《米国テロ事件について〜報復攻撃に断固反対!》

拙者は文芸研究家だ。“政治と芸術は関係ない”…よく言われることだが冗談ではない。この意見には賛成出来ない。人の生死がかかっている時に芸術を心から味わうことなど出来ぬからだ。

事件直後、拙者は「テロには絶対反対!」と書いた。しかし、それは新たな憎しみを大量に生む米国の武力報復を支持するものではない。
各国首脳の中で「今必要なのは軍事力よりも知恵だ」と言ってるのが、あのフセインだというのがブラックだが、これはまさに正論だ。米国民世論の7割以上が「一般市民を巻き込む報復攻撃もやむなし」と答えている現状はかなり危険だ。武力で敵の命を奪って次の憎しみを生むよりも、対話で敵を“友人に変える”方がはるかに建設的だということは、子供にだって分かることだ。

米の政府&マスコミが危険なのは、報復の方法を叫ぶばかりで、なぜ自分たちがテロの標的になったのかを殆ど議論してない点だ(これを議論するのは犠牲者の方がまだ全員発見されていない現状では心が痛むが)。
米国は年間約2兆円の巨利をむさぼる世界最大の武器輸出国(シェア率49%)として、世界中に戦争と混乱のタネを撒き続けてきた。今回のテロで傷ついた人の何十倍もの人が、米国製の武器によってパレスチナやアフリカ、南米で命を奪われている。
米国は国益を最優先して“アメリカにとっての正義”を全く価値観の違う人々に押しつけてきた。イスラムにはイスラムのルールがある。
アメリカこそ世界最大のテロ国家だと思っている者、米国を心底憎んでいる者は紛争地や第三世界を中心に世界の至る所にいる。

超大国アメリカに力があり本気で平和を望むならば、相手を理解し、お互いの譲歩点を探すべきだ。イスラム教徒の数は12億人。テロの原因を無視した報復は、解決になるどころか世界を火の海に巻き込むことになる。
テロは軍事力で絶対に根絶出来ない。相手の主張に真剣に耳を傾け、互いの意見の合意を図ることだけが、唯一テロを防げる道なのだ。
(だから、日本政府は米国政府に対し戦争行動を扇動するような言動をやめよ!)


《現場からの武力報復反対声明》

(目次)
・被害者の家族からの武力報復反対声明
・退役米海兵隊員からの武力報復反対声明
・国連難民高等弁務官カンダハール(アフガン)事務所 職員の手記
・国際平和ビューローの声明 ※ノーベル平和賞の国際平和団体
・関西でピースウォーク!

ハッキリ言って文は長いです。でも、ぜひとも最後まで読んで頂きたいのです!普段配信している自分の駄文とは違い、今回は米国テロ事件に関して、各国首脳の発言にそれぞれの現場から異を唱える切実な声明を特集したものだからです!!(これらはすべて転載の許可を得ています)


●被害者の家族からの武力報復反対声明

米国テロ事件の被害者の家族の方が、この緊迫した状況下で武力報復反対の声明を出しました。被害にあった方のこういうメッセージはものすごい説得力を感じます。

★ニューヨークタイムス紙へ送られた手紙の写し

私たちの一人息子グレゴリーは、多くの人と共にワールドトレードセンターでのテロ事件で行方不明となりました。
はじめにこの知らせを聞いて以来、私たちは、彼の妻や、家族、友人や隣人、彼の職場の同僚と、悲しみと慰め、希望、絶望、楽しかった頃の思い出を分かち合っています。誰と会っても、私たちの痛みや怒りが彼らの中にもあることがわかります。

今回の悲惨な事件に関して毎日流れ込むニュースをちゃんと読むことは出来ません。それでも、読んだニュースから、米国政府が暴力による復讐に向かっていることはしっかり感じています。

そのような復讐が行われれば、遠い国の息子や娘、親や友人を死なせ、苦しめることになります。私たちの悲しみをさらに深めることになります。それは進むべき道ではありません。それが息子の死の恨みを晴らすことにはなりません。
私たちの息子の名前において復讐することはやめてください。

私たちの息子は、非人間的なイデオロギーの犠牲となって死にました。私たちは、同じ目的を果たす行動をとってはなりません。

深く悲しみ、省み、祈りましょう。この世界に本当の平和と正義をもたらすための理性的な対応を考えましょう。この時代の非人間性をさらに増大させる国になってはいけません。               
                         〜Phyllis and OrlandoRodriguez

また、ホワイトハウスのブッシュ大統領に宛てた手紙の最後の部分は、
「我が政府は、他国の息子たちやその親たちを苦しめる理由として、私たちの息子の思い出を使っているように感じられます。(中略)
テロリズムに対する平和的で理性的な解決策をどうしたら作り出すことが出来るのか、大統領にぜひ考えていただきたいと思います。テロリストの非人間的なレベルに私たちを落とす解決策ではなく…」
と締めくくっている。


●退役米海兵隊員からの武力報復反対声明(抜粋)

ブッシュ大統領殿

大統領閣下、あなたは今や米国が単に恐るべき経済と軍事大国以上のものだということを世界に示す素晴らしい機会を持ったのです。アメリカが人類の理解と憐れみの英知に導かれている国というだけでなく、国際法に従う、法を守る信頼できる民主国家であることを世界に示せるかどうかは閣下次第です。

あらゆる法的手段をもちいて、この恐ろしい犯罪の犯人を確定し、しかるべき法廷で裁いていただきたい。世界が望んでいる正義を彼らに与えて欲しい。しかし、これだけはお願いしたいのですが、この恐るべき犯罪の為にそれがアメリカ人、イスラエル人、パレスチナ人、あるいはどの国民であれ、これ以上無実の人を犠牲にしてはいけません。

我が国の爆弾と兵器が無実の犠牲者の命を奪ってしまうことがあまりにもよく起こります。軍事的な言い方では「副次的被害」などとされていますが、実際は大量殺戮だと思います。私たちにさらに多くの無実の命を奪う権利があるのでしょうか。それはまたひとつのテロではないでしょうか。
私たちは、世界貿易センターを襲った人たちのレベルまで下がるべきなのか、それとも高い見地に立って、高い法と道徳の基準を保つべきなのでしょうか。

この攻撃は悪の行為とみなすより、暴力と破壊しか自分たちの声を訴える術がないと信じた絶望した人間たちの恐ろしい最後の行為だと思います。
もちろん彼らの考えに同調する必要はありませんが、もし私たちが永続する平和を望み、私たちがとても大事にしている市民の権利や自由がすべて奪われるような閉ざされた世界にしたくないなら、彼らを理解しなければなりません。

たとえ彼らが叫び、私たちが聞きたくないようなことを言っているとしても、テーブルについて全員の声を聞くようにしましょう。私たちは本当に強大な存在なのでいつも主張し、他の人たちは聞くのが当然のように思っています。私たちが他の人たちの声も聞くことが出来る勇気ある国民だということを世界に示そうではありませんか。

閣下はキリスト教徒ですね。
ですから私は、閣下がイエス・キリストが指導したことを正に行って性急に暴力に打って出るようなことをしないよう祈っています。この恐ろしい悲劇の中で、平和へのチャンスを見い出す知恵を神が閣下にお与えくださるように。後に歴史家たちが振り返って、世界を人類のために正義と民主主義に向わせた、閣下の偉大な精神と冷静な理性を賞賛することを私は願っています。

                         〜尊敬をこめて、グレッグ・ニーズ
                

前者の夫妻も後者の軍人も、報復攻撃は自分たちを非人間的なレベルに落とすと訴えている。一昨夜、首相は米国に自衛隊の派遣を表明した。ブッシュはもちろんのこと、小泉総理よ、貴方はこの人々に何と答えるのだ?

拙者の軍事報復反対の主張はものすごくシンプルだ。
『結果ではなく原因に目を向けよ、さもなければテロは続く』
これだけだ。
思想についてどうこう言ってるのではない。今、テロの原因に目を閉じ、耳を塞いで一人のラディン(彼が真犯人だとして)を倒しても、復讐を叫ぶ新たな100人のラディンを生むだけだ。
「アフガニスタンを爆撃して石器時代にまで戻してやれ!」
重要なのは怒りにまかせて米国民がこう感じるのと同様、テロ犯も怒りにまかせてビルに突っ込んだという事実を無視していることだ。約20人もの人間が旅客機を乗っ取りビルへ突っ込むほどの憎しみ…今、日米首脳はその憎しみの火に軍事報復という油を注ごうとしている。最悪のシナリオだ。

テレビ朝日の世論調査では日本国民の6割の人が武力報復に賛成している。つまり拙者は少数派だ(1割が“分からない”なので、反対は3割)。なんてこった!
総理は武力報復についてのGOサインを“目に見える形で”表現するという。つまり、それはテロの動機を考えることを放棄するということだ。


3通目はアフガニスタンに滞在している国連職員の方の声明が、何人もの人を経由して届いたものです。これは現地の状況を、マスコミのフィルターを通さずに知ることが出来る非常に貴重な機会です!

●国連難民高等弁務官カンダハール(アフガン)事務所 職員の手記

9月12日の夜11時、カンダハールの国連ゲストハウスでアフガニスタンの人々と同じく眠れない夜を過ごしている。私のこの拙文を読んで、一人でも多くの人が、ごく普通の一人一人のアフガン人達が、どんなに不安な気持ちでアメリカのテロ事件を受け止めているか、少しでも考えていただきたいと思う。

TVのニュースを見て心底感じるのは、事件の報道の仕方自体が政治的駆け引きであるということである。特にBBCやCNNの報道の仕方自体が根拠のない不安を世界中に煽っている。事件の発生直後BBCは早くも、未確認の情報源よりパレスチナのテログループが犯行声明を行ったと、テレビで発表した。それ以後事件の全貌が明らかになるにつれて、ラディンのグループの犯行を示唆する報道が急増する。

何の捜査もしないうちから、一体何を根拠にこんなにも簡単にパレスチナやラディンの名前を大々的に報道できるのだろうか。そしてこの軽率な報道がアフガンの国内に生活を営む大多数のアフガンの一般市民、人道援助に来ているNGO(非政府組織)や国連職員の生命を脅かしていることを全く考慮していない。

CNNやBBCは、始めからラディンの名を引き合いに出しているが、これだけ高度な飛行システムを操りテロ事件を起こせるというのは大変な技術である。なぜアメリカ国内の勢力や、日本、ヨーロッパのテロリストのグループ名は一切あがらないのだろうか。他の団体の策略だという可能性は無いのか?
国防長官は早々と戦争宣言をした。アメリカが短絡な行動に走らないことをただ祈るのみである。

それでも、逃げる場所があり、明日避難の見通しの立っている我々外国人は良い。アフガンの人々は一体どこに逃げられるというのだろうか?
アフガンの人々は、タリバンに多少不満があっても20年来の戦争に比べれば平和だと思って、積極的にタリバンを支持できないが、特に反対もしないという中間派が多いのだ。

1998年にケニヤとタンザニアの米国大使館爆破事件があった時、私は奇しくもケニヤの難民キャンプで働いていた。その時も物的確証が無いまま、ラディンの事件関与の“疑い”が濃厚という理由だけで米国はスーダンとアフガニスタンに100発のトマホーク(巡航ミサイル)を発射した。
スーダンの場合は製薬会社、アフガンの場合は遊牧民や通りがかりの人々など、大部分のミサイルがターゲットと離れた場所に落ち、罪の無い人々が生命を落としたのは周知の事実だ。まして標的であった軍部訓練所付近に落ちたミサイルも、肝心のラディンたちへの被害はほぼ皆無だった。タリバンやこうした組織のメンバーは優れた情報網を携えているので、いち早く脱出しているからだ。結局、犠牲者の多くは子供や女性だった。

前ブッシュ大統領は1993年にイラクが「同大統領の暗殺計画を企てた」というだけでバグダッドへの空爆を行っている。世界史上初めて、「計画」に対して実際に武力行使の報復を行った大統領である。現ブッシュ大統領も就任後、最初に行ったのがイラクへのミサイル攻撃だった。
世界中で、ただテロの“疑惑”があるという理由だけで、“嫌疑”があるというだけで、ミサイル攻撃を行っているのはアメリカだけだ。世界はなぜ、こんな横暴を黙認し続けるのか。このままではテロリスト撲滅という正当化のもとに、米国が決めた全世界の“疑惑国”に攻撃を開始することも可能ではないか。

このミサイル攻撃後に、一体何が残るというのか?新たな報復、そして第2、第3のラディンが続出するだけで何の解決にもならない。ラディンがテロリストだからといって、無垢な市民まで巻き込む無差別なミサイル攻撃を、国際社会は何故、過去黙認し続けていたのか。これ以上世界が危険な方向に暴走しないように、我々も声を大にすべきなのではないか。

アフガンから脱出できる我々国連職員はラッキーだ。不運続きのアフガンの人々のことを考えると、心が本当に痛む。どうか、これ以上災難が続かないように、今はただ祈っている。そしてこうして募る不満をただ紙にぶつけている。(国連職員、千田)


●国際平和ビューロー(IPB)の声明※ノーベル平和賞の国際平和団体

これ以上軍事費にお金を費やすことは何の役にも立たない。
私たちは米国政府と米国議会にたいし、この新たな状況において、核兵器と新ミサイル防衛システムは安全を保障しないという歴然たる現実に目を向けるよう求める。
私たちは安全保障の方法と、国家予算の優先事項を根本的に変更するために、防衛政策見直しをすぐに行なうよう強く求める。そこには米国と世界の国々との、より公平な関係作りが含まれなくてはならない。
これが、軍事力による「応急措置」よりも安全保障を確実にする道である。


★この間に大変多くのメールを頂きました。貴重な御意見、情報を有難うございます。以下、2通のメールから許可を得て一部抜粋させてもらいました。

「今回のテロが起きる直前には、アメリカ経済は不況に向かっていたが、もし“戦争が起きた場合景気は回復する”と言う専門家は多い。これは当然戦争が起これば戦争特需により、軍需産業が潤うためだ。アメリカが好景気を維持するためには、20〜30年に一度戦争を行う必要がある、と指摘する意見もある。」

「ケンカしている2人で、いい服着た口の達者なヤツの話だけでなく、もう一人の無口で話ベタなヤツの気持ちも聞いてやってからでないと、本当にどっちが悪いのか言いがたいね!」


●〜テロ行為による犠牲者の追悼と米政府の報復戦争に反対する9・26kansai PEACE WALK〜が大阪で開催されます!

「もうすぐ戦争が始まるよ」
「第3次世界大戦の勃発だ!」
「沖縄、佐世保、横須賀は危険」
ネットや週刊誌を始め、巷ではこうした発言が飛び交っている。しかも信じ難いことに、嬉々としてそうしたことを発言している者もいる。何という安易さか!
彼らの発言からは、
“では戦争回避の為に自分に何が出来るか?”
という問題意識がまったく伝わってこない。そんな思慮のない発言は、到底容認できない。
今の自分に何が出来るのか、それを考える為にも、拙者は以下のピースウォークに参加してみようと思う。

日 :9月26日(水)
時間:午後6:30〜集会
   午後7:00〜ピースウォーク
場所:中之島野外音楽堂〜アメリカ領事館〜大阪中央郵便局前
※中之島野外音楽堂へは地下鉄淀屋橋駅&京阪淀屋橋駅から徒歩スグです。
主旨:デモではなく、手には花とろうそく(ペンライト)を持ち、ピースソング(イマジンなど)を流しながら、軍事報復反対をアピールします。

こういう行進に参加するのは初めてだし、集会がどんな雰囲気なのか分からないけど、とにかくまず出来ることから行動したい。当日拙者は前面にジョン・レノン、背面にイマジンの歌詞がプリントされた黒いTシャツを着て行くつもりなので、よかったら声をかけて下さい。ぜひ一緒に歩きましょう!(なるべく最後尾の辺りにいます)


●米国のえげつない外交政策を紹介している、拙者の2つのエッセイにリンク

★南米、チリの軍事政権とアメリカ〜歌手ビクトル・ハラの死
★中米、エルサルバドルの軍事政権とアメリカ〜聖職者オスカル・ロメロの死


(おまけ)
〜ブッシュ大統領のメール・アドレス〜
President@whitehouse.gov
〜小泉首相への意見箱(首相官邸に直通)〜
http://www.iijnet.or.jp/cao/kantei/jp/comment_m.html
いっちょガツンと言ってやりたい人はどうぞ!

以上。



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