【 国民不在の国民投票法案 】

〜何が問題になっているのか〜

2007.4.29

国民不在の国民投票法案が問題になっている。既に衆議院では強行採決され、残る参議院でもGW明けに採決されそうだ。今の形では同法案がいかに危険かを5つのポイントに絞って記したい。

(1)最大の問題は最低投票率が決められていないこと!憲法改正には国民の過半数の賛成が必要なハズなのに、どんなに低い投票率でもやり直しはナシ。しかも投票結果は「有権者の過半数」ではなく「投票者の過半数」で決定される。つまり、投票した人間だけで過半数になれば「国民の過半数が賛同した」と見なされる。国会の中では議員数が“過半数”の基礎になっているのに、国民投票だけが投票数を基礎にするのはおかしい。西洋各国では有権者の数を国民投票の基礎としており、英国では有権者の40%以上の賛成を必要としている。

“投票に行かないヤツが悪い”というのはもっともだけど、多くの国民は自分の生活を維持するのに精一杯で、政治に関心を持つ心の余裕がなくなっている。低い投票率は国民の責任であるけれど、現実問題として人々は疲れ果てており、政府は最低投票率に達するまで投票を呼びかける義務があると思う(投票率が低いと、国民の総意ではなく、組織票のある宗教団体や圧力団体の意向が強く反映されることに)。

(2)法案の提出から国民投票まで最短60日と短い!日本の国論を2分するような重要問題が、たった2ヶ月で判断できるのか。国民が情報を集め、様々な角度から法案を検証・熟慮するのに2ヶ月は短すぎる。それでは公聴会にも殆ど行けない。

(3)世界の常識では全ての法案が国民投票の対象になり得るのに、与党案では「憲法限定」となっている。これは『企業献金禁止法案』『格差是正法案』など議員が消極的な法案(=経団連に都合の悪い法案)が国民投票にかけられることを阻止する為と思われても仕方ない。※与党が国会で否決した法案を、野党が国民投票にかけて可決する可能性もあり、それを与党は恐れているのだろうか。

(4)メディア規制が緩く、投票の2週間前までは自由にテレビCMが流せるので、宣伝資金が豊かな側が圧倒的に有利になる。何十億もかけてCMをバンバン流せば世論への影響は計り知れない。

(5)全国に500万人いる公務員は、法案の賛否について一切の運動を禁止されている。通常の選挙では国民として自由に発言できるのに、国民投票では禁止というのはおかしい。

以上、この5点を踏まえた僕の意見は「過半数=有権者の過半数とし、投票の告知は半年前、投票対象は全法案、テレビCMは一ヶ月前まで、公務員に言論の自由を保障、最低投票率は60%」といった感じ。憲法改正の主役は国民!投票率を無視されてはたまらない(自公案だけでなく民主案でも最低投票率が入っていない。トホホ)。

政府は反対意見が広がる前に速攻で可決する気なんだと思う。参議院民主党が最低投票率の入った修正案を出すことを祈ってる。

※そもそもこの国民投票法案は第9条の変更が目的なんだけど、国民にとってそれが優先課題とは思えない。“美しい国”を目指して力を入れるべきなのは、貧困層や社会的弱者の救済、役人の汚職・天下り対策、企業モラルの徹底、暴力団の撲滅。国内の自殺者は98年から8年連続で3万人を超え、自殺率は米国の2倍、英国の3倍に達している。



●追記 サイトに寄せられた質問から

Q.国民投票の発議に何の制限もない場合、少数野党(社民・共産等)の手により毎週末に国民投票が…なんて事態にもなりませんか。

A.「法案提出には100人以上必要」とする条文があり、少数野党が法案を提出することは事実上不可能です。それに何でもかんでも投票にかけていては、怒った国民にそっぽを向かれるでしょう。

Q.法案反対派が投票をボイコットするだけで自動的にその法案は廃止となるので、最低投票率は必要ないのでは。

A.憲法改正には国会議員の3分の2以上の賛成が必要とされており、その理念との整合性を考えれば最低投票率の設定は不可欠です。国民に投票所へ行かせるように法案の重要性を伝えるのが政治家の役目だと思います。
ボイコットについて懸念されていますが、最低投票率に満たなかった場合は「否決」が確定するのではなく、再投票となります。2度目、3度目も投票率が低かった場合は、最低投票率を下げていいかも知れません。ただし、下げる場合は政治家にそれを「恥」と感じて欲しいです。日々の政治活動・理念が国民に伝わってないということですから。





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