ビバ・俳句!蕪村・放哉・山頭火
- 名句60選 -



      【 与謝蕪村〜俳句BEST20! 】 放哉/山頭火

※自分なりに現代語訳をつけてみました


1716-1783.12.25 享年67歳

生活費の為に絵筆を握り、画業を優先していた蕪村が、50歳を過ぎて俳諧の活動を本格化した時、友人たちは
「遅桜人に待たれて咲きにけり」とこれを喜んだ。蕪村の句はズバ抜けて自然描写に長けている。これは画家が
持つ鋭い観察力の賜物。わずかな文字で情景をスケッチするだけで、読み手に彼方まで風景を見せるんだ。


※俳句の表記では言葉の間隔を空けないのが普通ですが、初心者に見やすくする為に、ここでは空けています。m(_ _)m


(20)畑(はた)打つや うごかぬ雲も なくなりぬ
…畑仕事をしているうちに、さっきまで動かないように見えた雲がどこかへ消えちゃった

(19)近道へ 出てうれし野の 躑躅(つつじ)かな
…偶然近道に出て嬉しいッス。しかも周囲には野のツツジがあったデス!

(18)宿かせと 刀投出す 雪吹(ふぶき)哉
…吹雪の中「こりゃかなわん」と、宿を貸りたいと言う前に刀を投げ出した旅の者

(17)秋来ぬと合点させたる嚔(くしゃみ)かな
…ハブション!いつの間にやらもう秋か。どうりでクシャミも出るはずじゃわい。

(16)湯泉(ゆ)の底に わが足見ゆる けさの秋
…秋の朝、温泉にひたっての〜んびり自分の足を見ているよ。ふぅ〜。

(15)秋もはや 其(その)蜩(ヒグラシ)の 命かな
…秋がもうすぐセミの命のように終わっちゃう!「その日暮らし」と自分の境遇を掛けている、
自虐ネタっす

(14)春の海 終日(ひねもす) のたりのたり哉
…春の海は一日中ゆったり波がうねってのどかだなぁ※のたりのたりの音感が良いな

(13)椿落ちて 昨日の雨を こぼしけり
…椿が落ちると昨夜降った雨も一緒にポチョンとこぼれたよ

(12)凧(いかのぼり) きのふの空の ありどころ
…空に舞う凧を見て、なんかこう一気にその昔自分が見た冬空を思い出してしまった

(11)五月雨(さみだれ)や 大河を前に 家二軒
…長く降り続いた五月雨で川が大河になっている。その岸に2軒の家が心細く並んでいる

(10)菜の花や 月は東に 日は西に
…夕暮れ時、一面の菜の花畑にて、東から昇る月と西に沈む夕陽を眺めるこの贅沢!

(9)折もてる わらび凋(しお)れて 暮遅し
…野山を散策中に摘んだワラビが手の中でしおれるほど長い時間が経っているのに、まだ日が
落ちない。晩春の陽は長いなぁ

(8)寂として 客の絶間の ぼたん哉
…賑やかだった来客が帰った客間。さっきまで気づかなかった牡丹の存在感にハッとする。

(7)不二を見て通る人有(あり)年の市
…年の瀬の慌しい江戸の市。そんな世間になじめずに、独りだけ富士を見ながら歩く孤独なボク。

(6)夕風や 水青鷺(アオサギ)の 脛(はぎ)をうつ
…夕風に吹かれ川にたたずむアオサギのふくらはぎに、水がチャプチャプ打ち寄せている

(5)初冬や 訪んとおもふ 人来り
…初冬になって寂しい心持から友を訪ねて行こうとしたら、向こうからこちらへ来てくれた。アイツ
も同じ気持だったんだなぁ!ジーン。

(4)落穂拾ひ 日あたる方(かた)へ あゆみ行く
…秋の夕暮れ、落穂を拾いながら日の当たる方へと移ってゆくよ。

【トップ3!】

(3)月天心 貧しき町を 通りけり
…深夜の月が中空(天心)に輝いている。私は月光を浴びながら、し〜んと寝静まった貧しい家々
の前を行く。

(2)夏川を 越すうれしさよ 手にぞうり
…草履を手に持ち、素足で夏川を渡る気持ちよさったらもう!(*^o^*)

(1)鮎くれて よらで過ぎ行く 夜半(よは)の門
…夜遅く友人が釣りの帰りに鮎を届けてくれ、寄っていけと言うのに遠慮して行ってしまった。
そのさりげない友情に胸を打たれ、門の前でずっとヤツの背中を見ていたんだ。グッスン。


※もっと蕪村のことが知りたくなった方は「巡礼ルポ・与謝蕪村編」へ!(蕪村の描いた絵もいいですヨ。あと、さらに20首を紹介してます)



【 尾崎放哉〜魂の俳句20選 】


1885.1.20-1926.4.17 享年41歳

繊細さゆえ社会に馴染めず、酒で職を失い、妻に去られ、実家に絶縁され、肺結核の為に41歳の若さで他界した
大正の俳人・尾崎放哉(ほうさい)。ここにあげた句は、小豆島の寂しい庵の中で独りぼっちで死に至った、人生最期
の8ヶ月間の生命の記録。与謝蕪村の俳句にはコメントを付けたけど、放哉にはあまりの孤独世界に言葉が出ない…



こんなよい月をひとりで見て寝る
 
死にもしないで風邪ひいている
 
夕空見てから夜食の箸とる
 
せきをしてもひとり
 
沈黙の池に亀一つ浮き上る

鳳仙花(ほうせんか)の実をはねさせて見ても淋しい

ころりと横になる今日が終って居る

落葉掃けばころころ木の実

かぎ穴暮れて居るがちがちあはす

足のうら洗へば白くなる
 
うつろの心に眼が二つあいている
 
あすは元日が来る仏とわたくし

障子の穴から覗いて見ても留守である

墓のうらに廻る

霜とけ鳥光る

入れものが無い両手で受ける

一つの湯呑を置いてむせている
 
いつしかついて来た犬と浜辺に居る

雀の暖かさを握るはなしてやる

白々あけて来る生きていた


※放哉の俳句は季語や五七五の約束事から解放された自由律俳句。



【 流浪の俳人・種田 山頭火(さんとうか)〜俳句20選 】


1882.12.3-1940.10.11 享年57歳

9歳で母が自殺。酒造業を営むが34歳の時に倒産、妻子を連れ夜逃げ同然で熊本へ。古本屋を始めるがこれにも失敗。
生活苦から自殺未遂を起したところを住職に助けられ寺男となる。44歳から、中国、四国、九州地方へと放浪の旅に出て、
山口(湯田)、愛媛に庵を結び、最期は心臓麻痺で他界した(57歳)。旅をし続けた山頭火の句は、「静」の放哉に対し、
「動」の山頭火と呼ばれている。ときに明るく、ときに寂しく、移り行く景色の中で自然と一体になった彼の句を味わおう。


窓あけて窓いっぱいの春
 
何が何やらみんな咲いている
 
分け入っても分け入っても青い山

もりもり盛りあがる雲へあゆむ
 
飲みたい水が音たてていた
 
こころ疲れて山が海が美しすぎる

お墓撫でさすりつつ、はるばるまいりました
※放哉の墓前
 
ふたたびここに、雑草供へて
※2度目の放哉墓参
 
藪から鍋へ筍(たけのこ)いっぽん
 
酔うてこおろぎといっしよに寝ていたよ
 
まっすぐな道でさみしい
 
あの雲がおとした雨にぬれている
 
雨だれの音も年とった
 
寝床まで月を入れ寝るとする
 
ふくろうはふくろうでわたしはわたしでねむれない
 
生死の中の雪ふりしきる
※旅の途中で倒れかけ
 
ついてくる犬よおまえも宿なしか

草しげるそこは死人を焼くところ

焼き捨てて日記の灰のこれだけか
 
おちついて死ねそうな草萠ゆる


※山頭火は生涯に約8万4000句を詠んだ。



●これぞ人生〜名作川柳300首