〜かくして権力の腐敗は野放しに〜
メディアの闇/記者クラブ、官房機密費、そして電通
2012.12.6



非力ながらもジャーナリズムの問題に踏み込みたい。曲がりなりにも日本は民主主義国家だし、 共産国家と違って報道の自由があると昨年3月までは思っていた。日本のメディアが“一部の支配層の私物と化している”といった話は「陰謀論」的なものとし てスルーしていた。原発事故時の御用学者オンパレードで“メディアは終わっているのか?”と疑惑を抱き始め、それが“詰んでいる”と確信に変わったのは、 東京で4万5千人の官邸前・脱原発デモが行われた日に、NHKはそれをまったく報道せず、東京スカイツリーの400人の行列を放送したこと。僕が参加した関電本店前の大飯原発再稼働反対の抗議運動もスルーされた。NHKは17万人のデモになってようやくほんの数秒ほど放送した。CMの呪縛がないNHKでさえこれだ。

この“報道管制”の財源として疑われているのが官房機密費や電力会社マネー。電力会社マネーについては何度か書いてきたので、前者について書く。政権交代以降、政府は35億2千万円という巨額の官房機密費を支出していたことが先月判明した。3年で35億円強!そ の使途は「内閣が行う情報収集活動の協力者などに使用」としか分かっておらず、完全にブラックボックス化している。民主党は前回衆院選で官房機密費の透明 化を約束していたのに知らん顔。これは自民政権時代から問題になっており、麻生政権は選挙に負けた直後に2億5千万を引き出し10日で使い切ったことが裁 判で指摘されている。フリーのジャーナリストたちは、大手メディアで構成された私的な組織「記者クラブ」が機密費でズブズブになっていると糾弾している。 記者クラブはフリーランスの記者に対し非常に排他的であり、海外には「kisha club」で通じる日本独特の特異な存在だ。

「記者会見のへの参加をを希望するメディアに対し、それを拒否する同業者(記者クラブ)が存在するのは、世界広しといえども日本ぐらいだろう。海外で会見への参加を希望する記者には、同業者がまず協力してくれる」(上杉隆)

記者クラブは官公庁などの公的機関や業界団体などに置かれ、大半の記者クラブは「専用の記者室」を“取材対象側”から無償で提供さ れ、ぶら下がり取材などの情報提供を独占的に受けている。光熱費まで相手が負担しており便宜供与の疑いが濃厚だ(中央官庁の記者室の電気代は全て国費)。 記者室は一等地にあり、全国紙は1社あたり年間数億円のオフィス費を免れている。また記者室は貸主=取材対象者からの個別取材の場となるが、記者クラブに属さないメディアは入室できず聖域化している。クラブ主催の記者会見にはフリーの記者が参加できても質問は出来ない。会見が始まるまでフリーの記者が寒さの中で震えている時に、クラブの記者たちはぬくぬくの部屋で待機という話はよく聞く。

たかだか任意団体にすぎない特定の記者クラブが公的機関の部屋や備品を独占的に貸与され、排他的に使用しているのは大問題。大手メディアの記者はクラブ に常駐するため、身内意識にどっぷり浸かり、特ダネより特オチ(自分だけが情報を取れないこと)を回避する方に懸命で、記者同士でメモ合わせをする極 端な横並び状態になっており、どの新聞もトップ記事が似たようなものになる。日本のメディア退化の根元であり、報道協定を結んで他の記者が抜け駆けできな いようなことまでしている。海外だと独自取材の特ダネでしか記者は評価されず、メモ合わせなどあり得ないし記事の独自性が重視される。こんな異常な環境 で、気骨のある記事が書けるわけがない。

企業との馴れ合いとしては、震災当日に東電の勝俣会長とメディア幹部・OBらが中国へ接待旅行に行って日本にいなかったことが最近では知られている。上杉氏は官房機密費や東電癒着という大手メディアの超絶タブーに触れたことで猛烈なバッシングを受けている。僕は上杉氏の言動の全てに賛同している訳じゃないけど、日本の大手メディアの腐敗っぷり、閉鎖性と戦う姿勢には多いに共感している。

安倍晋三氏は自民党総裁に再選された際に、総裁記者会見で質問できる記者を「平河クラブ加盟社のみ」に限定した。“平河クラブ”とは自民党専属の記者クラブのこと。「(平河クラブ限定になったのは)“上杉隆さんのせいだ”と冗談を言う人もいるが、違う。平河クラブのせいでもない。安倍晋三さん自身がそういう人なのだ」(上杉隆)

過去には記者室を廃止しようという動きがわずかだがあった。代表格が現在「新党日本」代表の田中康夫氏。氏は長野県知事だった2001年に「脱・記者クラブ宣言」を行い、記者クラブに対する特別優遇の撤廃を宣言した。記者クラブから記者室と記者会見の主催権を取り上げたのだ。今回の選挙では田中康夫氏の他に「日本未来の党」代表代行の飯田哲也氏が「記者クラブは当然解放していく」と明言している。是非、海外のようにクロスオーナーシップ禁止(テレビ局と新聞社を分離)も断行して欲しい。

次は日本のマスコミのもうひとつの大問題、「スポン サーの圧力」について。東電原発事故に関する報道管制の本丸はこちら。ジャーナリスト・神保哲生さんのブログがとても参考になったので、忙しい方 の為に要点を抜粋、分かりやすくするため一部補完させて頂きます(原文はリンク先にて)。

・ フクシマの事故後、現実味のない核燃料サイクル事業に兆単位の税金を注ぎ込んでいた事実、電気料金の中に電力会社社員の保養所維持費や広告費、御用学者を 飼い慣らすための大学への寄付金まで含まれる「総括原価方式」と呼ばれる料金方式等々、原発を巡る腐敗構造について不思議なほどメディアは報じてこなかっ たことが判明した。

・電力業界のメディアに対する影響力は群を抜いている。東京電力だけで年間260億円(別格!)、電事連加盟10社で合わせて 1000億円が広告宣伝費として使われてきた。そしてこの宣伝費用は僕らの電気料金に最初から上乗せされている(自分の金で安全神話のCMをずっと見せら れていたのが頭にくる)。

この宣伝費1000億円のパワーは、あらゆる批判や抵抗を無力化して余りあるだけの威力を持つ。エージェント(代理人)として、スポンサーに成り代わって実際にその影響力を行使しているのが電通を始めとする広告代理店。代理店は億円単位で広告費を払ってくれるスポンサーの意向に忠実に動いている。

・広告代理店の王者は泣く子も黙る“電通”。なんと、電通たった1社で4媒体(テレビ、新聞、雑誌、ラジオ)の広告市場のシェアは5割(!)に達する。博報堂と合わせて「2社で7割を超える」という異常な業界!

・博報堂に17年間勤務した本間龍氏の証言。メディア業界はテレビ、特に地方局は電通なしにはやっていけない。営業は電通からの「要請」は聞かざるを得な い。電通の営業マンは自分のクライアント(電力会社)に不利益な情報が出ないように、必要に応じて報道に介入できる体制を取っている。「広告代理店、とり わけ電通の仕事の大きな部分は、単にCMを制作したり、広告主を見つけてくることではなく、広告主を“代理”して広告主の意向をメディアに伝えそれを体現 することにある」。

・海外では広告主や広告代理店が報道内容に圧力をかけることが違法になっている国が多いが日本ではまかり通っている。

・そもそもこのような問題が生じていることを一般社会は知らない。知らされていないから、政治家や官僚も世論を後押しに制度変更を主張することができない。

・ではどうすればいいか。海外では広告代理店はひとつの業界で1社しか代理できない「一業種一社ルール」が徹底されている。日 本もそうするべき。この制度なら、他に代わりのスポンサーを見つけてくることが容易だから、メディア側も「報道内容に注文をつけるならスポンサーを降りて 貰って結構だ」と強気に出られる。海外ではベンツが文句を言うのなら、アウディなりBMWなりを代わりのスポンサーに入れることができる。ところが、今の 日本は電通に極度に力が集中し、「ベンツもアウディもBMWもすべて電通」といった状態になっている。

・メディア側は「報道部門と他部門の壁」をしっかりと設けて報道前の情報が漏れないようにするべき。それだけで介入されるリスクは回避できる。報道内容が 事前にスポンサーへ筒抜けになっていることがおかしい。営業部門が守秘義務を無視して情報をスポンサーに漏らしているのはインサイダー取引にもつながる問 題。こんな最低限の当たり前のことが行われていないために、日本は今もって放送前に社会派番組がお蔵入りになったり、「メディアへのスポンサー圧力があっ て当たり前の国」に成り下がっている。

以上!








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