤木俊夫さんは休日出勤の呼び出しを受け、改ざんを命じられます。同僚の話では、赤木さんは「涙を流しながら抵抗していた」そうです。帰宅後、赤木さんは妻に「内閣が吹っ飛ぶようなことを命じられた」と打ち明けました。
国がすでに作った書類をあとで書き直すことは、法律で禁止されています。公文書が改ざんされると、国民は行政の政策決定が正しかったのか判断する材料を失うからです。国民の知る権利の侵害であり、民主国家では絶対にあってはならないことです。
この書き直し命令は、どう見ても安倍さんを守るためのものでした。

2018年3月7日、赤木俊夫さんは自宅で自ら命を絶ちました。享年54。その5日前(3月2日)に朝日新聞が公文書改ざんの疑惑を報じていました。震えるような字の遺書と、パソコンに保存された手記には、こう記されていました。

遺書「佐川理財局長(パワハラ官僚※原文ママ)の強硬な国会対応がこれほど社会問題を招き、それにNOを誰もいわない。これが財務官僚王国。最後は下部がしっぽを切られる。なんて世の中だ、手がふるえる、恐い。命、大切な命、終止府」

手記「本年3月2日の朝日新聞の報道、その後、本日国会を空転させている決裁文書の調書の差し替えは事実です。元は、すべて、佐川理財局長の指示です。パワハラで有名な佐川局長の指示には誰も背けないのです」
「学園に厚遇したととられる疑いの箇所は、すべて修正するよう指示があったと聞きました。嘘に嘘を塗り重ねるという、通常ではあり得ない対応を本省は引き起こしたのです」
「この事実を知り、抵抗したとはいえ関わった者としての責任をどう取るか、ずっと考えてきました。今の健康状態と体力ではこの方法をとるしかありませんでした」

“この方法”とは自死です。生前の赤木さんは「私の雇い主は日本国民。国民のために仕事ができる国家公務員に誇りを持っています」と人に話すほど仕事にやり甲斐を持っていました。その赤木さんが手記に「責任をどう取るか、ずっと考えてきました」と悲痛な思いを刻み、奥さんは「夫は改ざんしたことを犯罪を犯したのだと受け止め、国民の皆さんに死んでお詫びすることにしたんだと思います。夫の残した手記は日本国民の皆さんに残した謝罪文だと思います」と語っています。
これほどまでに国民を思う、責任感の強い、真面目な赤木俊夫さんが亡くなったのに、私たちは彼の心を共有できているでしょうか。赤木さんにとって、公文書の改ざんとは国民に死んで詫びるほどの犯罪だったのです。他の国であれば赤木さんが吐露したように、間違いなく内閣が吹っ飛んでいます。ですが、安倍政権では1人の閣僚も辞任せず、検察も関係者を全員不起訴にしたため、国民は公文書改ざんという行為にそこまで怒らなくなりました。改ざん当時の財務省理財局長で、国会で経緯などを説明してきた佐川宣寿氏は「国税庁長官」に栄転しました。佐川氏だけではありません。安倍さんを強弁で守った人物は軒並み出世しました。これでは、赤木さんが何のために苦しみ、責任を感じ思いつめたのかわかりません。

※ネット上では官邸擁護派が、「赤木さんがウツになったのは、野党議員が上司・同僚を責め立てるのを見たから」と、あろうことか自死の理由を野党の追及とする言説を書き込んでいますが、これは公務災害認定にあたって人事院・近畿財務局が流したデマです。
夫人の話では、2017年2月21日に野党議員が近畿財務局を訪れた際に赤木さんはその場におらず、何も見ていません。人事院はこの21日から赤木さんが『精神的ストレスを抱え込むようになった』としていますが、夫人は「内閣が吹っ飛ぶようなことを命じられた」と赤木さんが告白した26日から精神が不安定になったと断言しています。
21日の野党ヒアリングの段階では赤木さんは元気だったのに、あたかもその日が自死に至る遠因とするデマは許し難いものがあります。また、野党が責め立てたと言いますが、それは財務省職員がまともに回答せず虚偽の事実を述べ立てたためです。
この改ざん事件では、(1)公文書の改ざんは誰の指示で行われたのか(2)その目的は何か(3)国有地売却に関し安倍元首相夫妻の関与はあったのかの3点が、資料が黒塗りだらけでいまだ明らかになっていません。政権擁護派の小川榮太郎氏は「職員自殺は朝日のせい」、三浦瑠麗氏は「人が死ぬ程の問題じゃない」とコメント、赤木さんの命は侮辱されました。
※「加計学園」について。2017年、加計学園は52年間どの大学も認められなかった獣医学部の新設を認められました。加計孝太郎理事長は安倍さんの大親友であり、愛媛県職員は柳瀬首相秘書官(当時)と面会した際に『本件は首相案件』と言われました。同じく獣医学部新設を求めていた京都産業大学は、鳥インフルエンザ研究の実績があったのに門前払いです。加計学園が特別扱いされた疑念は残ったままです。
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(2)統一教会との癒着
銃撃事件当初、NHKは「山上容疑者は元首相を統一教会と繋がりがあると“思い込んで”犯行に及んだ」と何度も伝えましたが、いまや早合点どころか、安倍さんが統一教会の票を候補者別に差配していたことまで明らかになっています。
参議院議長を務めた自民・伊達忠一元議員は、2016年の参院選で宮島喜文候補を当選させるために安倍首相と面会し、統一教会票を回してもらうよう依頼しました。首相は「わかりました。そしたらちょっと頼んでアレ(支援)しましょう」と協力を約束。宮島氏らは「教団側の支援が公になると危うい」と考え、「一部の陣営幹部のみが知るトップシークレット」と位置づけました。宮島氏「教団票は6万〜7万票あったと思う。教団の力は、正直すごいなと思った」。当選後、宮島氏は平和連合(統一教会系)から熱海の旅館で1泊2日の「研修」を求められ、教団の教えや歴史などを学び、そこで岸信介元首相とのつながりを聞き、岸氏の孫である安倍首相が登場するビデオを見せられ、安倍さんが統一教会の活動を理解してくれていると説明を受けたといいます。

今夏の参院選を前に宮島氏は安倍さんと面会し「前回と同じように応援票を回していただけませんか」と頼んだところ、安倍さんから「悪いけど勘弁してくれ。今回は井上をアレ(支援)するから」と告げられました。安倍さんの元首相秘書官・井上義行氏が立候補を予定していたのです。宮島氏は再選を断念し、安倍さんは井上氏に「教団票」を割り振りました。井上氏は19年の参院選では約8万8千票で落選したのですが、今回は約16万5千票で当選しました。
他にも、安倍さんは2013年の参院選で、産経新聞社の政治部長であった北村経夫氏を立候補させ、旧統一教会の支援で当選させており、19年にも北村氏を統一教会の支援で当選させています。
2021年9月、安倍さんは統一教会の関連団体「天宙平和連合」が主催したイベントにビデオメッセージを寄せ、「朝鮮半島の平和的統一に向けて努力されてきた韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁に敬意を表します」と、教団のトップ(創設者の故・文鮮明の妻)韓鶴子総裁を最大限に讃え、さらに「家庭の価値を強調する点を、高く評価します」と声明を出しました。
山上徹也容疑者は母親が教団に1億円以上も献金して自己破産し、父と兄が自殺するなど、教団に家庭を壊され、自分自身も自衛官時代に自殺未遂をしています(保険金を妹に残すため)。彼はこのビデオを見て、教団にお墨付きを与える安倍さんを「殺すしかないと思った」と供述しました。

ビデオ出演から約1カ月後、統一教会系の政治団体「国際勝共連合」の会長・梶栗(かじくり)正義氏は、安倍さんのビデオ出演が選挙支援の見返りだったことを示唆しています。梶栗氏「この8年弱の政権下にあって、6度の国政選挙において私たちが示した“誠意”というものも、ちゃんと本人が記憶していた」。
先日、自民党は統一教会と今後関係を持った議員には離党を求める考えを示しましたが、所属議員からはこんな声も。「統一教会と最も関係が深い存在だったのが安倍さん。関係を断てと言いながら国葬をやるのは、最大の矛盾だ」。
カルト被害者救済の第一人者で、全国霊感商法対策弁護士連絡会・代表世話人の山口広弁護士は、35年以上も被害者の救済に奔走してきました。その山口弁護士は自民に危険な変化が起きていたと指摘しています。「第2次安倍政権以降、自民党が統一教会との関わりを隠さなくなったことに強い懸念を抱いていました。安倍さんは統一教会とつながりのある議員を積極的に登用するようになったのです」「若手議員は統一教会のイベントに参加したり、祝電を送ったり、それらをホームページなどで発信するようになった。ひと昔前は統一教会の求めには応じるものの、議員たちには問題がある教団だという意識があり、「顔は出すけど、名前は出さないで」と言っていたものです。それがガラッと変わったのは、統一教会と関わりを持てば安倍さんの覚えがめでたくなり、政府の一員になるチャンスになったから。政務官や副大臣、場合によっては大臣に取り立てられることもあった。統一教会が刑事摘発されるケースが少なくなり、マスコミ報道が減り、教団の実態を知らない議員が増えたことも背景にあります」

※統一教会側は「霊感商法をやったことはない」と会見で主張していますが、教団の組織的関与が認定された民事事件が約30件にのぼるほか、2007年から10年にかけて警察による刑事摘発(13件30人余り)も相次ぎました。最近でも2021年だけで相談17件、約3億3千万円の被害があり、1987年の「全国霊感商法対策弁護士連絡会」(全国弁連/約300人の弁護士)の結成からこの34年間の相談数は約3万4千件、1237億円以上の被害が確認されました。これはあくまでも持ち込まれた相談の集計に過ぎず氷山の一角です。
全国弁連は、これまで国会議員に統一教会と関わりを持たないよう求めてきました。祝電や講演は、教団が問題のない集団だと「お墨付き」を与えることになり、教団が新たな信徒を獲得するために政治家の名前を出して信用させるからです。
信仰の自由は犯罪の自由ではありません。

※政治家が統一教会からお金を受け取るということは、霊感商法による被害者のお金を受け取るということなのです。
統一協会系月刊誌『世界思想』には安倍さんの写真が何度も表紙に使われており、「霊感商法」の被害拡大につながると懸念されています。
先日、自民党は統一教会と今後関係を持った議員には離党を求める考えを示しましたが、所属議員からはこんな声も。「統一教会と最も関係が深い存在だったのが安倍さん。関係を断てと言いながら国葬をやるのは、最大の矛盾だ」(2022年9月7日・毎日新聞)

※安倍内閣は統一教会を公安警察の重点監視対象から除外しました。安倍さんの人事で最も問題なのは、統一教会に近い人物を国家公安委員長に据え続けたことです。教団を取り締まるべき公安委員長が統一教会とズブズブなどもってのほかです。
統一教会は悪いイメージのある教団名を2015年に『家庭連合』に改名しましたが、この頃の公安委員長は統一教会が内部文書で支持を訴えていた山谷えり子議員です。2022年まで同職だった二之湯智(にのゆ・さとし)氏に至っては、統一教会のダミー団体のイベントで実行委員長まで務めていました。氏は「統一教会がどういう教義をもって布教活動をしているか、さっぱり分かりません」と、公安委員長としてあるまじき発言をし、「2010年を最後に(霊感商法の)被害届はない」と教団を擁護しました。この発言内容は間違いであり、警察庁は「被害届ではなく、検挙がない」と二之湯氏の発言を訂正しました。被害は続いているのですから、検挙がないのは公安が仕事をしていないことになります。

《安倍政権が統一教会に行ったこと》
2006年5月 安倍官房長官(同年9月首相就任)が統一教会の合同結婚式に祝電
2006年 公安の重点監視対象から統一教会を除外
2010年 統一教会が参院選で山谷えり子氏(後の国家公安委員長)に選挙協力
2013年 統一教会が参院選で元産経新聞記者・北村経夫氏(後の外交防衛委員長)に選挙協力※教団の内部文書に「首相からじきじきこの方(北村氏)を後援してほしいとの依頼」とあり。
2013年 「桜を見る会」に統一教会幹部を招待(2016年まで続く)
2014年 萩生田光一氏、中川雅治氏が「祝福原理大復興会」に出席
2015年 『統一教会』→『家庭連合』への名称変更を文化庁が認可(新たな霊感商法被害を出さないよう1994年から名称変更を差し止めていたのを下村文科大臣が認めた。下村氏には統一系会社から献金)
2016年 統一教会の徳野英治会長を首相官邸に招待(!)
2019年 令和の始まり5月1日は統一教会の設立日5月1日と同じ
2021年 元首相秘書官の井上義行氏が統一教会の集会で入信を表明
2021年9月12日 天宙平和連合(UPF)統一教会イベントに安倍さんがリモート出演し韓鶴子総裁に敬意を表す
※教団の取材を20年続けてきたジャーナリスト・鈴木エイト氏「ビデオメッセージの内容はともかく、安倍さんが統一教会との近さをまったく隠さなくなったことが衝撃的でした。つまり、教団にエールを送ったことがバレても、自分のダメージにならない、コントロール可能と確信したということです」
2021年9月17日 霊感商法の対策弁護士連が安倍さんに「お墨付きを与えないでほしい」と公開抗議文を送る
2022年7月8日 銃撃事件。山上容疑者は政治的には安倍さんの支持者であったため、事件直後から「元首相の政治信条とは無関係」と話し、あくまでも教団に対する怨恨が動機と強調。

《統一教会の教義など》※ウィキペディアから抜粋。
・統一教会の教典「原理講論」の韓国版には「日本はサタン(悪魔)の国」、文鮮明教祖はキリストの再来と書かれている。日本は"エバ(イブ)国家"で「サタンの国」であるため、"アダム国家"である韓国と統一教会に全てを捧げよとある。
・文教祖の恨(ハン)を晴らすのは「エバ国家日本をアダム国家韓国の植民地にすること」「日本の皇室と(文教祖の)孫たちを結婚させること」「天皇を自分(文鮮明)にひれ伏させること」としている。そして『天皇が文教祖一家にひざまずく儀式』を行っており、日本支部会長が天皇に扮している。
・信者は合同結婚式で結婚。同性婚や夫婦別姓は絶対に認めない。
・安倍さんが説いていた国家像である「美しい国」は、日本統一教会の初代会長・久保木修己が説いた「美しい国」が元祖。
・安倍さんの祖父・岸信介の自宅隣が統一教会の初期本部で、岸は立ち上げから関わっている。「岸が日本国内に招き入れた」というのは山上容疑者の思い込みではない。
・1984年に文鮮明が脱税により米国で投獄された際、岸元首相はレーガン大統領に親書を送り、「文鮮明の存在は、現在、そして将来にわたって、希少かつ貴重なもの」「不当な拘禁から解放されるよう」と釈放を懇願した。

【統一協会・被害対策弁護士の会見まとめ】
・統一教会は韓国のカルト宗教で「韓国は救世主の国、日本は悪魔の国」という思想で、信者を洗脳させて全財産を教会へ寄付させている
・統一教会は日本人女性を洗脳し、貧しい韓国人男性と強制的に結婚させて韓国の血の入った子を産ませることで、「日本の穢れた血を浄化」しようと考えている
・2004年時点で韓国人男性と結婚して韓国で暮らす日本人女性信者約7000人
・1987年から2021年までの「霊感商法」による「被害件数」は3万4537件で「被害総額」は約1237億円に上る。一冊3千万円の教団本を複数購入させられた事例も
・統一教会の教祖は岸信介首相(安倍氏の祖父)と盟友であり、1950年代から日本の政界と協力していた
・1990年代の時点で、日本の国会議員のうち100人以上の秘書が統一教会の信者
・文鮮明の金の7〜8割は日本から
・安倍政権になってから、国会議員が統一教会の行事へ公然と参加するようになった。統一教会と関わる議員が出世しやすくなり、自民党議員たちは安倍氏の寵愛を受けるためにこぞって統一教会との関わりを深めていった
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(3)桜を見る会
2019年4月13日に開催された「桜を見る会」は参加者約1万8000人、当初の予算(約1700万)の3倍となる約5500万円が投入されました。招待されたのは安倍さんと親しい保守系の文化人ら(百田尚樹、有本香、ケント・ギルバート等)や自民党関係者、後援会の参加が多数で、以下の6つの理由から安倍さんに事実上私物化されていたと考えられます。

1.招待されるのは「各界で功労・功績のあった人物」のはずなのに、安倍さんや昭恵夫人、自民党議員(3カ月後に参院選を控えた改選議員)などが招待枠を持っていました。多額の税金で開催され、参加者の飲食は無料、芸能人に会えるイベントです。安倍さんはここに選挙区の有権者を850人も招待したのですが、全員が「各界で功労・功績のあった人物」とは考えられず、支援者の買収=公職選挙法違反に抵触します。

2.マルチ商法詐欺師や暴力団関係者など反社会的勢力が来場。安倍さんは自身の招待枠で、数百万円の磁気ネックレスなどを扱って延べ約1万人から約2100億円を違法に集めた「ジャパンライフ」山口隆祥会長を「桜を見る会」に招きました。ジャパンライフは招待状をチラシに印刷するなど客の勧誘に利用し、被害拡大に繋がりました。騙された高齢者いわく「首相のお墨付きの人と思って信じた」。安倍内閣の総辞職からわずか2日後、山口会長は巨額詐欺事件の容疑者として逮捕されました。
他にも、マルチ商法で業務停止となった「よつばホールディングス」関係者と首相夫妻が「桜を見る会」で写真を取り、写真が勧誘に使われていた事が判明しています。また、マルチ商法団体の全国福利厚生共済会(プライム共済)も、団体幹部と首相夫妻が一緒に写った「桜を見る会」の写真を掲載した冊子を勧誘に使っており、この幹部の招待状にも総理枠とされる「60番」が印字されていました。なぜこうした人物を首相は招待したのでしょうか。※この3例だけでも辞任に価すると思います。

3.国民の血税が投入されたイベントであり、野党議員が招待客名簿の開示を要求したところ、約一時間後に名簿はシュレッダーにかけられました。これは意図的に廃棄したとしか考えられません。官邸は「個人情報保護のため」としていますが、各界の功労者が招待されているならば、証拠隠滅まがいのことをやる必要はないはずです。文化勲章の受章者の名簿を破棄するようなもので、筋が通りません。
公文書管理法では、行政文書を適切に管理するため、1年以上保存する文書ファイルの名称や保存期間などを管理簿(帳簿)に記載することを義務づけています。ところが、安倍さんが主催した2013〜17年の「桜を見る会」の招待者名簿に関しては管理簿に記載がなく、これは公文書管理法に違反しています。官邸は「ただの記載漏れ」と弁明しましたが、文書管理のプロである役人が5年連続で記載ミスを犯すとは思えません。安倍政権以外では適切に管理されてきたのですから。極めて不自然で、意図的な不記載と見られても仕方ありません。
また、廃棄後も廃棄簿(廃棄したことを示す記録)へ記載しておらず、これも公文書管理ガイドラインに反しています。担当部署が首相に無断で勝手に廃棄していたことになり(法令では廃棄前に首相の同意が必要)、そんなことがあり得るでしょうか。
大きな疑念はまだあります。2018年4月から招待者名簿の保存期間が1年以上から1年未満に変更され「即廃棄が可能」となったことです。これでは税金が適切に使われたか全くチェックできません。1年以上に戻すべきです。官邸は招待者名簿の電子データについて「削除したデータは復元できない」と答弁しましたが、専門家は「バックアップデータは復元が可能なはず。ファイル単位ではなく丸ごとを自動でバックアップする仕組みであり、名簿のファイルだけ全部消すことなどできない」と首を傾げています。

4.「政治家枠」の人数は2005年度には2744人であったのに、19年度は3倍以上の8894人に激増。逆に、国際貢献や災害復旧などの功労者は406人から182人に減少しており、こちらも納得できません。

5.会で出される食事について、昭恵夫人と親しい人物の会社が7年続けて受注しているのは偶然でしょうか。

6.桜を見る会・前夜祭の問題。2013〜19年の桜を見る会の前日に、安倍晋三後援会の主催でホテルニューオータニなどで開催された夕食会は、1人5000円と会費が安く、後援会が補填したことが発覚しました。安倍さんは「補填はない」と事実に反する国会答弁を「118回」も繰り返しました。これは国会への愚弄(ぐろう)です。2020年12月、東京地検特捜部は安倍晋三後援会代表の配川博之・公設第1秘書を、収支報告書に前夜祭に関する記載を行わなかったとして「政治資金規正法違反」(不記載罪)で略式起訴し、東京簡裁は秘書に罰金100万円を命じました。安倍さんは「秘書がやりました」と疑惑解明のための明細書提出も拒むなど、十分に説明責任を果たしたとは言えません。公職選挙法が禁じる地元有権者への利益供与とならなかったことが不思議です。
※アメリカでは大統領執務室での会話すら全て録音保存されています。後世の人々が政策の是非を検証するためです。「書類はシュレッダーにかけました」と平気で答弁する国とは大違いです。
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(4)伊藤詩織さんの性被害問題
2015年4月、伊藤詩織さん(当時25)は「就職の相談にのる」と食事に誘われた後、昏睡状態でホテルに連れ込まれ性暴力被害を受けました。同意に基づかない行為であるばかりか、避妊もないという悪質さで、伊藤さんはアフターピルを買い求めました。相手の男性は「安倍首相に最も近いジャーナリスト」といわれた山口敬之(のりゆき)氏(当時49歳、既婚者)。山口氏は安倍さんの携帯に直接電話できる仲であり、安倍さんの伝記を2冊書き、ワイドショーに引っ張りだこでした。警察は、ホテルの防犯カメラに映った引きずられていく伊藤さんや、タクシー運転手が「もうろうとしながらも駅で降ろしてくれと何度も頼んでいた」と証言したこと、DNA検査、ホテル従業員の証言などを捜査しクロと認定、裁判所から逮捕状が出されました。
2016年6月8日、捜査員が山口氏を逮捕するため成田空港で待ち構えていたところ、警察上層部から突然逮捕中止の命令が出て、捜査員は山口氏の背中を見送るしかありませんでした。
裁判所から逮捕状が出ているのに、逮捕が直前で取りやめになった例は他にないと聞きます。裁判官は、逮捕の必要もない案件に逮捕状を出したということでしょうか?

この前代未聞の逮捕中止命令を出したのが、当時警視庁本部の刑事部長だった中村格(いたる)氏。中村氏は菅(すが)官房長官(当時)の元秘書官で、共謀罪摘発を統括する警察庁組織犯罪対策部長を経て、大臣官房統括審議官に抜擢されるなど官邸に極めて近い人物です。安倍さんが亡くなった時には警察庁長官にまで上り詰めていました。伊藤さんは、一度出された逮捕状が無効になるほどの、どんな新事実が出てきたのか教えてほしいと中村氏に何度も訴えましたが、今に至るまで中村氏は具体的な説明をしていません。管官房長官は山口氏の再就職先を“ぐるなび”創設者に口利きしたことも判明しています。

納得できない伊藤さんは、名前や顔をメディアに出して戦いを開始。恐れていたとおり、安倍さんの支持者から猛烈な誹謗中傷とバッシングを受けました。「隙があったのだろう」「服装はどうだったのか」から始まり、「ハニートラップ」「売名行為」と続き、挙げ句にはイラストレーターが伊藤さんの似顔絵に「枕営業大失敗」と書き、それを見て現職の女性国会議員である杉田水脈氏が嘲笑している動画まで配信されました。保守界隈で著名な小川榮太郎氏、阿比留瑠比氏、青山繁晴氏、有本香氏、上島嘉郎氏、西岡力氏らは『山口氏を励ます会』を開催。百田尚樹氏、居島一平氏はDHCの番組に山口氏を呼んで伊藤さんを攻撃し、花田紀凱氏は『月刊Hanada』に山口氏による反論記事を掲載しました。こうした地獄にあって、伊藤さんは一歩も退きませんでした。2020年9月、伊藤さんは米国TIME誌の「世界で最も影響力のある100人」に“性的暴力の勇敢な告発で日本人女性の人生を永遠に変えた”として選出されました。このとき日本人で選ばれたのは、黒人差別に抗議したテニスの大坂なおみ選手と伊藤さんだけです。伊藤さん「本当にたくさんの声が重なって、たまたま私が発した時に一緒にその声が響いたものだと思っています」。

法廷闘争では、2022年7月、「山口氏が同意なく性行為に及んだ」として約332万円の賠償を命じた高裁判決を最高裁が支持し、伊藤さんの勝訴が確定しました。一方、伊藤さんは事件当日の酔いの回りがあまりに速いため著書でデートレイプドラッグの使用を疑ったことが、山口氏への名誉毀損にあたると判断され、こちらは山口氏への55万円の賠償が確定しました。後者は、物的証拠を出せなかったことで伊藤さんは敗れたのですが、状況的に何かを飲まされたと疑うのは被害者心理としてわかるのに、裁判官も山口氏もあまりに非情だと感じました(地裁判決では「名誉毀損には当たらない」でしたが、高裁で逆転されました)。
安倍さんが銃撃事件で命を落としたあの日、公式発表は「17時3分死亡」であったのに、山口氏は先走って15時30分過ぎに、フェイスブックに「お亡くなりになった」と投稿し、デリカシーがないと大ヒンシュクをかい謝罪に追い込まれています。
また、山口氏の逮捕状を握り潰した中村格氏が警察庁長官であったため、フランスのフィガロ紙は事件の記事で「権力に近いレイプ犯の起訴を止めたことで有名な中村格氏が、日本の警察のトップを務めている」と記しました。8月30日、銃撃事件の警備体制の不備を理由に、中村氏は警察庁長官を引責辞任しました(同日、奈良県警察本部長の鬼塚友章氏も辞任。鬼塚氏も国家安全保障局・内閣参事官を歴任し官邸と縁のある人物)。

中村氏は、安倍さんに命じられて山口氏の逮捕状を握り潰したのでないならば、何が決め手となって逮捕中止命令を出したのか、伊藤さんが納得するまできちんと説明すべきです。山口氏が暴行の言い訳を書いたフェイスブックに、昭恵夫人が「いいね」を押しているだけにです(昭恵夫人と山口氏の姉は古い友人)。
未来の教科書に、日本の女性の性被害救済策のきっかけとなった人物として伊藤詩織さんの名前が載ると確信しています。

※勝訴後の会見で記者から「性暴力被害者に伝えたいことはありますか」と問われた伊藤さんの言葉。「まずは生き延びること。今日このメッセージを聞いていてくれたら、今日まで生き延びてくれて本当にありがとうと伝えたいです。そして、力が出たら、歩みを共にしていきたい」。

※山口氏がどう反論しようと、意識がない女性への性行為は絶対にアウトなのに、執拗に「落ち度があった」「隙があった」と伊藤さんを攻撃し続けた杉田水脈議員。女性が女性に、それも性被害者へ2次加害を繰り返す構図は悪夢のようです。被害者を支えるのではなく、女性が彼女を責めるのはショックだし、とても心が痛いです。
杉田議員は数々の問題発言で知られ「男女平等は、絶対に実現しない妄想だ」「(性暴力被害者への支援をめぐり)女性はいくらでもうそをつける」「(LGBTのカップルに税金を使うのは問題として)彼ら彼女らは子供を作らない、つまり『生産性』がないのです」と発言、選択的夫婦別姓の導入を求める野党議員には「だったら結婚しなくていい」と野次をとばしました。
過去に維新や右派政党に属していた杉田議員を、自民党の候補になるよう“説得”したのは他でもない安倍さんです。安倍さんが自民に招き入れました。杉田議員の過激な発言は、同じ自民議員からも批判する声があがりましたが、安倍さんが後ろ盾になっているため、彼女は除籍にならず重用され続けました。安倍さんは「すべての女性が輝く社会づくり」と女性の活躍を全面にうたっていましたが、前時代的な男女観を持つ杉田議員の抜擢はスローガンと真逆のものでした。

※日本の刑法が遅れているのは、「被害者が抵抗できないほどの脅迫があった」と証明できなければ罪に問われにくいこと。性犯罪被害者の7割がフリーズ状態に陥っており、「無抵抗は同意ではなく恐怖で動けない」が実状なのに、刑法が実態を反映していません。被害者の立場に立った刑法の改正が必要です。欧米では被害女性を支援するための大規模デモが起きますが、日本では伊藤さんを支持する大規模デモはなく、そこにも日本特有の問題があるように思います。
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(5)閣議決定だけで解釈改憲
安倍さんは2015年に閣議決定だけで解釈改憲を行い、集団的自衛権を合憲化しました。これまでは日本が攻撃を受けたときにのみ反撃できましたが、これからは日本が「攻撃を受けてなくても」、同盟国が攻撃された場合は反撃可能になりました。相手国にすれば、宣戦布告していない日本から先制攻撃を受けることになり、これは専守防衛から逸脱します。ですから、憲法学者の9割が集団的自衛権の行使を違憲としてきました。安倍さんは、内閣法制局長官の首をすげ替えて「合憲」と考える人物を置き、解釈改憲を可能にしました。これは禁じ手でした。なぜなら、憲法解釈を内閣だけでやれるなら、何だって出来てしまうからです。安倍さんは検察庁の人事にも介入し、三権分立の破壊を招きました。立憲主義を軽視して法的安定性を崩したのです。
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(6)アベノミクス
安倍さんが経済の好循環を生み出そうとして敢行した異次元緩和は空振りに終わりました。先進国で日本だけがまったく成長できなかったどころか、物価の上昇を考慮した実質賃金は民主党政権時代より下がりました。株価の上昇は、国民の年金積立金をルール変更で5割もつぎ込んだ株価操作の結果であり、経済の実態とかけ離れたものとなりました。
有効求人倍率が回復したと言っても、正規は減って非正規が激増しただけです。モノが売れていないのに企業収益が上がっているのは、人件費を苛烈にカットしたからです。好景気を演出するため、国交省は二重計上で「基幹統計」を書き換えGDPを改ざんしました。

安倍さんはアベノミクスの6年間で雇用は380万人増えたと誇りましたが、増えた380万人中、約7割にあたる266万人は65歳以上の高齢者です。貯蓄ゼロ世帯が増え、年金も少なく年を取っても生活が苦しく、働くしかないのです。昭和の時代にあった、悠々と趣味を楽しむ第2の人生がなくなりました。安倍さんは「史上初めて正規の有効求人倍率が1倍を超えました」とうたいましたが、それは単純に団塊世代が引退する一方で若者人口が減少しているからであって、アベノミクスは関係ありません。民主党政権時代から有効求人倍率は右肩上がりを続けています。
2021年時点で非正規雇用は2075万人、雇用者の約4割となる37%に達し、働いているのに年収200万に届かない貧困層は18%に増加しました。
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(7)“外交の安倍”という言葉の違和感
安倍さんは日本人拉致問題の解決は「内閣の最重要課題」と繰り返し強調していましたが、安倍政権下の8年間で1ミリも前進しませんでした。それどころか、北朝鮮から田中実さんと金田龍光さんの2名の「一時帰国」提案を受けていたのに、それを拒否していたことが2022年9月16日に判明しました。「提案に応じれば幕引きを狙う北朝鮮のペースにはまりかねない」というのが拒否理由でした。頭がクラクラします。拉致被害者を帰国させたうえで、北朝鮮のペースにならぬようにするのが政治家の仕事であり、外交ではありませんか。提案を蹴っていなければ、おふたりは親族と再会できたのです。ご高齢であれば時間との戦いです。

2018年の総裁選公開討論会で、記者から「拉致問題を解決できるのは安倍政権だけだといわれていたが現状はどうか」と質問され、安倍さんは「解決できるのは安倍政権だけだと言ったことはありません。言ったのはご家族の皆さんです」と責任放棄ともいえるような発言をされました。また、安倍さんは「あらゆるパイプを使って交渉する」と言ってたのに、米朝首脳会談後、北朝鮮側に「日本政府からは何も接触がない。なぜなのか」と指摘されました。動きが遅すぎます。
日本は北朝鮮に経済制裁をしてきましたが、統一教会の教祖・文鮮明は金日成と義兄弟となり、北朝鮮に流れた資金は5000億円以上といいます。国民が拉致されたうえ、日本人信者から吸い上げたお金がミサイル開発に使われたのであれば目も当てられません。

2015年1月、安倍さんはイスラム過激派ISILの武装集団の人質になった日本人、後藤健二さん(47)、湯川遥菜さん(42)の解放に失敗し、両名は処刑されました。安倍さんは2人が人質になっているのに、犯行グループを挑発する演説を行いました。
事件後のオバマ大統領「後藤さんは勇敢にも、自らの報道を通じてシリアの人々の窮状を世界に伝えようとしていた」。

北方領土交渉では、安倍さんは27回もプーチンと会談したのに完全敗北し、ロシアにお金を取られたうえに「固有の領土」という言葉すら言えなくなりました。北方領土にはミサイルが続々と配備され、軍事拠点となるのを阻止できませんでした。

米国相手でもトランプ大統領の言いなりになって、1機100億円を超えるF35を「105機」も爆買いし、“兵器ローン”の残高は2019年度に1兆1377億円と5年前の約6倍に拡大。装備費の「上限枠」を事実上撤廃しました。これでは何のために5年ごとに中期防を策定し、防衛費の総額を決定してきたのかわかりません。しかも、そこまでしたのにトランプは安倍さんの国葬に来てくれないのです。

2018年時点で、安倍さんが外国に約束した援助の総額は54兆3,621億円であり、最終的に60兆円にのぼるといいます。途上国への援助は大切ですが、いくら何でも60兆は多すぎで、これではバラマキ外交と言われても仕方がありません。国内の貧困対策にもっと回すべきです。2004年以降の10年間で債権放棄となった円借款は2兆3千億円に達します。この先、債権放棄される額はどれほど巨額になるのでしょうか。
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(8)東京五輪汚職で「絶対に捕まらないようにします」
東京地検特捜部は2022年8月、受託収賄の疑いで五輪組織委員会の元理事、高橋治之容疑者を逮捕しました。高橋氏は大会スポンサーの複数の会社から総額で億単位となる巨額の賄賂を受け取っていました。
高橋元理事は当時の状況について知人にこう話しています。「最初は五輪招致に関わるつもりはなかった。安倍さんから直接電話を貰って、『中心になってやって欲しい』とお願いされたが、『過去に五輪の招致に関わってきた人は、みんな逮捕されている。私は捕まりたくない』と言って断った。だけど、安倍さんは『大丈夫です。絶対に高橋さんは捕まらないようにします。高橋さんを必ず守ります』と約束してくれた。その確約があったから招致に関わるようになったんだ」。
この証言で絶句したのは、安倍さんが司法をどうにでもできると確信していたことです。実際、安倍さんが凶弾に倒れた後、五輪関係者が芋づる式に逮捕されており、検察は汚職の証拠を以前から抑えていたものの動けなかったことがうかがえます。

※東京五輪の経費1兆4530億円は全体像が分からぬまま組織委が解散しました。大会経費のうち組織委が負担した4割(約7000億)は使途不明です。当初の計画ではコンパクト五輪になるはずでしたがフタを開ければ倍以上となり、史上最大の予算をかけたはずの開会式は中抜きでスカスカのステージになりました。五輪全体の金の流れを把握し、中抜きの実状を誰よりも知っていたJOCの経理部長(52)は、開催約6週間前(6月7日)に地下鉄に飛び込み自殺し、遺書も見つかっていません。遺族には自殺の心当たりがないとのことです。
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(9)河井元法相夫妻・参院選買収事件
安倍さんは2019年の参院選において、首相に批判的だった自民・溝手顕正(みぞて けんせい)議員と同じ選挙区に、新人の河井案里氏を立てました。同じ党であっても敵と認定した議員には容赦がありません。この選挙では、党本部からは選挙資金として溝手側に1500万円、河井側には10倍の「1億5千万円」が渡されました。河井側は地元議員にお金をばら撒いて当選し、溝手氏は落選しました。団扇(うちわ)を配っただけでクビになった大臣もいるのに現金をばら撒き買収するとは驚きです。選対責任者である夫の河井克行氏は選挙後「法務大臣」に就任しました。法務大臣、もうブラックジョークです。

買収という行為も問題ですが、1億5千万円という大金の出どころと、誰が命じたのか分かっていません。1億5千万円のうち1億2千万円は政党交付金であり、我々の税金です。政党交付金は使途を収支報告書に記載し、公開する義務があります。現金を受け取った地方議員や首長から「新札だった」「100万円は帯の付いた状態だった」との証言が多数出ています。河合元法相は第二次安倍政権の閣僚で辞任する10人目の人物となりました(のち逮捕)。
安倍さんは、資金提供の前後に官邸で頻繁に河合元法相と面会し、参院選の公示前から自身の地元秘書団を山口県から広島県に投入しており、この件では重大な説明責任がありました。1億5千万円は使い切れておらず、選挙資金の残金が安倍事務所に還元された疑惑もあります。

※2019年12月に河井夫妻の捜査を担当していた約30歳の若手検事が自殺しました。遺書も残されておらず、自殺の原因は不明とされています。
※同時期に中国から賄賂を受け取った秋元司衆院議員がカジノ誘致のIR汚職で東京地検特捜部に逮捕されました。IR汚職の容疑がかけられた他の5議員の立件は「受け取った100万円は少額だから」と見送られました。少額、ですか。
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(10)「論破」を口にした唯一の首相
安倍さんは2019年4月の参院決算委員会で野党議員との論戦で、「事実上論破をさせていただいたと思っている」と言い、「論破」という言葉を使いました。論破とは、議論して相手を言い負かすこと、やり込めることです。「論破」を口にした戦後の歴代首相は安倍首相ただ1人。欧米の指導者のスピーチを聞いていると「反対派の意見にも耳を傾け、一致点を探し出し、より良い政策にしたい」とよく言っています。安倍さんは、街頭演説で反安倍派の市民を指差し、「こんな人たち」と言いました。“こんな人”も同じ国民です。指導者が「彼ら」「私たち」と国民を分けるなんて、絶対にしてはならないことです。分断ではなく融和を目指すリーダーを望みます。
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(最後に)
アベノミクスにより株や金融で豊かになった方には素晴らしい8年間だったでしょう。でも、スーパーの閉店前の割引を狙い、特売日に買い物している僕には、貧富の差が拡大しただけの息苦しい世の中になったと感じています。50歳代でさえ独身者の4割が貯金ゼロなのです。
国家として非常に深刻なのは、国のトップがどんな不祥事が起きようが責任をとって辞任しないため、政権全体に無責任体制が蔓延(まんえん)したことです。安倍政権では15人もの閣僚が辞任しましたが、安倍さんは任命責任を一度も取っていません。118回の虚偽答弁が発覚しても「責任を痛感している」と言葉を繰り返すだけです。こうしたトップの姿勢が、官僚組織まで無責任体質に変えてしまいました。昭和の政治家であれば、自分の内閣で公文書改ざんが発覚し、さらには役人から自殺者まで出たら、責任を取って辞めていました。
岸田首相にわかっていただきたいのは、国葬の根拠に掲げている「憲政史上最長の在任期間」(=辞任しなかった)という、まさにその理由に脱力しているということです。
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※安倍さんが日本を愛されていたこと、そこは伝わっています。たとえ愛し方が異っても。ご冥福をお祈り申し上げるとともに、国葬儀が最後まで滞りなく進行することを願っています。

(以上、1万8千字になってしまい申し訳ありません。きちんと書くにはこの文字数が必要でした)




赤木俊夫さんの自筆遺書《森友問題》
「佐川理財局長(パワハラ官僚)の強硬な国会対応がこれほど社会問題を招き、それに指示NOを誰もいわない。
理財局の体質はコンプライアンスなど全くない。これが財務官僚王国。最後は下部がしっぽを切られる。
なんて世の中だ、手がふるえる、恐い。命、大切な命、終止府」